◇フレッシュボイス2 #1990の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
昨日に引き続き、『名探偵は嘘をつかない』(阿津川辰海 光文社文庫)から。 今回は内容についての疑問ではなく、表現に関するもの。 同書初版第一刷の253ページ五行目に、次の記述があります。 「三宮さんがじきに到着すれば、持ってきてくれるはずだ」と遠上が応じる。 前後関係が仮に分からなくても、この一行だけで何となく据わりの悪さを感じるので すが、いかがでしょうか。 念のために説明しますと、この部屋にあるべきだが足りない“ある物”――手紙を、 あとで三宮という人物が持って来る手筈になっていることを記した、ただそれだけの シーンです。 まず、“じきに”が必要なのかどうか。必要ではないと思います。もし必要ならば、 たとえば“じきに”を“三日後に”に置き換えたら成り立たないことになる。ですが実 際には、文章として成り立っています。物が手紙だから時間の経過の長短は関係ない。 次に、“到着すれば”も必要かどうか。いらないと思う。「三宮さんが持ってきてく れるはずだ」で充分です。むしろ、よほど分かり易い。 もちろん、何でもかんでもシンプルに表現すればいいってものでもありません。小説 の文章に限らず、装飾によって表現に膨らみが持たせられるなどの効果が生じ得ます。 でも、ここに挙げた一行は、それに該当しないのではないか。 結局のところ、私が感じた据わりの悪さは、重複表現に対するそれに近いものだと言 えます。“すれば”という近い将来ほぼ確実に起こるであろうことを仮定した表現を入 れておきながら、そのあとに続けて“はずだ”という、これまた近い将来ほぼ確実に起 こるであろうことを希望的観測込みで表現した結果、くどくなっている。 もしどうしても“じきに到着すれば”を入れたいのなら、どう書くのが収まりがいい か。 「三宮さんがじきに到着すれば、揃う」 これくらいしか思い付きません。“すれば”を捨てるなら、他にもある。 「三井さんがじきに到着する。持ってきてくれているはずだ」 こんな具合に。「くれる」を「くれている」にしたのがポイント。 尤も、元の文のままでも、読者の方で言葉を補えば間違いであるとは言い切れない。 「三井さんがじきに『この建物に』到着すれば、『手紙をこの部屋に』持って来てくれ るはずだ」 こう解釈すればどうにかこうにか……いやー、それでも“じきに”は収まりが悪いよ なぁ。(^^; ではでは。
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