#1149/1158 ●連載 *** コメント #1148 ***
★タイトル (sab ) 22/09/30 12:37 ( 68)
ニューハーフ殺人事件13 朝霧三郎
★内容 22/10/08 07:09 修正 第2版
副題:男の癖にペニス羨望があるの?
(そうだ、俺は捜査に来たんだった)と気が付いて水戸光男は席から立ち上がった。
出口を出て行って小窓の中の店員に「ちょっと、これこれ」と言いつつ、
警察手帳を突っ込んでひらひらさせた。
「ちょいとばかり今の女王様に話を聞きたいんだがな」
「ちょっと待ってください」
と言うと、店員は携帯で電話をかける。
「もしもし、受付だけど。ルカ女王様いる? でかけた? どこに。飯ぃ?」
小窓の中から店員がぎょろった目でぎょろりと見上げた。
「たった今でかけて行ったらしいんですよ。次のステージまで2時間はあるから、
それまでは帰ってこないかもなぁ」
「どこにでかけて行ったんだ」
「さぁ、車だろうから」
「わかった」
水戸光男は、一階まで階段を駆け下りると、付近のコインパーキングを見回した。
いたいた。
ロングコートの女王様が赤のアルファロメオに乗るところだった。
「ちょっと、ちょっと」と言いつつ光男は駆け寄った。
「ちょっと女王様、聞きたい事があるんだ」
「あら、なんです? 個別の相談だったらお店の方でお願いしたいんですけど」
「いや、そうじゃないだ、俺はこういうものなんだけれども」
警察手帳を見せる。
「あら、刑事さん?」
スマホを出すとガイシャの写真を表示した。
「この男を知っている?」
アルファロメオのコアラの鼻みたいなフロントグリルによりかかって
女王様はしばし凝視した。
「ああ、この男なら、何回か調教した事あるけれども」
「あ、そう」
「でも、結局この人は真性の奴隷じゃなくて、肛門性愛者だったのよね。
アナルを攻めてくれ攻めてくれっていうんだけれども、
私のペニバンじゃあ満足しなかったのよ」
「ぺにばん?」
「ペニスバンド」
「あぁ」
「本当のおちんぽに入れられたいんですって。
それじゃあニューハーフヘルスねっていうんで、紹介してやったのよ」
「どこを?」
「早稲田の方にね、リブレ高田馬場っていう、シーメール専門のお店があるのよ。
店長が知り合いなんだけど。
そこを紹介してやったのよ。
刑事さんもそこに行けばあの変態の情報が得られるかも知れないわよ。
場所はスマホでググればすぐに出てくるから。リブレ高田馬場で」
「分かった、ありがとう」
「どういたしまして」
言うと、女王様はアルファロメオで出てゆく、排気ガスは残らない。
(たしかに、あの女王様にペニバンで責められるよりも、生ちんぽを入れられた方が
いいかも知れないな)と光男は思った。
(ここで問題なのは、生だからいいという事ではない。
昔、ストリップ劇場の知り合いで、
どっかの歯科医院で女の歯科助手に生手で歯茎をマッサージされて勃起した、
などと言っていたやつがいたが、そういう問題ではない。
ペニバンを装着した“女”よりも、
生ちんぽをもっている“男”の方がいいという事だ。
という事は、俺には男の癖にペニス羨望があるのか)
光男は眉間に皺を寄せて考えた。
(でも俺はゲイじゃない。
スティーブ・マックイーンやシルベスター・スタローンに
カマ掘られたいとは思わないもの。
しかしペニス羨望はある。
例えば、啓子巡査にペニスがあれば最高なのに、と思う。
それは変態なのだろうか。
変態じゃないだろう。
変態だと思う奴は実際に“泉水らん”とか“ellahollywood”で検索して画像を
見てほしい。
そうすれば、これがゲイじゃない事が判明するだろう)
光男はスマホをOFFするとズボンのポケットに入れた。
#1150/1158 ●連載 *** コメント #1149 ***
★タイトル (sab ) 22/10/03 11:43 (354)
ニューハーフ殺人事件14 朝霧三郎
★内容 22/10/05 12:14 修正 第3版
副題:男の癖にペニス羨望があるの? Part2。
N-BOXの車内に戻るとスマホを出して“リブレ高田馬場”で検索。
“リブレ高田馬場”は一番上に表示された、勿論。
『コンパニオンのほとんどが現役OLや学生という23区内の超穴場優良店です。
“彼女”達は元女優でも元モデルでもないから初々しいったらありゃしない。
その癖テクは極上というからおったまげー。
そんな男の娘とニューハーフがあなたを…』
そこをタッチすると店のhpが表示された。
在籍一覧、スケジュール、料金…というメニューの中から、在籍一覧をタッチ。
AKB48メンバー一覧の様に画像がつらーっと表示される。
その中から、なるべく加工していなそうで、かつ、好みのタイプ…
見るんだったら平手友梨奈や満島ひかりみたいなDNAを感じさせるタイプ、
例えば蝶の様な生物にはDNAを感じないだろうか、そういうタイプ、
しかし個体としては、蒼井優やちょっと古いが眞鍋かをりの様な
きりっとした目元の女が好みだったが…
のパネル写真をタッチする。
プロフィールのページが表示された。
大きめのパネル写真は数秒ごとに切り替わっていたが、
その1枚は、
バックで片足をテーブルに乗っけている写真で、ビキニ姿なのだが、
股間にふくらみがこんもりとあり、ぺろりを脱がせばちんぽがでてくると思えて、
光男は萌えた。
尻周辺もホルモンをやっているせいか、女性的なふくらみがあり、
色も白いのでアナルもピンクかも知れない。
喉がカラカラになってきた。
スマホを擦ってスクロールさせる。
【スペック】
名前:アリス
年齢:22歳
T:170
B:90 (Dカップ)
竿:有り 玉:有り
Pサイズ:15
タイプ:ニューハーフ/地毛
【オプション】
AF:◎
逆アナル:◎
3P:◎
生フェラ:◎
射精:○
ソフトS:◎
ソフトM:◎
『パネルの通り、月夜のごとく澄んだ目元が印象的なアリスさん。
引き締まった抜群のスタイルにホルモンも効いてきて、
ピンクのびーちくがでてきばっかり。
でも、ペニクリはまだびんびんという、
トラニーチェイサーにはたまらない状態。
しかも、プレイに関してはまだ修行中の未熟者、
かえっていろんな事ができちゃうかも。
とにかく元気なので、カマなしでも逆AFok。
もちろん透明射精つき。
こんなトラニー現在進行形のアリスを逃す手はありません。
本当にこの旬な時を逃すなんて、ありえませんyo----』
(メール予約するしかない)光男は決断した。
『お客様のお名前 水戸光男
お客様のメルアド mitu2022@gmair.com
お客様の電話番号 080−**88−19
ご希望日時 10/15 19:00
ご希望の希望タレント アリス
希望コース 90分
個室又は出張 個室
AFのタイプ コンパニオンの逆アナル』
これだけ入力すると送信をタッチした。
一回車から降りると、コインパーキング横の自販機から
デカビタCを買って戻ってくる。
キャップを外して、ごくりと喉を潤す。
ナビに店の住所を入力すると案内開始ボタンにタッチした。
「ルート案内を開始します。実際の交通規制に従って走行して下さい」
というナビの音声案内に従って、車を発進させた。
すぐに新大宮バイパスに出ると、ひたすら南下。
高島平からは池袋線の下を走っていって、山手通り、新目白通りと走っていって、
山手線の高架をくぐって右折すると目的地だった。
走行距離キロ28.9キロでも全然疲れない。
犬は獲物を追いかけている間は全く疲れを知らないというが、
トラニーチェイサーもトラニーを追いかけている間は疲れないのか。
高田馬場1丁目パーキング3時間1500円に駐車すると、
