●連載 #0762の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
その晩もベジタリアンの食事をして皿を洗って、テレビの前のクッションに寝っ ころがってCSを見た。CNNが世界の紛争地域からのレポートを伝えていた。 「これだけ世界中でドンパチやっていても日本は今日も平常運転だものなあ。 しかし日本の思い遣り予算2000億円がイスラエルへの軍事支援20億ドル になっている事は明らかなんだけれどもなあ。そんな事言ったってちょろちょ ろ現地に行けばイラク人質事件高遠みたいに自分探し系に分類されちゃうもの なあ。やっぱ遠くから見ていてブログにでも書くしかしょうがないのかなあ」 「そんな事ないよ。今日、表参道でゲイのイスラエル人と話したもの。ゲイの 日本人とゲイのイスラエル人」それからエルサレム在住のパレスチナ人のレズ がパートナーのイスラエル人を人間としては愛しているけれども国家としては 憎しみがあるという話をしてあげた。 「へー。まぁ、普通ナショナリズムっていうのは」とエコテロさんはなにやら ナショナリズムに関するうん蓄を垂れだしたけれども、どうもこの人は何かの キーワードに反応して蓄積されていた脳内データを垂れ流してくる傾向がある。 それはコンビニで若い女の店員からお釣りを渡されただけでちんぽがぴくぴくっ と反応するような不思議な思考回路に思えるんだけれども、結構男ってそうい う感じで、男の話ってダイアローグのようであってモノローグなんだよなあ。 兎に角エコテロのナショナリズムに関するモノローグは続く。「ナショナリズ ムっていうのは勿論幻想なんだけれども、普通同心円状になっていて、まぁ例 えば野球だったらまず高校野球で母校を応援するでしょう。それからプロ野球 だったら巨人阪神でしょ。最後にWBCってなるんだけれども、同心円状に輪 を広げていって、外側に比べて内側があるだけなんだけれどもねえ。昔から宇 宙人でも攻めて来れば地球防衛軍が出来るとか言うけれども。まぁそんで、同 心円の外側に行く程、透明感が出てくるんだよ。内側にいる程、汗とか身体的 なものだよね。自分で野球をやれば汗をかくんだから。戦争もそうで遠くで行 われるものは透明に見えるんだよ。だから真珠湾の時には「天皇陛下ばんざー い」って言うでしょ。でも、いよいよ攻め込まれて特攻となると「おかーさー ん」と叫んで特攻していくんだってね」 「何でそんな事分かるの?」 「はぁ」 「だってその人特攻で死んだんでしょ。なんで、おかーさーんって叫んだって わかるの?」 「そりゃ無線でもついていたんだろう。兎に角そういうイメージを持っている んだよ。何故か海軍は透明な感じで。山本五十六なんて白い軍服を着ちゃって、 なんかコスプレでもしている感じだよなぁ。全く身体性がないんだよ。だけれ ども負けが込んでくると本当に身体的になってくるよ。茶色の軍服を着た東条 英機の登場だよ。しまいには裁かれるんだけれどもその時にムルソーのように 裁判官がパンツをはいているのかよ、とか驚いても遅いんだよ。そもそも山本 五十六だってパンツをはいていたんだから」と言うとテレビの紛争地域の映像 をしばし眺める。「しかしそうやって同心円状じゃあなくてまだら状になって いる時には排他という事が起きるんだろうけれどもねえ。排他っていうのは身 体性を取り除く事だから、まぁヴィトンのビルのガラスから手の油を拭き取る 様なものだね。普段は仲良しでも何かが起こって身体性がむき出しになると排 他につながるんだろうねえ。関東大震災の時の朝鮮人みたいにね。まあそれも よく分からないけれども、ただより身体的になると排他が起きるというのはそ うだと思うね。