#1158/1158 ●連載 *** コメント #1157 ***
★タイトル (sab ) 22/10/25 13:56 (109)
ニューハーフ殺人事件22 朝霧三郎
★内容
副題:シニフィアンに跳ね飛ばされると最後はアナルに走る。
何故シニフィアンに跳ね飛ばされたのにシニフィアンを気にするのか。
「だったら、静かにアパートに引きこもっていたいのに、何で気になるの?」
「何が、ですか?」
「さっき、ミクシィ本社の入っている渋谷スクランブルとか言っただろう」
「はい」
「そう聞いただけで、ミクシィだけじゃなくて、
「渋谷で働くアメーバーブログの社長」とか「はてな」とか、
そういうのが、びびびびびーっと連鎖するのだけれども。
それは、西武が気に入らないとか、野田秀樹が気に入らないとかと
同じ感覚で、何でそんな事が起こるんだろう。
シニフィアンに跳ね飛ばされたのなら、
静かにアパートに引きこもらせてくれればいいのに」
「それはそういうものなんですよ。
私は都市空間がダメで、
就職の時に品川のオフィス街で目が回ったんですけど、
それより4年前、受験の時に、代ゼミに行ったんですけど」
「代々木ゼミナール?」
「ええ。
夏休みに抜け駆けして、友達には黙って、代ゼミに行った事があったんです。
そうしたら、すごいストレスで。
山手線なんて乗車率190%とか。
教室もすし詰め状態で。
それで嘔吐恐怖症になったんですね。
吐くんじゃないかという強迫観念に襲われたんです。
それで、近所の心療内科に行って、
それは1週間ぐらいで落ち着いたんですけれども。
1週間ぶりに駅前に行って、当時はまだ駅前に啓文堂とかあったんですけど、
書棚を見たら、新潮文庫の100冊とかがずらーっと並んでいたんですね。
それを見て、自分は新潮文庫の10冊も書かなければならないと漠然と思ったんです。
それと同時に、マザーテレサとか神谷美恵子とかジョン・レノンみたいに、
世界平和の為に活躍しないといけないと思えてきて」
「おいおい、それが、「渋谷で働くアメーバーブログの社長」となんの関係が
あるんだよ」
「だから、ミツさんだって、伊勢丹メンズ館でバカにされて、
埼玉の田舎に引きこもった時に、
西武が気に入らないとか野田秀樹が気に入らないとか出てきたんでしょ?」
「ああ」
「その時に、何かにハマったものありません。
オタク系のものでも、私の新潮文庫の100冊みたいなものでも」
「そういえば、俺、今でもボクシングジムに通っているだろ」
「はい」
「ボクシングに最初にハマったのは、あの頃だなあ。
ボクシングマガジンの別冊のボクシング年鑑にハマって
ボロボロになるまでページをめくったよ。
特にヘビー級のボクサーが好きで、
フレージャー、フォアマン、スピンクス、ホームズとかね」
「へー。正にそういう感じですよ。
シニフィアンに跳ね飛ばされた時にデータベースにハマるんですよ。
それがお経だとカルトにハマる。
ところが、新潮文庫の100冊にしろ、ボクシング年鑑にしろ、
そういうのは、ラインナップとして用意されたデータベースではなくて、
人間の脳が尾状核的だから、連鎖していってしまうものだと思うんですよ」
「おいおい、尾状核なんて斎藤警視の言っていた事じゃないか」
「でも、ああいうネズミの実験とか、心理学科でも結構有名で、
認知心理学も認知科学も似ているから知っているんですよ」
「へー」
「だから、ミツさんが、ミクシィ、とか、
「渋谷で働くアメーバーブログの社長」とか「はてな」とかが連鎖しちゃうのも、
尾状核的な人間だからですよ」
(俺が尾状核的な人間か。
そうかもな。
何しろ夕べアリスに感じちゃったんだから、
池袋や京都のガイシャに近いのかもな)
「渋谷といえば、渋谷系の音楽ってあるじゃないですか。
「フリッパーズ・ギター」とか「ピチカート・ファイブ」とか。
知ってます?」
「知ってるよ。時代だもの」
「あれって、リミックスサンプリングって言われるじゃないですか。
なんかのデータベースからカットアンドペーストしてきているって。
あれって、90年代になると、色々なストレスが増えたから…、
それこそ、だるまストーブや木の床から、化学系建材の建物になった、とか、
だから、尾状核的になって、それで連鎖しているだけじゃないかと思って」
「そんなに難しい事じゃないよ。
俺は61年生まれで90年代に30代だったが、
その頃給料も増えてきたから車も買って、
カーラジオはFMで、
J−WAVEが流れてきて。
タワーレコードが井之頭通りからファイヤー通りに移ってきた頃だけれども。
あの頃に金、土、日と遊んで
夕方に「サウジサウダージ」を聞きながら帰ってきたんだよ。
あの頃を忘れられる訳がない。
それが今や、J−WAVE、六本木ヒルズ、滝クリ、JAL「サウジサウダージ」が
セットになって、陰のシニフィアンになっているんだからなぁ。
シニフィアンに陽と陰があるなら」
「そりゃあ、一見セットになっている様に感じますが、
実は、ミツさんが尾状核的だから連鎖しているだけなんじゃないんですか?」
「じゃあ聞くが。
90年代、大宮ハリウッド座にハマっていた頃、
ホリエモンとか酒鬼薔薇とか、社会を騒がせている存在が、どこの誰ですか?
って感じだったのは何故?
何で尾状核的に連鎖しなかったの?」
「そりゃあ、そのストリップ劇場で、まったりとしていれば、
海馬のニューロンの受容体にまったりイオンが流れてきて、
受容体をふさいでしまうから、
もう、尾状核的なイオンは流れないんですよ」
「ふーん」
「私、池袋や京都のガイシャも、ミツさんの言う陰なシニフィアンに
尾状核的にびりびりしていた奴じゃないかと思うんですよね」
突然明子巡査は事件の話をしてきた。
「池袋のガイシャはA/X ARMANIで、京都のガイシャはメンズビギ
ですからねえ。そういう感じがしますね」
(池袋のガイシャは大宮ハリウッド座からリブレ高田馬場に行っている。
俺もガイシャも尾状核的な人間なのだろう。
何しろ、昨日アリスに感じちゃったんだから。
というか、どうして尾状核的な人間だとアナルで感じるんだろう)