一通の裏道を歩いた。すっかり日は暮れて人通りもまばらだ。
坂が多くて路面電車が走っていて、丸でサンフランシスコみたいに変態が似合う街だ。
こういう街だとN-BOXでも平気だ、と感じる。
内堀通りとかだと、軽だとダメだと感じる。なんでだろう。
店の場所が分からないので電話する。
「もしもしぃ」相手の声は太いがオネエの声だった。
「予約している者なんですけど」
「どちらさん」
「水戸といいます」
「ミトさんね、はい、今どちらにいます?」
「高田馬場整形外科の前」
「じゃあ隣にセブンがあるでしょう。その隣のマンションがそうだから。
504をおして下さい」
到着すると、オートロックで部屋番号を押す。
「19時から予約している水戸ですが」
アイホンのライトが付いてから、無言のままオートロックが解錠された。
504に入るとそこが受け付けになっていた。
玄関先にカウンターが据え付けてあって、身長180センチ体重100キロの
巨漢のオカマが手をついていた。
「いらっしゃい」
玄関右手には三段ボックスがあって、DVDが積まれている。
裏DVDでも売っているんだろう。
カウンターの向こうはダイニングで、応接セットがある。
その奥に引き分け戸があって、向こう側は和室か。
左手にもドアがあって洋室がありそう。
その手前が洗面所で洗濯機が回っている。
その左側がキッチンコーナー。
マドンナの「Live To Tell」が流れていた。
(懐かしい。昔大宮ハリウッド座で聴いた曲だ)
和室から、一人若いトラニーが出てきて、
キッチンコーナーの冷蔵庫からドリンクを出すと持って行ったが、
途中で止まって、ちらっとこっちを見た。
そのトラニーが和室に帰ると、
別のトラニーが顔を出してこっちを見る。
顔を引っ込めると、部屋の中から、キャッキャッ聞こえてくる。
「誰が指名されるんだろう」とか話しているのでは。
トラニー達の柑橘系の香水の香りが漂っている。
目の前の巨漢オカマはチョコレートの香水を付けていた。
それからマドンナの「Live To Tell」。
一気に気分が高揚してくる。
どんなに陳腐な景色でも若い性的な人間と、
良い曲、マドンナの「Live To Tell」とか、と、
香水の香りとでドーパミンが出るのでは。
…と見回していたら、
「あんた、警察の人」とオカマが訝った。
「いやいや、そんなんじゃないんだ。顔がごついからよく間違えられるけど」
「あら、そうぉ? あんた、あの子をご指名ね」とタブレットを見せてくる。
「いやー、まだ初心者で」
「それにしちゃあお目が高いわね。それじゃあ20000円になります」
財布から1万円札2枚を出して渡す。
それと引き換えに、キーボックスから出した鍵を渡される。
「それでは206号室でお待ち下さい」
(なんだ、あの奥に入れてくれるんじゃないんだ。
マンションの別室が個室になっているのか)
206は504とは違ってリビングもなく、純然たるワンルームだった。
真ん中にベッドがあるだけで後は造り付けのクローゼットがあるだけ。
道具はあの中にあるのだろうか。
ちょっと肌寒い気がして、光男は自分でエアコンを入れた。室温は暖房26度。
きんこーん。
「おじゃましまーす」
鼻にかかった声で言いながら、アリス嬢が玄関を開けて入ってきた。
ユーチューバーの元男の子の青木歌音が言っていたが、
元男の子は女の声を出す為に「ワレワレハウチュウジンダ」と鼻声を出して
だんだん高くしていくのだ、と。
それで鼻声なんじゃなかろうか。
とにかく、一目見た瞬間に、いい、と思った。
蒼井優に似た切れ長の目で、鼻すじも通っていて、顎はとんがっている。
走ってきたのか、息が荒く、小鼻が収縮している。
息のニオイはピーチとかフルーツの香り。
最近、光男は、pornhub、XVIDEOSなどで、shemalesで検索して動画を見ていたが、
時々、マット・ディロンがズラをかぶったような顎の発達したシーメールが出てきて、
ああいうのは冗談じゃないと思っていたのだ。
(つまり自分は相変わらず女を求めているのか)とも思うが、
とにかく今目の前にいるアリス嬢の女らしさに、いい、と思うのだった。
「君、いいねえ」光男は素直に言った。
「ありがとうございます」
「なんつーか、両性具有の魅力があるよ。
つーか、男の娘とニューハーフの違いって何?」
「ホルモンをやっていないのが男の娘で、やっているのがニューハーフですね。
いくら無し無しでもホルモンをやっていなかったら男ですね。
無し無しでやっていないなんてあり得ないけれども」
「君はホルモンやっているの」
「やってます。だから最近おっぱいがでてきた」と自分で乳を寄せた。
「じゃあ、私脱ぎますから」
アリスは、デニムジャケットを脱ぐとクローゼットに入れた。
ぴっちりとしたカジュアルシャツに、スリムなジーンズ。
ほんのりと乳房のふくらみもわかる。
それも脱ぐと、ブラとパンティになった。
おっぱいはかすかに膨らんでいるのに、股間は盛り上がっている。
又、喉がカラカラになってきた。
クローゼットからバスローブを出すと、「お兄さんもこれに着替えて」
と渡してくる。
「パンツも脱ぐの」と光男。
「もちろーん」
「なんか飲むものないかなあ」
「なんで? 喉乾いてきちゃった」
アリスは冷蔵庫から、ジャスミン茶のペットを2本だしてきてくれた。
バスローブ1枚でベッドに座るとブラにパンティのアリスが横に座った。
「じゃあ、上、脱ぎますね」と言うと、ぺろんとブラを外す。
白い水泳選手の様な肌にかすかに膨らんでいる乳房、そしてピンクの乳輪がある。
「君いいねえ」
アリスはうずくまる様にしてパンティも脱ぐ。ダビデ像の様な包茎が現れた。
まさにダビデの包茎。
「君、最高だよ」
「お兄さんも脱いで」
光男はバスローブを脱ぐ。
「わー、結構たくましいですね」
「歳の割にはね。ボクシングで鍛えているから」
光男は「君いいねえ」を繰り返しながら、アリスの背中をまさぐると、
胸の方に手をまわして、微かに膨らむ乳房を手のひらでおおい、
ピンクの乳首をつまむ。
手を尻にまわすとお尻のほっぺを開こうとする。
「ああ、まだシャワーを浴びていないから」
「いいよ、そんなもの」
ここで、ひらりと身をかわすとアリスはベッドの上で四つん這いになった。
猫の伸びのポーズ。
色素沈着していない肛門に、股にはさまれた金玉とペニスをいいと思う。
「君、いいねえ」
「どこが?」
「顔と、ちょっと出たおっぱいと、大きすぎないダビデのペニスが」
四つん這いで、肛門が見えていて、股間に金玉を挟んだ状態で、
蒼井優似のアリスがこっちを見ている。
(何を俺はいいと思っているのだろう。
顔がいいと思うっているのか。
絶対にマッド・ディロンじゃダメだから、女を求めているのか。
みんなボーイ・ジョージに何を求めているんだろう。
しかし、絶対にそこにまんこがあったらダメだから、女を求めている訳じゃあない)
「マッド・ディロンみたいなのはごめんだからな」光男は呟いた。
「えー、なに、それ」
「いやー、エロ動画のシーメール物で、マッド・ディロンみたいに
顎の長いのがズラをかぶったのがあって、ああいうのはかなわないな、と」
「ふーん。ホルモンが遅かったのね。かわいそうに。
じゃあ、お兄さん、逆AF希望ですよね」
「逆AF、やられたい」ジャスミン茶を飲みながら言った。
興奮して喉はカラカラだった。
アリスは前面に立つとペニスを見せた。
「じゃあ、逆AFなら…」
と言って自分の股間を見下ろす。「あー、どうしよう、まだ私の立っていない」
勃起していない包茎のペニスをこちらに寄せてくる。
「ちんぽおおきくして」とアリス。
