●連載 #1063の修正
★タイトルと名前
親文書
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
「破水しました」ブルーの手術着を着た看護師がドクターに言った。 壁のタイルもブルーだった。 ライトの明かりが分娩台の女を照らしていた。 女のこめかみにもブルーの静脈が数筋浮かんでいた。 「かんし」と老医師が言った。 「でも、女の子ですよ」 「じゃあ吸盤だ」 若い医師が馬乗りになって腹を押している。 「出てこないな。少し切るか」 老医師は、切開して産道を広げた。 頭は出てきたがまだ生まれない。 吸盤で胎児の吸着し、引っ張り出す。 ずるずるずるっと臍の緒二重巻きにして一人目が誕生した。 二人目は簡単に流れ出てきた。 なかなか泣かないので、看護師は足を持ち上げると尻を叩いた。 やがて、か細い泣き声を上げた。 それは初めて吸った空気が声帯を揺らしているのだろう。 その空気は肺からヘモグロビンとして体内に取り込まれ、 五臓六腑を駆け巡り、涙となって流れてくる。 病棟に戻った母親が回復した頃、看護師がお包みにくるまれた2人の赤ちゃんを 持ってきた。 「この子達の誕生は嬉しいけど4体も減数手術したなんて」と母親は泣いた。 「そんなこと言わないで下さいよ。この二人を生かす為にやったことなんですから。 この二人を育てる事が4体の供養ですよ。この子達に何かあったら申し訳ないわよ」 そんな励ましを聞くまでもなく、母親は乳に張りを覚え、飲ませないと、 と感じていた。 母親は、二人の赤ん坊を抱きかかえて授乳室に消えていった。 【完】
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