●連載 #1157の修正
★タイトルと名前
親文書
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
副題:シニフィアンに跳ね飛ばされると最後はアナルに走る。 まず、何故シニフィアンに跳ね飛ばされるのか。 警視に会って緊張したから、どっかこ洒落たカフェでリラックスしていこう という事になって、 丸の内1stのパーキングエリアに警察車両を駐車すると、 三菱UFJ信託銀行本店の1階にある「DEAN & DELUCA カフェ丸の内」に入った。 天井が高いガラス張りの空間。 入り口のカウンターで、ブレンドコーヒーとパンプキンチョコチップケーキを トレイに乗せて窓際の席へ。 「すごーい、お洒落」と明子巡査はきょろきょろしていた。 「私は本当にこういう、お洒落な空間が苦手で、 一昨日の現場のタリーズみたいなカフェですら苦手なんですよぉ。 大学も中大で田舎ですから、お洒落な都市空間が苦手で、 就職の時にも品川のオフィス街とか、ミクシィのある渋谷スクランブルとかにも 行ったけれども、 それこそ、だるまストーブと木の床ではない空間だから、 もう、自分の身体、特に胃腸が、そういうお洒落な空間を苦手にしていたんですよ」 店のカウンターの方を見ると、若いOL3人が財布だけもって買い物に来ていた。 カフェラテにクッキーを買うと、テイクアウト。 「三菱UFJ信託本店のOLさんですかね」と明子巡査。 「いやー、3時だから銀行員って事はないんじゃない? どっか、近所のOLだろう」 タイトなスカートでお尻ぷりぷりで、高いヒールを履いている。 「私、ああいうお姉さんにコンプレックスがあるんですよ」と明子巡査。 「こんな化学系建材の都市空間に居て、 コーヒーとクッキー食べて、うん○もぶりぶり平気でする、という。 自分の身体というエロス的なものと、 化学系建材というタナトス的なものの調和に優れているという感じがして。 だって、すごいと思いません? 大理石みたいな柄の化学系建材に囲まれた空間で、 コーヒーとクッキーを買って、 おちょぼ口から胃腸に流し込んで、 今度はTOTOのウォシュレットのあるトイレに行って肛門から出すというのは」 と繰り返した。 「ああいうOLが、表参道のブランドショップでブランド品を買うんだ、 と思いますね」 「俺も似た様な経験をした事があるよ」と光男は言った。 「俺は埼玉のJ大学というFラン大学にいたんだが、 Schottのムートンジャケットを着ていたんだな。何故か。 Schottならブランド品だと思って。 それを着て、埼玉のJ大学から電車で、伊勢丹メンズ館まで行って、 クロムハーツのショップで、革ジャンを見ていたら、 いち、じゅう、ひゃく、せん、まん、60万円? 店員が出てきて「手が出ないでしょう」と言ってニヤついていやがって。 チャラ男の店員が。 「そのジャケット、豚革?」と俺のジャケットを指さす。 「豚革でしょう」と俺の顔に向かって豚革、豚、豚と連呼する。 俺には豚革が似合いだとでも? ふざけやがって。ショップの店員の癖に。 あのクロムハーツの革ジャンは松本人志とかが着ているのかなぁ。 それ以来伊勢丹メンズ館的なものが苦手になったよ。 それは、明子君の表参道のブランドショップみたいなもの?」 「そういう伊勢丹メンズ館とか、このディーンアンドデルーカとか、 三菱UFJ信託のオフィスとか、そういう都市空間の事を、 シニフィアンって言うんですよ。専門用語では。 それでその中で消費生活に戯れている限りは安定しているんですね、 精神分析的には。 でも、私はダメでしたね。私は胃腸が信じられない、という感じで。 タナトスな空間で自分のエロスな身体を維持するのに自信がなくて。 おちょぼ口でクッキーを食べてコーヒーを飲んで、 肛門から排泄して綺麗にウォシュレットで洗浄するという。 なんでミツさんはダメだったんですか?」 「俺はニキビだな。あの時、ニキビが出来ていた」 「そういうのも、精神分析的には、「母へのおねだり」なんですよ」 「俺は、母親に何もねだっていないよ」 「「母へのおねだり」というのは、おっぱいが出たり出なかったり、 うん○が出たり出なかったり、ニキビがあったりなかったりで。 つまり、身体とか脂肪とか、ぽちゃぽちゃぽちゃしたもの、エロス的なもの に関わる事なんです。 都市空間に行くとそういうのが気になっちゃって。 そういうのを無くすために拒食症になる。 脂肪を全て無くせば、あったりなかったり、というのはもう起きないから。 母の愛があったりなかったり、というのはもう無いから。 斎藤警視の言葉で言えば、海馬的ではない、という感じで、尾状核的ですかね」 「ところで、品川のオフィス街とか行ったのに、何で警察官になったの」 「それは、都市空間はタナトス的で、エロスな身体が不安定だったから、 だから、桜田門に就職したという…」 「何で桜田門だと堂々としていられるの?」 「それは例えば 大東亜共栄圏の旧日本陸軍みたいなもので、「神の死」がないというか、 ナチスの親衛隊だったら軍服自体がアイデンティティになるから自信満々ですよね」 「よく分からないが」 ずずずずーっとコーヒーをすする明子巡査。 (30代、大宮ハリウッド座に通っている頃、ホリエモンとか酒鬼薔薇とか、 へー、どこの誰?という感じだった。 その頃、素人もやらせるどうかと思って素人にも手を広げて行って、 5、6人と付き合っていた。 そうしたら、なんとこの俺の誕生日をアンナミラーズで祝ってくれた、女が3人で。 俺一人の為に。 その時、面倒くさいな、大宮ハリウッド座でジャンケンに勝ちさえすれば すぐにただまんにありつけるのにこんな素人と絡んでいるのは、と思った。 その頃は伊勢丹メンズ館もなんとも思わなくて、ポロショップで、 試着が出来ない筈の被り物のシャツなど、何枚も着散らかしても平気だった。 なんたって、桜田門だからなあ。 桜田門の警察手帳を内ポケットに入れていれば、 ナチスの親衛隊の軍服を着ている様なもので、 伊勢丹メンズ館なんて屁とも思わなくなるのかもな。 しかし、今も桜田門だけれどもそんな元気はない。 加齢によって、シニフィアンとやらに弱くなるのかな。 或いは、金さえあれば、銀座の天ぷら屋や寿司屋に行ったりするのかもな、 小津安二郎の映画に出てくるジジイみたいに) 「つまり」と光男は言った。「シニフィアンというのは都市空間みたいなもので、 それはタナトスな空間だから、エロスに自信の無い人には居心地が悪い。 胃腸に不安があるとか肌が荒れているとか。そういう事か?」 「そんな感じですね。それでシニフィアンに跳ね飛ばされて引きこもる」 明子巡査はずーずずずっとコーヒーをすすった。
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