じゃあ最も身体的な行為は何かというと、戦争よりも通婚だろ うね。アメリカの白人は黒人と一緒にナチと戦ったけど、結婚するならナチの 女なんだろうねえ。日本でもこういうオスの理論での排他があるよね。ハーフ のタレントはいっぱいいるけれどもみんな女ばっかりだよねえ。じゃあなんで 男のハーフは出てこないのか、というと、日本のオスが許さないからだろうね。 ヨン様OK、東方神起OKなのは日本のオスが自分達の方が優秀だと思ってい るから許しているんだろうねえ。だから日韓共同ドラマでも必ず彼女役は日本 の女なんだろうねえ、深田恭子とか。深田恭子がアジア人以外の男と通婚した ら一気にブラパン扱いだろうねえ。叶姉妹とグッドルッキングガイになっちゃ うんだろうねえ。じゃあ日本のオスが外国人と結婚したらどうなるかというと、 アジア人であろうとWASPであろうと、じゃぱ行きさんと結婚した非モテ扱 いになるんだろうねえ。だから日韓共同ドラマで彼氏役が日本人というのはあ りえないんだよ。そんな事したら「片翼だけの天使」になっちゃうもの」 「そんな事どうでもいいよ。そんなナショナリズムとか男社会とかどうでもい いんだよ。私が思ったのはそんなの無視して自然と付き合えばいいって思った んだよ。自然から湧き出てきたような世界があるんじゃないかなあって思った んだよ。私スカトロじゃないけれども、思ったのは、みんながうんちは臭いっ て思うって事は、世界っていうのはやっぱり自然に支配されているって思った んだよ。だってうんちって自然でしょ?」 「それは猿とか猫のマーキングのようなもので消化腺とか腎臓とかから何かが 分泌されていて、縄張りやらセックスのアピールになっているんだろうなあ」 「私、「異邦人」読んだの」ちらっとエコテロの本棚の銀色の背表紙を見る。 「ムルソーが裁判官がパンツをはいているからダメだっていうのは、裁判官だっ てうんちをするんだから自然の内にあるって事なんじゃないのかなあって」 「あれは裁判官が便秘だったり下痢だったりするだけで判決の内容が変わるか も知れないという恣意性が嫌だったんじゃないの?」 「違うよ。うんちをするって事は自然のうちにあるって事で、自然のうちにあ るなら太陽を相手にするべきなのよ。人間が作った裁判なんて無視。ムルソーっ て、殺人の動機を聞かれて、太陽のせいと言っているよね。何時でも牢屋から アルジェの太陽を見ていたよねえ。太陽しか相手にしていないんだよ。太陽は 植物を育てるし、植物を食べればうんちがでるし。うんちが出る限り人間は太 陽に支配されているんだよ。サラリーマンだって朝おきて混んだ電車に乗るの は、太陽のせい、なんじゃないの? そんで朝マックを食べて。朝マックがあ るから太陽が昇るわけじゃないんだよ。太陽が昇る時間にあわせて朝マックを 用意しているんだよ。太陽が昇れば田畑を耕すし、季節がくれば刈り入れをし て、お正月はマックじゃなくてお雑煮を食べるんだよ」 「それがなに?」とエコテロは言った。「それが日本の原風景とでも?」 「そうだよ。そういう太陽とか稲とか自然の摂理の上になりたっているのが世 界だよ」 「そんなものはね、作られたイメージなんだよ。この前だって日本の原風景を 守るとかいって、6兆もつぎ込んだの知っている?」とまたまた訳の分らない 事を言ってくる。最早お互い様だけれども。「アキコは知らないかもしれない けれども。ウルグアイラウンドなんて。日本の風景を守るとか言って6兆もつ ぎ込んで、全部消えたんだから。何に使ったのか調べようとしたら大臣は自殺 するわ、残ったのは捨てられた農地とあととりの居ない小さな農家と農道で。 