アリスのを見ると、勃起はしていないが、
立ったら光男のより2、3センチはでかかろうというサイズだった。
(舐めたい)と光男は思う。
(肛門性愛だけじゃないじゃないか。包茎のちんぽも好きなのか。何でだろう。
何で包茎のちんぽが好きなんだろう)
謎が脳内でうずまいて、それでテンションが上がる。
最初手で持ち上げてみたが、
触らないまま空中にある状態のダビデの包茎を口で受けてみたい、と思った。
アリスの前に跪くと目の前に包茎ペニスがあった、朝露に濡れる朝顔の蕾の様な。
「じゃあ、吸うよ」
生まれて初めて人のペニスをしゃぶった。
口の中で徐々に勃起してくると、包皮が剥けるのも分かった。
勃起してくると、アリスは手を伸ばしてきて、こっちの乳首を強めにつまんだり、
なでたりした。
完全に勃起すると、ハモニカみたいに横を舐めたり、リコーダーの様に
縦に舐めたりする。
今やアリスのペニスはぎんぎんにいきり立っている。
そして上半身には小さい白い乳房とピンクの乳首があるのだ。
「じゃあ、逆AF行く?」とアリス。
「いきます」
「じゃあ、最初、ほぐしてあげる」
アリスは体を離すと、
クローゼットから短めのアナルビーズとローションを出してきた。
「じゃあ、お尻にこれ塗らないと」
「え、何それ」
「これが一番いいのよ。SODローション ロングバケーションタイプ」
(SODってそんな物まで作っているのか。「マネーの虎」の高橋がなりは。
そんなものを作るんじゃあ生産設備も必要だろう。そんな資産があるのか。
それともOEMで名前だけ貸しているのかなあ。なんか、西武の堤一族みたいな
勢力の大きさを感じて、嫌だなあ)
そんな事を考えている間に、ローションは塗られて、
アナルビーズの一個目は既に吸い込まれていた。
「ほら一個吸い込んだ」とアリス。「お尻を緩めて、緩めて。
ほら、又一個吸い込んだ」
そうやって、すぐに5個まで吸い込む。
「じゃあ、抜くわね」
ずるずるずるーと引っこ抜かれる。
そして、指2本でアナルをぐりぐりする。
(感じるー)
しかし不思議な事に、ちんぽは萎えていた。
「さあ、お尻の方はバックオーライ」
アリスは、コンドームを取り出すと、器用に装着した。
光男のちんぽを見て、「あれぇ、勃起していないのにお汁がたれている。
勃起していないのに感じているの?」と言う。
手を伸ばしてきて、こっちのちんぽに指を絡めてくる。
「じゃあ、四つん這いと正常位とどっちがいい?」
「う、正常位」
「じゃあベッドの上で仰向けになって」
ベッドに仰向けになると、
アリスがこっちの膝の後ろをおしてきてM字開脚させられる。
その状態で、アリスは勃起したペニスを押さえるとこっちの睾丸の下にあてがう。
腰の力で鬼頭だけぬるっと入ってきた。
「ほら、頭だけもう入っちゃった。じゃあ、もっと深く」
ずるずる、と入ってくる。
「ほら、もう根元まで入った」
それから抜く。
又入れる。
こっちの脇の下あたりに手をつくと、アリスはペニスを出し入れしだした。
(肛門で擦れる感覚がたまらない)
自分のペニスを見ると本気汁が溢れていた。
「いいよ。すごくいいです」
言うと抱き着いてアリスの乳首を吸う。
アリスはこっちの首すじに抱き着くと、ピストン運動を始めた。
「はあ、はぁ」と溜息がもれる。「はぁ、いいです」
「いきそう?」
「いきそうです」
ちんぽも勃起していた。
アリスは上体を起こすをこっちのペニスをしごきだした。
「じゃあ、行っちゃって」言うと、ピストン運動を激しくする。
「あ、ああ、ああ、ああ」
すぐに果てた。
その途端に肛門が拒否する。
「あー、もういい」と光男は腰を引いた。
「ふうぅ」ペタン座りするとアリスは微笑した。
「やっぱ早いよね。ベテランになると勃起しないまま射精する人がいるんだから。
そういう人は、たらたらと何時までも射精しているの。
“ところてん”っていうんだから。私じゃ出来ない技だけど」
こっちのちんぽを握って精液の残りを絞り出すと拭いてくれる。
自分のコンドームも始末した。
人心地着くと二人は、ベッドに座ってジャスミン茶を飲んだ。
「まだ、50分も余っている。スイッチして、お兄さんがこっちにAFして
フィニッシュしてもよかったんだよ」
「俺もそう思ったよ。入れられたいが入れてもいいと思った。
何でそんな事思うんだろう。
アリスのプロフィールにも、AF◎、逆AF◎ってあったよねえ。
ゲイだったら、たちとねこは入れ替わらないだろう。
女を求めているが、ペニスを求めていて、しかも、ねことたちが入れ替わる。
何でちんぽが欲しいのかぁ」
「3つ説があるの。
第一の説は、ペニスをクリトリスに見立てている感じ。
ペニクリっていって、バイブを鬼頭に当てて、行きそうになると離して、
おさまると又当てて、って、何回もやると、じわーっと精液が滲み出てくるっていう
プレイもあるんだけれども。
第二の説。女にペニスがあるのは面白いという説。
第三の説。女性性器嫌悪説。気持ち悪いじゃん、おまんこって。
内臓みたいで」
(インターフェースが変わったって事か。
つまり、相変わらず女を求めてはいるのだが、つながる箇所が女性性器から
男性性器に変わったという事か…。
何気、関根啓子巡査ののナニを想像してみたら、内臓が剥きでている様で、嫌だな、
と思えた。という事は第三の説かも知れない。
いやー、それがペニス羨望の理由とは思えないなぁ)
「そういうのは、あきな恋さんが詳しいよ」とアリスが言った。
「誰?」
「あきなさん。私の先輩」
「へー、自分の客に他のニューハーフを紹介するのかい」
「そうじゃないけれども、あの人は色々教えてくれたから」
「ところで、“ところてん”って、何よ」
「直腸から入れると前立腺の上に精嚢っていう精液の溜まっているところがあるから、
そこをつくと、たらたら垂れてくるんだよ」
「それもあきな嬢なら出来るの?」
「超上手いよ」
「ふーん」
光男は立ち上がるとクローゼットを開けた。
ジャケットのポケットからスマホを出すと、
例のガイシャの写真を表示する。
アリスに見せた。
「この人知っている?」
「えー、何でそんな事聞くの?」
「俺の友達なんだよ。
こいつが、この店にいいニューハーフが居るって言うんだけれども、
誰だか教えてくれないんだよ」
「ふーん。見た事あるなぁ。あきなさんが店外デートしていたのかな。
うーん。もしかしたらそうだよ。多分」
#1151/1158 ●連載 *** コメント #1150 ***
★タイトル (sab ) 22/10/07 12:37 ( 52)
ニューハーフ殺人事件15 朝霧三郎
★内容
副題:何故アナルをせめられた後は殉死したくなるのか。
N-BOXに戻った頃には、すっかり賢者タイムになっていた。
(何時もこうなると、殉死したくなる。
啓子巡査を守って殉死したい。
何か見るものはないか)
水戸光男は、とりあえず、エンジンをかけてスマホをUSBをつなぐと、
アマゾンプライムで「ロッキー」を再生した。
14ラウンドが終了して青コーナーにロッキーが戻ってきたところからの再生だった。
ここまで打たれに打たれて瞼が腫れあがっている。
「目が見えない、切ってくれ」とロッキー。
「バカ言うんじゃない」と老トレーナー。
「いいやらやってくれ」
「よし、やれ」
瞼を切開すると鮮血がほとばしる。ぷしゅー。
15ラウンドのゴングが鳴らされる。
「止めたら殺すぞ」と言ってロッキーはリングに出て行く。
まずは、アポロのアッパーがヒット。
思わずロープまでのけぞるロッキー。
しかし体勢をたてなおすと、右脇腹をかばっているアポロに、にじり寄っていく。
ロッキーのボディーが効いているに違いない。
