●短編 #0563の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
「はい、始まりました、クイズ『その英語、どんなカンジ?』。司会のスリーボック ス、スリーラインこと品川品三《しながわぴんぞう》でございます。もうお馴染みとな ったでしょうこの番組。ルールなんかは説明しなくてもお分かりと思います。知らない という向きにも、追々と分かるようになっているのでご心配なく。では前置きはこれく らいで切り上げて、第一問。早押し問題です。タクシーに乗ってきた外国人に、“スタ ックトスリーボックス、アポストロフィエイト”駅に行って欲しいと言われた。さて何 駅?」 ぴぽん。 「川藤《かわふじ》さん、どうぞ」 「目白駅」 「正解! 重ねた三つの箱で“目”、エイトは8でデジタル文字に置き換えると“日 ”。これにアポストロフィを付けると“白”ということで、二つ並べて、目白になりま す。ということで正解は目白駅。川藤さんには三ポイント入ります。 では第二問。早押し問題です。外国人から“クロスブレイクスルーボックス”と“ゼ ット”は対義語ですかと質問された。何のことを言っているのだろうか。……さあ、ど うだ。まだかまだか。制限時間が迫るっ」 ぴぽん。 「おっと、ぎりぎりで来た。田野倉《たのくら》さん、どうぞ」 「甲と乙、じゃありませんか?」 「正解! どうやって正解に辿り着きました?」 「最初の“クロスブレイクスルーボックス”ってのが、いまいち形にならなかったの で、後者の“ゼット”から考えたら、アルファベットのZは“乙”しかないよねと。そ れで乙の対義語っぽい漢字を連想していったら、“甲”かなって。そう思って考える と、十字がボックスを上から下へ突き破ったような形だし」 「お見事。それでは続いて第三問。記述問題です。外国人から、『ワンライン パイ、 スタックトツーボック アンダーライン』の習わしについて尋ねられた。どのような習 わしがあるのか、一つでいいので、教えてください。ただし解答は、質問者の流儀に合 わせたものにしてほしい。制限時間は三分、それではスタート!」 ・ ・ ・ 「――はい、そこまで。ペンを置いて、フリップをお立てください。おや、やはり時間 的に厳しかったか、何も書かれていないか試行錯誤のあとだけの方が結構いますねえ。 それじゃあ、井本《いもと》さんから見ていきましょう。『フラッグインロングヘアウ ィッグ』、これは何ですか」 「えっと、凧、です。空に浮かぶ方の」 「うーん、なるほどなるほど。かぜかんむりをかつらに見立てて、その中にある巾を旗 と言い表したと。それじゃあそもそもの『ワンライン パイ、スタックトツーボックス アンダーライン』をどう解読したのか」 「元旦でしょう。横線一本にπで“元”、二つの箱を重ねた“日”にアンダーラインを 添えると“旦”」 「正解です。あとは凧をどう評価するかに掛かってきます。凧揚げはお正月の風習の一 つで間違いではないが、元旦に限った物ではないですので、その辺りがどう響くか。次 は……竹山《たけやま》さん、行ってみましょう。あなたも“元旦”は分かっていたみ たいだ」 「はい。それで答が『スタックトツーボックス スタックトマウンテン』で“日出”、 つまり日の出。初日の出にしたかったんだけれど、“初”や“の”は難しすぎて」 「ちょっと苦しいかなあ。漢字の“山”の形をマウンテンと認識してくれるかどうか。 横倒しにしたEを重ねたとかの方が、“出”の形状は伝わるような気もしますねえ。“ の”にしても、数字の6を俯せにしたと表現するとか……。でもなるべくシンプルな英 語表現にするのが難題か。何はともあれ、苦心の跡が忍ばれます。 さあ三人目は……木部《きべ》さんと川藤さんは同じですね。『ゲート アップア ローインハット マスタシュ エー』。説明を……木部さんに伺いましょう」 「これはもう、今までこの番組で何度か出て来たのを使おうと思いました。認められて いる訳だから。ゲートはそのまま門。木偏を表すのが帽子を被った上向き矢印、マスタ シュが八の字髭で、その下にアルファベットのAを置くと、松の字に似た形になる。二 文字で門松になります」 「なるほど。川藤さんも当然、同じですね。はい、分かりました。安全パイなのは悪く ないけれども、ここは新たな創造性を見せて欲しかった気がしないでもない」 「だったら時間をもっとくれなきゃ」 「おお、そうでした。えっと、他に解答されている方はと」 「――今回、予選を勝ち抜いてファイナルステージに進まれたのは、田野倉|薫《かお る》さんとなりました。田野倉さんにはこれから最後の問題に挑んでいただき、見事に 正解された場合は豪華賞品を手にする権利が得られます。 当番組をご愛顧なさっている皆様には言うまでもありませんが、ラストの設問と言っ ても、さほど難しくはありません。どうぞ、気を楽にして挑み、勝ち取ってください。 田野倉さん、心の準備はよろしいですか?」 「はい。よろしくお願いします」 「よろしく。では、最後の問題です。ノリとハサミ、そして『コンマプラスボックス 』、これら三つから連想される生物を、英語と漢字でフリップに書いてください。制限 時間は二分、早ければ早いほど賞品の中身が豪華になります。では始めます」 「――はい、できました」 「早い! 早速拝見しましょう、どうぞ出して。……これは……正解! sparro wと雀。ミスはないと確認されました。おめでとうございます、田野倉さん。さすが」 「いえ。問題を読まれているときから考えていたら、閃いただけです。コンマとプラス とボックスを上から下になるよう順番に並べると、舌という字に似た形になる。ノリに ハサミに舌ときたら、日本人なら昔話の『舌切り雀』を連想するのは難しくないです」 「いや、それにしてもお見事でした。所要時間、たったの五秒。これ、記録ですよ。お っと、そろそろおしまいの時間が近づいてきました。尻切れトンボにならないよう、豪 華賞品獲得のチャンス、選択の時間です。今回はラストの問題にちなんだ形で用意しま した。そこからご覧になって、お持ち帰りになる一つをコールしてください!」 品川品三が腕を振った先では、幕がばさりと落とされ、司会者の言葉の通り、三つの 物体が現れた。 手のひらに載る小さな箱と、腰掛けられる程度の中くらいの箱、そして一台の軽トラ ックに匹敵する大きな箱が。 終わり
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