だいたい日本の食糧自給率が低いのは家畜の飼料を輸入しているからであって、 いっくら稲作だの野菜農家だのを保護したって食料自給率なんて上がらないん だから…いやまあそれはいいんだけれどもね。そんなことはぐぐってもらえば いくらでも出てくるから。ただ俺が言いたいのは、つい最近の6兆だってどこ へ行っちゃったか分からないのに、柳田国男みたいな事言われたって、なんの 根拠もないし、やる気満々野郎がやりたい放題やる為にありもしない日本の原 風景みたいなものをあぶりだしているだけだろう」 「丙午は?」 「はぁ?」 「なんの理由もないのに突然4分の1ぐらいの人が子供を産まなくなるんだよ。 昔の話じゃないよ。1966年がそうだったんだから。うちのお父さん丙午だっ たんだから。やる気満々野郎とは関係なしにみんなが思っている何かがあるん じゃないの? 忽然と6兆円消えるよりもはるかに不思議じゃない。何か目に 見えない結束力を感じるよ。そういうのが日本の心だよ」 「女の発想だね。女だからそんな事思うんじゃない? 女は大地や自然や宇宙 や月を感じるからね。月のさわりとか。男は何時でも射精出来るもんね」 「何時でも射精できてもauの請求書は毎月くるじゃない。毎月って事は月や 太陽に関係あるんじゃないの?」 「auの料金プランなんてあんなインチキ臭いものはないんだぜ。公共料金だっ て税金だって。税金なんて本当にやる気満々野郎が勝手に法律作って決めてい るんだから。税金だけじゃなくて各省庁が勝手に法律作って賭場開いてんだか ら。農水省は競馬とか経産省は競輪とか国交省は競艇とか文科省はTOTOと か総務省は宝くじとか財務省は証券取引所とか警察はパチンコとか。暗たんた る気分になるだろう。なんでもそうだよ、ゆとり教育とかロースクールとか陪 審員制度とか、みんなやる気満々野郎が民主主義とは何の関係もなく勝手にや るんだから。戦争だって同じだよ。やる気満々野郎が気まぐれでやっているだ けだよ。やられた方はなんでだろう、って考えるけれどもね。なんでひっぱら かれたんだろうって丸山真男は考えるけれどもね。殴るほうには理由なんてな いからね。ただ気まぐれで殴っているんだから。あるのはあいつらの意志だけ だよ。意志の足跡を世界だ歴史だと言っているだけだよ」 「それじゃあ猪木じゃん」 「は?」 「それじゃあ猪木だよ」 「は?」 「この道を行けばどうなるものか 危ぶむなかれ 危ぶめば道はなし 踏み出せば その一歩は道となり その一歩が道となる」 「せめて道程とか言ってほしいよなあ」 「ドーテー?」 「僕の前に道はない 僕の後ろに道は出来る ああ、自然よ 父よ 僕を一人立ちにさせた広大な父よ 僕から目を離さないで守る事をせよ 常に父の気魄を僕に充たせよ この遠い道程のため この遠い道程のため まぁ、森に出来た獣道だな。それを世界だ歴史だといっても」 「でも地球がその獣道にすっかり覆われているならそれが世界じゃない」 「だけれどもそれは獣道だったんだよ。合理の道じゃないんだよ。別にこの 道じゃなくてもなんでもよかったんだから。そういうだらしない網がだらー んと世の中の半分ぐらいを覆っているだけだよ」 「その獣道がどんなにくねくねしていようとも森は太陽が作るんだよ。農道 がどんなにくねくねしていようともお米は太陽が作るんだよ。カミュだって ニーチェだって本田美奈子だって太陽を礼賛しているんだ。エコテロさん、 世界は喪男の見る幻影とか言っているけど人一倍世界を気にしているんじゃ ないの? 世界がどうでもいいなら太陽と付き合えばいいじゃない」それだ け言うと私はキッチンに行って服を脱いでユニットバスに入ってドアをバタ ンと閉めた。
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