ロッキーの左右のフックが炸裂。
身もだえるアポロ。
更にロッキーのボディー。
アポロはジャブを返してくるだけ。
ロッキーは激しい連打。
ロッキー左右に激しく連打。
チャンピオン、ロープによりかかって、ダウン寸前。
まさか奇跡の逆転か。
まさか最後の最後でロッキーが勝つのかー。
しかし、ここでゴング。
「リターンマッチはやらないぞ」とアポロ。
「俺も断る」とロッキー。
「15ラウンドを戦ってどんな気持ちですか?」インタビュワーが迫ってくる。
そんなのは無視してエイドリアンを探すロッキー。
「エイドリアーン」
「リターンマッチは」
「そんなの知るか…エイドリアーン」
「ロッキー、ロッキー」とリングに入ってくるエイドリアン。
「エイドリアーン」
二人は抱き着くと、強く抱擁する。
「ロッキー、アイラブユー」
「俺もだ、アイラブユー」
ここで突然映画は終わる。
(俺も殴られたい)と光男は思った。
(啓子巡査の愛を得る為に瞼をはらして、切開して鮮血を噴出して、
更に殴り合って、そして、啓子巡査の愛を得たい。
なんなら、ここで死んでもいい。
…それにしても、何で肛門性愛の後には殉死がくるんだろう。
どういう回路でつながっているのだろう)
#1152/1158 ●連載 *** コメント #1151 ***
★タイトル (sab ) 22/10/07 12:43 ( 72)
ニューハーフ殺人事件16 朝霧三郎
★内容
副題:シーメール風俗を極めるとイケメンコンプレックスが解消されるのか
翌朝、刑事課に行くと、
デカ長の石浜勇之介が、デスクに腰掛けて新聞を読んでいた。
身長182センチ股下90センチの長身。
真っ黒に日焼けしていて、肝臓でも悪いんじゃないかと思えるぐらいだ。
髪の毛がイノシシ並にびっしり生えていて、
それを自分でカットするというから、毛足が豚毛歯ブラシみたいになっている。
長めの襟にネクタイだけぶらさげて、3ピースのチョッキだけ着ている。
裏地は赤い刺繍の柄物だった。
マグカップのコーヒーをすすってから、デスクにドンと置く。
腕時計を見ると、ネクタイを締め出す。
こういう男が、男らしい男なのではないか。
どちらかというと、スティーブ・マックイーンの様な動物臭さがある男。
「愛と誠」に中の悪徳政治家の様な濃さ。
こういう男なら、伊勢丹メンズ館でオーダーメイドのワイシャツを作ったり、
帝国ホテルのゴールデンライオンでカクテルを飲んでも似合うのかも知れない。
(そんなところは麻生太郎みたいな上級国民の行くところで、
一般大衆が行ったら断られる)と光男は思った。
次の瞬間、ビッグイッシューを配っているスニーカーをすり減らしたホームレスや
ダイヤゲート池袋最上階の西武堤一族などが連鎖して、
カーっとしてくる、のが何時もの事だった。
ところが、今朝は違った。
夕べのアリスの一件があってから、ちょっと違う。
デカ長が単なる加齢臭のあるおっさんに見えてきたのだ。
例えば、夕べの一件がある前は、俳優の阿部寛とかTOKIOの長瀬の様な男が
イケている男だ、と思えていた。
しかし、今は、濃い顔の男は、アナルがくさそう、と思えるのだ。
むしろ、BTSの様な醤油顔ののっぺりした男の方がいい。
(もしかして、シーメール風俗を極めれば、イケている男へのコンプレックス、
西武的なものへのコンプレックスが無くなるのか)と光男は思った。
「さあ、打ち合わせやっちゃうか」とデカ長が新聞を畳んだ。
コバ、カトー、明子巡査、関根啓子、そして光男がデカ長の机の周りに集まる。
ホワイトボードには捜査に関係した資料が張り付けられていた。
ガイシャの写真、殺害現場の写真、
ガイシャの免許証、クレカ、「愛と誠」の最終巻、
大宮ハリウッド座の割引券の写真、
容疑者のホームレスの写真。
「一昨日のガイシャがサンシャインシティアルパで白昼堂々刺された件だが
このホームレスが犯行を自供した」とデカ長は容疑者の写真を指差した。
「じゃあ、事件は一件落着ですか」とミツさん。
「それがそうは行かないんだ。裏がありそうで」
「裏? 誰かが裏で何かしていたっていうんですか?」
「そう言っている人がいるんだよ」
「誰が」
「管理官だよ」
あと数日で、警視庁捜査一課から、警視が管理官として赴任することになっていた。
「それで事情を聞きたいというので、わるいが、ミツさんと、明子巡査、
二人で、管理官のところに行ってくれないか」
「分かりました」と明子巡査。
「ミツさんが休んでいる間に、
コバとカトーちゃんでガイシャの部屋をガサ入れしたよ」とデカ長。
「何か出てきた?」ミツさんはコバの方を見た。
「「愛と誠」全集。アネロス他アナルグッズ多数。
あと、自分が磔になった写真多数」とコバ。
「自分が磔になった写真?」
「あれは露出狂かなあ」とカトーちゃん。
「今日だが、コバ、カトーちゃんは、ストリップ劇場への聞き込みを頼む」
「了解」
「ミツさんと明子は管理官の方を頼む」
「了解」
「啓子巡査は、証拠品あさりに付き合ってくれ」
「まだ何かあるんですか」と光男が聞いた。
「裸の磔の写真が大量にあって、ちゃんと見れていないから、
ちゃんと見ておきたいんだよ」
(そんな事に俺の啓子巡査を使うのか)と光男は思ったが、
定年間際の窓際警部補には何もいうことはできない。
#1153/1158 ●連載 *** コメント #1152 ***
★タイトル (sab ) 22/10/10 11:41 ( 59)
ニューハーフ殺人事件17 朝霧三郎
★内容
副題:ドン・キホーテが自由な理由
署を出て、大嫌いなダイヤゲート池袋のアンダーパスをくぐって、
一昨日事件のあったサンシャインシティを通り抜けると、すぐに池袋線の下に入った。
音羽、江戸川橋、飯田橋、竹橋、と走って内堀通りに入る。
さっき通った音羽の手前が早稲田なので、光男は昨日の事を思い出していた。
「早稲田とかさあ、ごちゃごちゃした街だと俺のN-BOXでもいいけれども、
内堀通りじゃあ、こういうクラウンじゃないとダメだよな。何でだろう」
「それはですねえ、「神の死」がないからですよ」と明子巡査。
「えええ、なにー、「神の死」って。又心理学的な話?」
明子巡査は何かと言うと心理学的な分析をするのだった。
「まぁ、心理学というよりは消費論ですけれどもね。ボードリヤールとか」
「…」
「例えば私は表参道のブランドショップが苦手で全然ダメなタイプなんです。
手の脂がブランド品についてしまう様な気がして。
でも、同じ商品でも、ドン・キホーテなら気楽に触れるんですね。
同じ様に、世田谷通りの外車のディーラーは苦手でも、
オートバックスなら安心していられるんですね。
それは「神の死」があるからなんです」
「うーん。ポリポリ」と光男は運転しながら頭をかいた。
「表参道のブランドショップは神につながっているから近寄りがたいんですよ。
表参道っていったら神社につながっているでしょう?
でも、ドン・キホーテに持ってきて、神と引き離してしまえば、
それは、「神の死」の状態なんですよ。
それはちょうど欅坂46のナチスファッションと同じで、
ああいうものは、旧日本陸軍の軍服と同じで、
旧日本陸軍が着ていれば神々しい感じですけれども、
敗戦で「神の死」を迎えれば、ただのコスプレになっちゃうんですよ。
専門用語でシミュラークルと言いますけど。
そういう感じで、高田馬場なんて、「神の死」んだ街だから、気楽だから、
N-BOXでも大丈夫なんですよ。
でも内堀通りは「神の死」がないから、つまり神が生きているから、
だから、クラウンじゃないとダメなんですね」
「じゃあ、池袋は? 「神の死」はあるのか?
