●短編 #0560の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
「色きちがいだが仕方がない、か」 まどろんでいた小島悠子《こじまうゆうこ》が、ふっ、と意識を取り戻すと同時に、 その声が聞こえてきた。 「叔父さん何て?」 座卓に向かっていた叔父の高梨辰彦《たかなしたつひこ》の背に、思わず聞く。 「おっ、起きたか。相手をしてあげる時間が取れるか、怪しくなってきた。時刻はまだ 早いけど、雨が心配だ」 「それより、叔父さん今さっき何て言ってたの?」 「うん? 独り言をたまに口にしたかもしれないが……『色きちがいだが仕方がない』 かな」 「そう、それ。やっぱり聞き違いじゃなかったんだ。小学三年生のテストを採点しなが ら、“色きちがい”ってどういうこと?」 高梨は小学校教師で、三年生を受け持っている。中二の悠子は暇つぶしに高梨の自宅 アパートに寄ったのだが、テストの採点が終わるまで待っているように言われ、ついう とうとしてしまった次第。 「答案にすっごくエロいこと書いてたとか?」 「あのな。仮にそうだとしたら、“仕方がない”なんて思わない。注意して直させる」 「そっか。じゃあ何?」 「推理小説の古典の一つに、有名なフレーズがあるのは知ってるかな? 『きちがいじ ゃが仕方がない』って」 「聞いた覚えはあるけど、意味は知らない。放送禁止用語だから面白がっているのかし ら」 そう答えた悠子に、高梨は簡単に説明をした。 「――で、それを踏まえて呟いただけだから、たいした意味はないんだよ。個人情報な んで見せられないが、国語でその子は九十九点だった。たった一つ、漢字の読みの問題 で『色気』に“いろき”と解答してた。惜しいな、この間違いがなければ百点なのに、 でも仕方がない、と」 「そういう意味だったの。――色で思い出した。誕生日に買ってくれるっていうイヤリ ング、やっぱり青がいいと思い始めてて」 「え? もう注文しちゃったよ。……色違いだが仕方がない、とはならないよね?」 「ううん、大丈夫。届いたあと交換できるはず。余分にかかる送料も払ってね」 「仕方がないな」 おしまい
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