●連載 #0688の修正
★タイトルと名前
親文書
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
東京フォーラムはコンクリートで出来た巨大建造物で、 行列している人々はコミックマーケットのオタクの様でもあり 任天堂DS発売初日にヨドバシカメラに並んでいるオタクの様でもある。 おばさんもいるしその子供がソフトクリームをなめながらぐるぐる走り回っている。 医学生や看護学生という感じじゃないなあ。 しかし「立ち止まらないで下さい、前に進んで下さい」 という場内係員の声に促されてジリジリと進んで行くと 辺りはだんだん薄暗くなってくるしライトアップされた入口が見えてくると なんだかドキドキしてきた。 「ドキドキしてる?」と阿部君が言った。「ああいうの見るんだよ」 と言うと入口付近に貼ってあるポスターを指した。 一見ギリシャの彫刻の頭部みたいなのだけれども、 頬とか耳の下あたりから血管だか神経だかが剥き出しになっていて グロさを予感させる。 私は普段インターネットでもグロ画像は踏まない様にしている。 と思っている間も行列はどんどん前に進む。 「止めるんなら今の内だよ」と阿部君が言った。 「平気だよ。あんな子供だって平気なんでしょ」 そのまま後ろの人々に押されるままにじわじわと入り口に向かって行く。 入り口付近は薄暗かった。 中に入るといきなりライトに照らされた四、五体の標本が目に入ってきた。 デパートのマネキンみたいに台に乗せられている。 赤っぽく光っている。 それは皮膚を剥がれて脂肪も取り除かれていて筋肉がむき出しになっているからだ。 なんだよこれ、と思った。冗談でしょう。 押されるままに歩いていく。このまま押されて出て行ってしまいたい。 が、行列は一体の標本の前で立ち止まってしまった。 「ほら、見てみな」と阿部君。「結構凄いよ」 恐る恐る見ると、右側は筋肉むき出し、左側は骨むき出しで、 骨の隙間から肺とか胃とかの内臓が見える。 股間には棒とか玉もぶら下がっている。 ううううう。これ全部本物なんでしょう。 顔も右側だけ筋肉が残してあって眼球が妙に光っていて ぼんやりと宙を見詰めている。 なんとなくエスパー伊東のような小島よしおのような顔をしていて なんか表情を感じると、この人生きていたんだと思えて、 急に胸焼けがしてきて、口の中が酸っぱくなってきて、 口の中が乾燥してきて、昼に食べたやきそばパンとめろんパンは まだ胃の中に残っているのだろうかと思った。 「どんどん前に進んで下さい」という係員の声に促されて行列は更に進む。 もう今更引き返せないよお。パニック障害の人って電車のドアが閉まった瞬間に どんなに息苦しくても動悸がしても次の駅まで我慢しなければならない と思うんだよなあ、 そんな不安に襲われながら押されるがままに歩いて行くと、次の部屋の入口に、 いらっしゃいませみたいなポーズの標本があって 中に入ると又四、五体の標本が立っている。 立ち止まりたくないと思っていたが、 やはり一体の標本の前でみんなが止まって観察をはじめてしまった。 恐る恐る顔を上げる。 なんだよ、これは。 頭のてっぺんから全身が真っ二つに割れていて、 中に肺と心臓がついた背骨があってマーズアタックの宇宙人みたいな顔がついている。 なんなのよこれ。手に持ってんのなに。右手に肝臓、 左手に胃だの腸だのを持っている。 「どんどん前に進んで下さい」と言われて行列は更に前進して次の部屋に入って行く。 そこには四体の標本が丸でフォークダンスでもするみたいに 前の標本の肩に手をおいて並んで立っていた。 それをなるべく見ない様にスルーして進んで行くと 隣の触れる標本のコーナーでみんなが立ち止まってしまった。 そしてみんなで触っている。 「鶏肉みたいだね」 「ビーフギャーキーのようでもあるね」 「食えなくなるだろう」 「俺は平気だよ。寄生虫館の食堂でうどんを食ったからね」 「ここら辺、ベーコンのようでもあるね」 と聞いて夕べアスパラの上にかかっていたベーコンを思い出した。 「おい福永」阿部君が声をかけてきた。「大丈夫? なんか顔色悪いよ」 「気持ち悪い。外に出たい」と私。 外に出ると阿部君が顔を覗き込んで来る。「大丈夫かよ。どっかで休む?」 「あそこで飲むもの買ってきて。お茶がいい」とampmを指した。 ペットのお茶を口に含んだら少し落ち着いた。 「どうする?」と阿部君。 「帰る」 「平気?」 「平気だよ」私は歩き出した。 「進路の事はよく考えた方がいいよ」と阿部君が私の背中に言った。 つづく
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