あそこも、サンシャインシティの方だとN-BOXだと舐められる感じがするぞ」
「それは西武が、なんちゃって神だからですよ」
「なんちゃって神?」
「神でもないのに、神の様な尊大な態度をとっている感じ」
「西武って、国土計画とかプリンスホテルとか名前からして不敬罪っぽいものなあ」
「そうですねえ」
などと話しながら内堀通りを走っていた。
「昼飯、どうする?」と光男が言った。
「又、本部庁舎のレストランですか?」と明子巡査。
「どっか、ここらへんでもいいよ」
車はまだ皇居外苑を走っていた。
「ぐるなびかなんかでどっか探して」
明子巡査はスマホを出すと、検索した。
「うーん、このあたりだと、東京會舘に「ル ブール ノワゼット」
というレストランがあって、ランチは2750〜です」
「高い」
「うーん」
明子巡査がぐずぐずしている内に車は右折して晴海通りに入る。
「日比谷公園に日比谷パレスというのがあってランチは3630〜」
「高すぎだよ」
「ここらへんで安いのは、法曹会館のレストラン マロニエですね。
日替わりランチ、ロールキャベツ900円。
谷崎潤一郎の「細雪」にも出てきたと書いてあります」
「そこでいいよ」
#1154/1158 ●連載 *** コメント #1153 ***
★タイトル (sab ) 22/10/10 11:45 (142)
ニューハーフ殺人事件18 朝霧三郎
★内容 22/10/12 08:07 修正 第6版
副題:ガイシャが薄い理由とペニス羨望の理由
レストラン マロニエの前には、ランチの見本が並べてあった。
ラーメン800円。
チャーハン700円。
ランチメニュー(日替)ロールキャベツ、サラダ、スープ付き900円。
「これでいいや」と光男はランチメニューの食券を買った
店内に入ると会議室にある様な椅子を引いて腰掛けた。
「なんだよ、社食みたいな店だな」と光男。
「村上春樹みたいですね」と明子巡査。
「え、なんで?」
「皇居の周りをうろうろしていると、村上春樹みたいにおのぼりさんに
なった気分になるんですよ」
「おいおい、俺らだって警視庁の警察官なんだからおのぼりさんってことは
ないだろう」
「村上春樹の小説って、
はとバスみたいに都内の名所をぐるぐる回るんですけれども、
西武系とか出てこないんですよね」
「へー」
「和敬塾とか、イグナチオの土手とか、伊勢丹の裏の深夜映画館とか、
アルプスの広場とか、
はとバスみたいに東京の名所が出てくるのですが、渋谷とか出てこない。
「ノルウェイの森」に限ってですが。
あれはミツさんみたいに、コンプレックスがあるんですかね。
西武とか金持ちに。
金持ちなんて糞くらえ、と書いていますが」
「村上龍の小説には出てきそうだな。プリンスホテルとか。
村上龍の方が濃いんじゃないの? 村上春樹に比べて」
すぐにロールキャベツが運ばれてきた。
「それにしても、あのガイシャは薄かったな」
「あのガイシャが薄かったのは…」
ロールキャベツを口に運びながら明子巡査が言う。
「やはり「神の死」が関係しているんですが」
「おい、又精神分析かよ」
「ブランド品に限らず、男女関係でも、
「神の死」がないと付き合えない人がいるんですよ。
ちゃんとした素人の女性で、成人式に振袖を着て行く様な女性とかには
近寄れない。
そういう人がどこに行くかというと、風俗店です。
何故なら、風俗店には「神の死」があるから。
成人式で振袖を着ている女子には神がついているから触れられない。
だから、とりあえず、風俗店に行く。
それも、しかし、長続きしない」
「何で?」
「生活安全課が手入れをして、風俗店は潰れるから。
そうすると、肛門性愛に走るんです」
「え、何で?」
「もともと、振袖の女性に触れられないのも、
ブランド品に触れられないのと同じで、
相手に手脂がついてしまう、
醜い自分の身体の脂がついてしまうという不安からでしたが、
この段階で、
自分の身体を嫌っているんですね。
だって身体からは手脂が滲み出てきますからね。
だから、拒食症患者が皮下脂肪を嫌うみたいに、
どんどん身体を殺していくんです。
滅私です。
これは、フロイト博士流に言うと、死に向かっている感じですね」
「死に向かう?」
「ええ。普通は胎内から母子関係、そして世界と進んでいきますが、
ガイシャの場合は逆で、
世界、母子関係、胎内、そして受精する前の死と逆方向に進んで行くんです。
「死への欲動」です。
生に向かっている時にはエロス、ペニスの愛ですが、
死へ向かっている時はタナトス、肛門性愛なんです。
性の退行というやつですね」
「性の退行…」
「つーか、手脂がつくから素人の女には触れられないのだから、
ペニスを向ける相手はいない訳ですから、肛門性愛に走るしかないんですが」
「増えているのか、肛門性愛というのは」
「統計資料がある訳じゃないですが、生活安全課の人に言わせると
増えているって事ですね。
まず、あのガイシャが使っていたみたいなアナルグッズがやたらと売れていると。
でも、それじゃあおさまらないで、次には、ニューハーフ風俗に走るんです」
「何でゲイじゃないんだ?」
「そもそも同性愛者じゃないですから。
それにゲイだと「薔薇族」みたいに濃い感じですしね。
もっと薄い、BLみたいな感じです。
というか、そもそもは、手脂を嫌っているから、薄くなるんですが、
「はいからさんが通る」の阿部寛の旧日本陸軍の軍服は濃いけれども、
敗戦という「神の死」があって、
欅坂46のナチスのコスプレになると薄くなる、というのに似ていますね。
だから、あのガイシャは薄いし、
多分、ニューハーフを追いかけているんじゃないかと推察しますね」
「うーむ」
「でも、いい事もあるんですよ」
「なに?」
「そもそも、ミツさんが苦手と言っている伊勢丹メンズ館でも、
阿部寛の旧日本陸軍の軍服でも、
神があるから苦手だったんですよね。手脂があるから。
でも、自分も薄くなって、相手もニューハーフとなると、
もう、伊勢丹メンズ館でも、イケメンでも、コンプレックスがなくなるんです」
「何で?」
「そもそも、男性って最初は母親を愛していますよね。乳児の頃は。
だって、母親に捨てられたら餓死だから。
だから、母親を愛するんですが。でも父親にダメって言われて、
外に出て行って別の女を探す。
この様に、胎内から母子関係、世界と出て行くんですが、さっき言ったみたいに。
この世界で探しているのが、振袖を着た素人の女です。母親の代替品として。
でも、その女にもダメだ、手脂がつくから、となって、
ニューハーフに走るというのは、
タナトス、「死への欲動」ですから、
これは、又母親のところに戻ってきている感じです。
母子関係のとこまで戻った時に何を求めるのかというと、
自分の求めるものではなくて母親の求めるものを求めるんです。
みんながヴィトンを求めるから自分もヴィトンを求めるみたいに、
母親が求めるものを自分も求めるんです。
この時母親が求めているものは何かというと、
父親のペニスを求めていますから、
自分もペニスを求めているんですね。
つまり、ニューハーフのペニスを求めているんです。
という訳で、もうこの段階では、母子の外の世界の、
振袖の女とか、表参道のブランドショップとか、阿部寛みたいなイケメンは
関係なくなっちゃっているんです」
(本当かも知れないとも思う)光男はロールキャベツのスープを最後まで
スプーンですくいながら飲むと思った。
(もしニューハーフを相手にしていたら、
西武へのコンプレックスも、
阿部寛みたいな濃いイケメンへのコンプレックスも
解消されるというのなら、夢の様な話だな。
本当だろうか…。
滝川クリステルがムカついていたが、
それは、昔、30代の頃、大宮ハリウッド座で遊んで帰ってくる時に、
金曜、土曜、日曜と遊んで、
日曜の夕方にJ−WAVEの「サウジサウダージ」を聞きながら
帰ってきていたのだが、
