CFM「空中分解」 #0176の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
その国には森があった。大きな森であった。いつから、その森があるのか、誰も 知らなかったし、知ろうとも思わなかった。彼が来るまでは。 彼の名を誰も知らなかった。多分、最初から名前などなかったのだろう。彼はい つも彼であった。それ以外の名前はなかった。 彼は尋ねた。「いつから、この森はここにあるのか。」 誰も答えなかったし、答えようとも思わなかった。それに、例え答えたいと思っ ても、答えられなかった。 それでも、一人の娘が彼に答えた。「昔から」 彼はしつこく尋ねた。「どれぐらい昔から」 娘は答えた。「ずっと、ずっと昔から。私のお婆さんのそのまたお婆さんの時代 から。」 更に彼は尋ねた、「そのまたお婆さんの時代には。」 娘は怒った。人々は去った。一人の少年が残った。 少年は言った。「森へ行けば分かるよ。」 彼は森へ向かった。少年も後をつけた。道は一本しかなかった。畠には麦が実っ ていた。森は緑だった。 彼は黙っていた。少年は喋った。何を喋っているのか、彼は聞いていなかった。 少年も黙った。少年は彼の前に出た。 彼と少年は森の奥へ入った。森の中は明るかった。彼は不思議に思った。しかし 少年は当然という顔をしていた。 夜になった。彼は古木の根元で寝た。少年も寝た。少年は家へ帰らなかった。し かし、それは彼には関係のないことだった。 朝になると彼は再び歩き出した。少年も一緒に歩いた。彼は何も荷物を持ってい なかった。少年も何も持っていなかった。 昼になった。森の中でどうやって朝と昼の区別がついたのか分からないが、とに かく昼になった。食べ物はなかった。 彼は歩き続けた。少年は立ち止まった。彼も止まった。 少年は言った。「森に着いた。」 彼は知った、いつから、ここに森があるかを。 .
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