今、「サウジサウダージ」のナビゲーターは滝川クリステルで、
俺の失われた時の位置に座っているという感じがするからだ。
それでも、滝川クリステルが結婚もしないで動物愛護運動なんてしている時には
よかったが、進次郎と結婚妊娠となると、ムカーっとして、
それは、伊勢丹メンズ館や西武にムカつくというのと似ているのだが。
しかし、「サウジサウダージ」を思い出してムカついているところに
アリスがいるとすると、なんとなく、J−WAVEも「サウジサウダージ」も
関係ないじゃんと思えてくる。
そもそも、あんなにまったりしたボサノバじゃなくて、
ハウスとかトランスって感じがするし。
だから、シーメールとやっていれば、滝クリ的なものへの憎しみからは
逃れられるのかも知れないな。
それに、俺のペニス羨望の理由も分かった気がするし。
しかし、そこまで推理しているとは、
明子巡査というのは見かけによらず鋭い女だな)
#1155/1158 ●連載 *** コメント #1154 ***
★タイトル (sab ) 22/10/13 15:04 (131)
ニューハーフ殺人事件19 朝霧三郎
★内容 22/10/23 10:36 修正 第3版
副題:もともとタナトス的な人が肛門性愛に走る。
水戸光男と明子巡査は桜田門の警視庁の内部に入った。
V字型の桜田通り側の6階に捜査一課はあった。
パーティションで区切られた接客室で待っていると、すぐに斎藤警視が現れた。
背が高くて色が白くて、如何にも頭が切れそう。
「どうぞ」と席をすすめられて、会議室用の固い椅子に座った。
斎藤警視も着席すると「さっそくだが」とすぐに話を進めた。
「だいぶ捜査も進んで、容疑者のホームレスも自白をしているから、
ここらで終了という感じなんだろうが、そうも行かない理由があるんだ。
実は、1年ぐらい前に、京都の方で類似の事件が起こっている。
被害者は警察マニアの30代の男だが、
京都の建築現場で、立ち小便をしているところホームレスに刺される、
という殺られ方だった。
これが、ガイシャの写真だ」
水戸光男と明子巡査は斎藤警視が机の上に出した写真を見た。
ガイシャは長髪で、胸元をあけた長い襟のワイシャツに3ピース。
腹の左側、肝臓のあたりから出血している。
「この服装が問題なんだよ。
今時、メンズビギのスーツにワイシャツ、それに長髪だ。
ガイシャのヤサを家宅捜索したところ、
「太陽にほえろ! マカロニ刑事編」のDVD-BOXが発見されたのだが、
それには、「13の金曜日マカロニ死す」が収録されている。
そのドラマのショーケンのファッションとガイシャのファッションが似ているんだ。
場所も、ドラマの方は新宿の工事現場だが、
実際の事件でも京都の工事現場で類似している。
それと、池袋の事件との類似点だが、京都のガイシャは、解剖の結果、
肛門が脱肛、つまりアナルローズ状態なんだ。
これは、過度の肛門性交によりそうなるそうだが。
さらに捜査を進めて行くうちに、
ハッピーメールでこのガイシャとやりとりしていた看護師Xという存在が浮上した。
このXは肛門性愛の調教師で、しかもニューハーフだった。
ネット上ではやりとり出来たのだが、リアルでは任意聴取もできなかったのだが。
「太陽にほえろ!」のDVDもこの看護師がプレゼントしたという事だ。
そして、アナル調教も繰り返していたそうだ。
しかし、このXとは会えずじまい。
容疑者のホームレスは、ガイシャに頼まれて刺したと言い張っている。
もしかしたら、看護師Xが、アナル調教を繰り返し行って、
それから、「13の金曜日マカロニ死す」の死に方で死ねと洗脳して、
それでガイシャがホームレスを雇って自分で死んだんじゃないか、
という仮説が出ていた。
それでも、ホームレスが犯人という事で立件されたのだが。
そんな事件があった後に、今回の池袋の事件だ。
もし京都の事件が、看護師Xのアナル調教による
「13の金曜日マカロニ死す」の死に方で死ね
という洗脳によるものだとしたら、
池袋の事件も、誰かによるアナル調教と、
「愛と誠」の様に死ねという洗脳によって死んだんじゃないか、
という想像が出来る」
ここまで語ると、斎藤警視は水戸光男と明子巡査の顔色でも観察する様に注視した。
「まあ、あなた達には変な話に聞こえるかも知れないが、
こういう、肛門性愛とか、死への欲動とも思える死に方とか、
そういう事に関しては、池袋署の方では何か考えているの?」
斎藤警視の問いかけに、水戸光男と明子巡査は押し黙っていた。
「そういう難しい事はちょっと」もじもじしながら水戸光男は言った。
「個人的な意見でいいなら、ない事はありません」明子巡査が言った。
「ほー、なんだね。聞いてみたいね」
「池袋のガイシャですが、あれは「母へのおねだり」的欲望を持ったまま
大人の世界に入って失敗したんじゃないかと思うんですが」
「「母へのおねだり」?」
「「母へのおねだり」というのは、
幼児は言葉を持っていませんから、
母親に「おっぱいが欲しいのかな、オムツが濡れているのかな、
それとも何かな」と、あれでもない、これでもない、と、
想像してもらいたいんですね。
あれも、これも、全ての愛を欲しがる、みたいな感じですが。
何を与えられても、泣き続ける赤ん坊の様な感じですが。
だって、何が欲しい訳ではなく、母親の無限の愛がほしい訳で、
それが万能感なのですから。
それは、エロスというよりかはタナトス的な愛です」
「なんだね。フロイトかね」
「そうです」
「フロイトが池袋の事件と関係があるのかね」
「だって、アネロスを持っていたのですから。肛門性愛ですから」
「そうか。まあ、続けて」
「エロスというのは、おっぱいとかうんちとか、母の脂肪とか、
ぽちゃぽちゃしたもので、適当でいい加減で人間的なものなんですね。
一方タナトスというのは、もっとカクカクした完璧なもの、
まだへその緒がつながっていて、永久に栄養が流れてくる様なもの、
人間も微細なレベルでは原子ですから、
原子だったら、元素の周りを電子が規則正しく回っているから、
そういう規則正しさを求める、みたいな欲望がタナトスです。
そういうタナトス的なものを、エロス的なぽちゃぽちゃした母親に求める、
タナトス的な乳児だった」
「池袋のガイシャが?」
「ええ」
「そういう乳児だったと」
「ええ」
「それで」
「だから、当然エロス的母親は人間ですから完璧なものは与えられない。
そこで、このタナトス的な子供は愛されなかったと思う。
愛を得ないまま大人になった。
そして大人の世界に参入する。
大人の世界とは、例えば、伊勢丹メンズ館でスーツを作って、
どこかこ洒落たレストランでランチをする、みたいな世界ですが。
ところがこのガイシャの免許証の写真を見ると、顔が歪んでいるんですね。
シンメトリーじゃない。イケメンじゃない。
となると、伊勢丹メンズ館でもこ洒落たレストランでも笑われる訳ですよ。
ドレスコードに引っかかって入れてもらえないみたいな感じですかね。
ここで、乳児の頃、母親とエロスのやりとりがあれば、
エロス的に、あの店員変な奴だな、ぐらいで済むのですが。
たまには自分の歪んだ顔をバカにする人間もいるだろうが、愛してくれる人もいる、
とエロス的に考える。
でも、エロスを拒否したタナトス的な乳児ですから、
タナトス的に拒否されたと感じて、万人に笑われていると思う。
自分が醜いから愛されないのだ、と。
シンメトリーじゃないから受け入れられないのだと。
そして完璧なものを求める訳です。女なら、すっぴんを捨てて何回も整形を繰り返す。
男だったらボディービルをやって鍛えるような。
ここで、愛がエロスからタナトスに変わるんです。
ぽちゃぽちゃした女性のおっぱいや性器を求めているのではなく、
そんなのは否定して、
つまり女性的なものへの勃起、射精というものではなくなり、
肛門性愛の様な反復的なものになるんです。
何故肛門性愛かというと、女性性器じゃないからですが」
「ふーん。じゃあ、そこで肛門性愛に走ったとして、
何で死なないとならないのかね」
「肛門性愛に走るのは、伊勢丹メンズ館の様な“世界”から母子関係に戻ってきて、
そこで、肛門をいじられるみたいな感じですから、
その先には、へその緒が直結している胎内に戻りたいという欲望があり、
更には受精前の死の状態に戻りたいという「死への欲動」があると思われます。
その「死への欲動」を体現したい訳ですから、
肛門で悶える感じです。
丸で拷問でも受けているみたいに」
「君はそんな事をどこで学んだんだね」
「大学時代、心理学科で」
「どこの大学で」
「中央大学です」
「あの田舎の私立大学かい」と斎藤警視は言った。
#1156/1158 ●連載 *** コメント #1155 ***
★タイトル (sab ) 22/10/14 16:53 ( 70)
ニューハーフ殺人事件20 朝霧三郎
★内容 22/10/20 11:48 修正 第2版
副題:脳科学的に肛門性愛と「死への欲動」を考える
「私は東大で認知心理学を学んだが、別の解釈が出来る。
それは脳科学的な解釈だが」
「はぁ」
「聞きたい?」と如何にも言いたそうに聞いてきた。
「はぁ」
「ちょっと最初はとっつきにくいが。
脳には、というか、大脳辺縁系と大脳基底核には海馬と尾状核というところが
あるんだが。
海馬は空間把握をするところで、
尾状核は反復記憶みたいな場所なんだけれども…。
海馬は空間認識だから、海馬がでかいと空間認識に優れるんだ。
だから、ロンドンのタクシードライバーは海馬がでかいんだけれども。
タクシーの運ちゃんに限らず、ネズミでも、
迷路、よくネズミの実験で使う迷路ね、実験心理学とかでも使ったでしょう、
その迷路の真ん中に餌をおいておいてネズミを放すと、
海馬があれば、餌の位置を俯瞰的に一発で当てるんだね。
ところが実験で、ネズミの海馬を損傷させると、尾状核を使う様になる。
そうすると、迷路の角から入っていって、たどり着けないと戻ってきて、
又次の角、というように、トライ&エラーを繰り返す」
「海馬だと俯瞰的に見るけれども尾状核ではトライ&エラーを繰り返す」と明子巡査。
「その通り。
又この実験では、尾状核は反復性障害にも関係あるとされている。
何回も何回もガス栓を確認しないとダメなガス栓恐怖症などだが。
あれは実際には見えていないんじゃなかろうか。
海馬が健全なら一発見て閉まっていると確認できるが、
尾状核だと、迷路の角から餌を見る感じだから、ちらちらしていて
よく見えていないんじゃないのか」
「フロイト博士の反復強迫、嫌な事を反復するというのに似てますね。
拒食症患者がリスカを繰り返すとか」
「フロイトは脳科学の発達していない時代に、
脳科学的な事を言い当てたかも知れないね。
エロスとタナトスは、そのまま海馬的と尾状核的に置き換えられるから。
こういう海馬から尾状核への移行は、ストレスによって
引き起こされると言われているが、
現代の様なストレスの多い社会だと、摂食障害になってリスカを繰り返したり
するのかも知れないね。
昔みたいに、ぽちゃぽちゃした、有機的な世界にいれば、
海馬の世界だから、まったりとしていられたけれども、
現代の様に、カクカクした、幾何学的な、化学系床材で出来たような空間にいたら、
ストレスが溜まって、ヒステリーになるのかも知れないね」
「それは、昔の教室が、だるまストーブに木の床だっのが、
空調がエアコンになって床も化学系床材になったんで、
ストレスがたまる、って感じですか?」
「だるまストーブに木の教室だったら、オナラぐらいしても平気だが、
エアコンに化学系床剤だと、そういうのもNGになるかもね。
身体的にストレスを与えるから、尾状核的になる。
尾状核は1か0かの幾何学的な脳だから、
無機的で秩序を好み、ぽちゃぽちゃした有機なものを、嫌う。
なんつーか、ロハスを嫌う。
有機的なものを嫌う。
フロイト的に言えば、エロスを嫌う。
それとは反対のタナトス的反復を求める。
射精ではなく肛門性愛。
エロスな女を求めている訳じゃないから、
対象は肛門になり、相手の肛門は自分の肛門でもあり。
…なんとなく分かるかね」
「なんとなくは。でも、尾状核だと何で「死への欲動」が発動されるんですか?」
「尾状核は反復性障害に関係するから、フロイトの反復、
つまり死の欲動と…」
「えっ、フロイト博士にかえるんですか」
「さっき話したハッピーメールの看護師Xだが、そいつが、
尾状核の死にたくなる気持ちを誘発させたんじゃないか、
という説も出てきている。
まあ、あの件に関しては、犯人はホームレスで処理されたが、
真犯人は看護師と睨んでいるがね。
池袋の事件も誰か京都の看護師の役どころの人間がいるんじゃないかと
想像している訳だよ」
#1157/1158 ●連載 *** コメント #1156 ***
★タイトル (sab ) 22/10/14 17:00 (109)
ニューハーフ殺人事件21 朝霧三郎
★内容 22/10/24 14:04 修正 第5版
副題:シニフィアンに跳ね飛ばされると最後はアナルに走る。
まず、何故シニフィアンに跳ね飛ばされるのか。
警視に会って緊張したから、どっかこ洒落たカフェでリラックスしていこう
という事になって、
丸の内1stのパーキングエリアに警察車両を駐車すると、
三菱UFJ信託銀行本店の1階にある「DEAN & DELUCA カフェ丸の内」に入った。
天井が高いガラス張りの空間。
入り口のカウンターで、ブレンドコーヒーとパンプキンチョコチップケーキを
トレイに乗せて窓際の席へ。
「すごーい、お洒落」と明子巡査はきょろきょろしていた。
「私は本当にこういう、お洒落な空間が苦手で、
一昨日の現場のタリーズみたいなカフェですら苦手なんですよぉ。
大学も中大で田舎ですから、お洒落な都市空間が苦手で、
就職の時にも品川のオフィス街とか、ミクシィのある渋谷スクランブルとかにも
行ったけれども、
それこそ、だるまストーブと木の床ではない空間だから、
もう、自分の身体、特に胃腸が、そういうお洒落な空間を苦手にしていたんですよ」
店のカウンターの方を見ると、若いOL3人が財布だけもって買い物に来ていた。
カフェラテにクッキーを買うと、テイクアウト。
「三菱UFJ信託本店のOLさんですかね」と明子巡査。
「いやー、3時だから銀行員って事はないんじゃない?
どっか、近所のOLだろう」
タイトなスカートでお尻ぷりぷりで、高いヒールを履いている。
「私、ああいうお姉さんにコンプレックスがあるんですよ」と明子巡査。
「こんな化学系建材の都市空間に居て、
コーヒーとクッキー食べて、うん○もぶりぶり平気でする、という。
自分の身体というエロス的なものと、
化学系建材というタナトス的なものの調和に優れているという感じがして。
だって、すごいと思いません?
大理石みたいな柄の化学系建材に囲まれた空間で、
コーヒーとクッキーを買って、
おちょぼ口から胃腸に流し込んで、
今度はTOTOのウォシュレットのあるトイレに行って肛門から出すというのは」
と繰り返した。
「ああいうOLが、表参道のブランドショップでブランド品を買うんだ、
と思いますね」
「俺も似た様な経験をした事があるよ」と光男は言った。
「俺は埼玉のJ大学というFラン大学にいたんだが、
Schottのムートンジャケットを着ていたんだな。何故か。
Schottならブランド品だと思って。
それを着て、埼玉のJ大学から電車で、伊勢丹メンズ館まで行って、
クロムハーツのショップで、革ジャンを見ていたら、
いち、じゅう、ひゃく、せん、まん、60万円?
店員が出てきて「手が出ないでしょう」と言ってニヤついていやがって。
チャラ男の店員が。
「そのジャケット、豚革?」と俺のジャケットを指さす。
「豚革でしょう」と俺の顔に向かって豚革、豚、豚と連呼する。
俺には豚革が似合いだとでも?
ふざけやがって。ショップの店員の癖に。
あのクロムハーツの革ジャンは松本人志とかが着ているのかなぁ。
それ以来伊勢丹メンズ館的なものが苦手になったよ。
それは、明子君の表参道のブランドショップみたいなもの?」
「そういう伊勢丹メンズ館とか、このディーンアンドデルーカとか、
三菱UFJ信託のオフィスとか、そういう都市空間の事を、
シニフィアンって言うんですよ。専門用語では。
それでその中で消費生活に戯れている限りは安定しているんですね、
精神分析的には。
でも、私はダメでしたね。私は胃腸が信じられない、という感じで。
タナトスな空間で自分のエロスな身体を維持するのに自信がなくて。
おちょぼ口でクッキーを食べてコーヒーを飲んで、
肛門から排泄して綺麗にウォシュレットで洗浄するという。
なんでミツさんはダメだったんですか?」
「俺はニキビだな。あの時、ニキビが出来ていた」
「そういうのも、精神分析的には、「母へのおねだり」なんですよ」
「俺は、母親に何もねだっていないよ」
「「母へのおねだり」というのは、おっぱいが出たり出なかったり、
うん○が出たり出なかったり、ニキビがあったりなかったりで。
つまり、身体とか脂肪とか、ぽちゃぽちゃぽちゃしたもの、エロス的なもの
に関わる事なんです。
都市空間に行くとそういうのが気になっちゃって。
そういうのを無くすために拒食症になる。
脂肪を全て無くせば、あったりなかったり、というのはもう起きないから。
母の愛があったりなかったり、というのはもう無いから。
斎藤警視の言葉で言えば、海馬的ではない、という感じで、尾状核的ですかね」
「ところで、品川のオフィス街とか行ったのに、何で警察官になったの」
「それは、都市空間はタナトス的で、エロスな身体が不安定だったから、
だから、桜田門に就職したという…」
「何で桜田門だと堂々としていられるの?」
「それは例えば
大東亜共栄圏の旧日本陸軍みたいなもので、「神の死」がないというか、
ナチスの親衛隊だったら軍服自体がアイデンティティになるから自信満々ですよね」
「よく分からないが」
ずずずずーっとコーヒーをすする明子巡査。
(30代、大宮ハリウッド座に通っている頃、ホリエモンとか酒鬼薔薇とか、
へー、どこの誰?という感じだった。
その頃、素人もやらせるどうかと思って素人にも手を広げて行って、
5、6人と付き合っていた。
そうしたら、なんとこの俺の誕生日をアンナミラーズで祝ってくれた、女が3人で。
俺一人の為に。
その時、面倒くさいな、大宮ハリウッド座でジャンケンに勝ちさえすれば
すぐにただまんにありつけるのにこんな素人と絡んでいるのは、と思った。
その頃は伊勢丹メンズ館もなんとも思わなくて、ポロショップで、
試着が出来ない筈の被り物のシャツなど、何枚も着散らかしても平気だった。
なんたって、桜田門だからなあ。
桜田門の警察手帳を内ポケットに入れていれば、
ナチスの親衛隊の軍服を着ている様なもので、
伊勢丹メンズ館なんて屁とも思わなくなるのかもな。
しかし、今も桜田門だけれどもそんな元気はない。
加齢によって、シニフィアンとやらに弱くなるのかな。
或いは、金さえあれば、銀座の天ぷら屋や寿司屋に行ったりするのかもな、
小津安二郎の映画に出てくるジジイみたいに)
「つまり」と光男は言った。「シニフィアンというのは都市空間みたいなもので、
それはタナトスな空間だから、エロスに自信の無い人には居心地が悪い。
胃腸に不安があるとか肌が荒れているとか。そういう事か?」
「そんな感じですね。それでシニフィアンに跳ね飛ばされて引きこもる」
明子巡査はずーずずずっとコーヒーをすすった。
#1158/1158 ●連載 *** コメント #1157 ***
★タイトル (sab ) 22/10/25 13:56 (109)
ニューハーフ殺人事件22 朝霧三郎
★内容
副題:シニフィアンに跳ね飛ばされると最後はアナルに走る。
何故シニフィアンに跳ね飛ばされたのにシニフィアンを気にするのか。
「だったら、静かにアパートに引きこもっていたいのに、何で気になるの?」
「何が、ですか?」
「さっき、ミクシィ本社の入っている渋谷スクランブルとか言っただろう」
「はい」
「そう聞いただけで、ミクシィだけじゃなくて、
「渋谷で働くアメーバーブログの社長」とか「はてな」とか、
そういうのが、びびびびびーっと連鎖するのだけれども。
それは、西武が気に入らないとか、野田秀樹が気に入らないとかと
同じ感覚で、何でそんな事が起こるんだろう。
シニフィアンに跳ね飛ばされたのなら、
静かにアパートに引きこもらせてくれればいいのに」
「それはそういうものなんですよ。
私は都市空間がダメで、
就職の時に品川のオフィス街で目が回ったんですけど、
それより4年前、受験の時に、代ゼミに行ったんですけど」
「代々木ゼミナール?」
「ええ。
夏休みに抜け駆けして、友達には黙って、代ゼミに行った事があったんです。
そうしたら、すごいストレスで。
山手線なんて乗車率190%とか。
教室もすし詰め状態で。
それで嘔吐恐怖症になったんですね。
吐くんじゃないかという強迫観念に襲われたんです。
それで、近所の心療内科に行って、
それは1週間ぐらいで落ち着いたんですけれども。
1週間ぶりに駅前に行って、当時はまだ駅前に啓文堂とかあったんですけど、
書棚を見たら、新潮文庫の100冊とかがずらーっと並んでいたんですね。
それを見て、自分は新潮文庫の10冊も書かなければならないと漠然と思ったんです。
それと同時に、マザーテレサとか神谷美恵子とかジョン・レノンみたいに、
世界平和の為に活躍しないといけないと思えてきて」
「おいおい、それが、「渋谷で働くアメーバーブログの社長」となんの関係が
あるんだよ」
「だから、ミツさんだって、伊勢丹メンズ館でバカにされて、
埼玉の田舎に引きこもった時に、
西武が気に入らないとか野田秀樹が気に入らないとか出てきたんでしょ?」
「ああ」
「その時に、何かにハマったものありません。
オタク系のものでも、私の新潮文庫の100冊みたいなものでも」
「そういえば、俺、今でもボクシングジムに通っているだろ」
「はい」
「ボクシングに最初にハマったのは、あの頃だなあ。
ボクシングマガジンの別冊のボクシング年鑑にハマって
ボロボロになるまでページをめくったよ。
特にヘビー級のボクサーが好きで、
フレージャー、フォアマン、スピンクス、ホームズとかね」
「へー。正にそういう感じですよ。
シニフィアンに跳ね飛ばされた時にデータベースにハマるんですよ。
それがお経だとカルトにハマる。
ところが、新潮文庫の100冊にしろ、ボクシング年鑑にしろ、
そういうのは、ラインナップとして用意されたデータベースではなくて、
人間の脳が尾状核的だから、連鎖していってしまうものだと思うんですよ」
「おいおい、尾状核なんて斎藤警視の言っていた事じゃないか」
「でも、ああいうネズミの実験とか、心理学科でも結構有名で、
認知心理学も認知科学も似ているから知っているんですよ」
「へー」
「だから、ミツさんが、ミクシィ、とか、
「渋谷で働くアメーバーブログの社長」とか「はてな」とかが連鎖しちゃうのも、
尾状核的な人間だからですよ」
(俺が尾状核的な人間か。
そうかもな。
何しろ夕べアリスに感じちゃったんだから、
池袋や京都のガイシャに近いのかもな)
「渋谷といえば、渋谷系の音楽ってあるじゃないですか。
「フリッパーズ・ギター」とか「ピチカート・ファイブ」とか。
知ってます?」
「知ってるよ。時代だもの」
「あれって、リミックスサンプリングって言われるじゃないですか。
なんかのデータベースからカットアンドペーストしてきているって。
あれって、90年代になると、色々なストレスが増えたから…、
それこそ、だるまストーブや木の床から、化学系建材の建物になった、とか、
だから、尾状核的になって、それで連鎖しているだけじゃないかと思って」
「そんなに難しい事じゃないよ。
俺は61年生まれで90年代に30代だったが、
その頃給料も増えてきたから車も買って、
カーラジオはFMで、
J−WAVEが流れてきて。
タワーレコードが井之頭通りからファイヤー通りに移ってきた頃だけれども。
あの頃に金、土、日と遊んで
夕方に「サウジサウダージ」を聞きながら帰ってきたんだよ。
あの頃を忘れられる訳がない。
それが今や、J−WAVE、六本木ヒルズ、滝クリ、JAL「サウジサウダージ」が
セットになって、陰のシニフィアンになっているんだからなぁ。
シニフィアンに陽と陰があるなら」
「そりゃあ、一見セットになっている様に感じますが、
実は、ミツさんが尾状核的だから連鎖しているだけなんじゃないんですか?」
「じゃあ聞くが。
90年代、大宮ハリウッド座にハマっていた頃、
ホリエモンとか酒鬼薔薇とか、社会を騒がせている存在が、どこの誰ですか?
って感じだったのは何故?
何で尾状核的に連鎖しなかったの?」
「そりゃあ、そのストリップ劇場で、まったりとしていれば、
海馬のニューロンの受容体にまったりイオンが流れてきて、
受容体をふさいでしまうから、
もう、尾状核的なイオンは流れないんですよ」
「ふーん」
「私、池袋や京都のガイシャも、ミツさんの言う陰なシニフィアンに
尾状核的にびりびりしていた奴じゃないかと思うんですよね」
突然明子巡査は事件の話をしてきた。
「池袋のガイシャはA/X ARMANIで、京都のガイシャはメンズビギ
ですからねえ。そういう感じがしますね」
(池袋のガイシャは大宮ハリウッド座からリブレ高田馬場に行っている。
俺もガイシャも尾状核的な人間なのだろう。
何しろ、昨日アリスに感じちゃったんだから。
というか、どうして尾状核的な人間だとアナルで感じるんだろう)