●短編 #0535の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
「さあ、始まりました。『第一回こんな|DM《ダイイングメッセージ》は嫌だ!コン テスト』〜。ぱふぱふ。鳴り物がないから口で言いました。司会の金田一《きんだいち 》です。どうぞよろしく」 「……」 「どうかしましたか。明智《あけち》さん。まずはご挨拶を済ませないと」 「あ、どうも、アシスタントの明智です。本日は最後までお付き合いください」 「で、何か気にしてたみたいですが?」 「最初のルビが非常にアンバランスに見えたので」 「あ? ああ、最初のあれですね。気にすることはないでしょう。読めればいい」 「だから、あのアンバランスさでは読みづらい方も多々いるのではないかと、心配で」 「心配性ですなあ。しょうがない、改めて言い直すとしましょう。さあ、始まりまし た。『第一回こんなダイイングメッセージは嫌だ!コンテスト』〜。司会の金田一《き んだいち》です。皆さん、どうぞよろしく」 「そもそも何で、DMって略したんだろう? ダイレクトメールと間違われかねない」 「だからこそ振り仮名をしたんでしょう、きっと」 「だったら最初から略さずに、ダイイングメッセージと書けばよいものを」 「まあまあ、細かなことを気にしてると、コンテストが始められません。ここは一つ、 大人になって」 「自分は最初から大人だが」 「うん? 最初からってことはないでしょう。最初は子供、いや、赤ん坊だったはずで すよ、いくら明智さんでも」 「……もういいです。早く始めねば」 「ではスタートです、前もってリスナーの皆様から寄せられた作品の中より、選りすぐ りの物をアトランダムにセレクトしました」 「突っ込みたいところだが、どちらが本当なのか分からない。選りすぐりなのか、アト ランダムなのか」 「選りすぐりと言って発表した作品が受けなかったら、我々の鑑識眼が疑われるので、 ここはアトランダムということにしておきましょう」 「何で及び腰なの」 「最初は兵庫県のハムウ女さんから」 「公安の駄洒落の人だ。ハとムで公、ウと女で安」 「毎回指摘しますね」 「この番組を初めて聴く人のためを思ってのこと。さて、作品は?」 「こんなダイイングメッセージは嫌だ! 登場人物一覧にない名前が書いてある」 「……やや受けかな。嫌なことは嫌だが、それはだめダイイングメッセージと言うより も、推理小説としてだめなのでは」 「始まると割と真面目に批評しますね、明智さん」 「遊びは本気でやらねば楽しくないからね」 「では二人目。秋田県の錫亜紀《たもうあき》さんから」 「名前を繰り返し呼ぶと、もう飽きたになるんですよ、この人」 「解説どうも〜。こんなダイイングメッセージは嫌だ! 被害者も後ろから殴られて死 んだから犯人誰か分からないのに勘で書いた」 「長い! でもネタとしては悪くない。昔、某落語家が原案を作ったというミニ推理ド ラマで、被害者が毒殺されるんですが、誰に毒を盛られたか知りようがないのに、ダイ イングメッセージを残すのがありましてね。絶対に裏があると思ったのに、そのまんま メッセージを解読して終わり。ふざけるなと」 「はいストップ。エスカレートすると悪口になりそうなので。次、三人目は長野県の神 尾寛太《かみおかんた》さん」 「この人もラジオネームとのことですが、カミオカンデの洒落なのかなあ。でも長野と 関係ないし」 「気にしない気にしない。えー、こんなダイイングメッセージは嫌だ! 三択クイズに なっている」 「さっきのに続いてこれとは、並びがいいね。今度の被害者は自信がないから、三択に したと」 「ひょっとしたら三人とも外れかも。次、四人目は奈良県の偽《にせ》んとくんさん」 「某せんとくんの偽者ってことです。言うまでもないでしょうが」 「言わなきゃいいのに。作品は……こんなダイイングメッセージは嫌だ! 『分かりま せんでした』と書いてある」 「三段落ちですか。誰に殺されたか分からないときは潔く『分からない』と書きましょ う、と。いいねえ」 「いや、そんな余裕があるのなら書いてないで、救いを求めろよと」 「ダイイングメッセージを扱う作品で、それを言っちゃおいしまいよ、だな」 「ま、そのことに言及しつつおしまいにならない作品もあるみたいですが。さて五人 目。石川県のぼく五右衛門さんから。――石川五右衛門とドラえもんを掛けた駄洒落っ てことは? ああ、言わなくていいですか。作品の方は……こんなダイイングメッセー ジは嫌だ! 『犯人は あなたの後ろ』」 「ぎゃー!って叫ぶところなのかな。いや、被害者死んでないことになるよね」 「ははは。ダイイングですらない。では六人目。長崎県からアイアムちゃんぽんさんか ら」 「チャンピオン麺、食べたいね」 「……えー、こんなダイイングメッセージは嫌だ! 血文字で『遺書』から始まり、自 殺した理由が書いてある」 「普通に遺書を残しなさいっての。同工異曲のネタで、『遺言』もだめだよ」 「あ、このあとにそのネタがあったらどうするんですか」 「そのときはそのときだよ。さあ、続けてくれたまえ」 「じゃあ、七人目。広島県から広島風なんて言うなさん。こんなダイイングメッセージ は嫌だ! 死亡時刻と凶器は書いてあるが犯人だけ書かれていない」 「うん? 犯人が誰だか分からないシリーズに戻りました? これは順番をミスしたの ではないかな」 「そんなことはないですよ、多分。えっと、次で八人目か。青森県のペンパイナッポー ペンさん」 「来た、敢えてのリンゴ外し」 「こんなダイイングメッセージは嫌だ! 『助けて! 殺される〜』って書いてある」 「残念、もう死んでますから」 「さくさく行きましょう。九人目は山形県の怪人20.5面相さん。こんなダイイング メッセージは嫌だ! 『三億円事件の犯人は……』で途切れてる」 「うわあ、これは確かに嫌だな。自分が殺されかけてるのに殺人犯の名ではなく、有名 な未解決事件の犯人について記そうとするとは、執念を感じる」 「いや、そもそも本当に三億円事件の犯人を知っていたのか、疑問に思いますね、僕 は。『三億円事件の犯人は……誰だったのだろう』と悔しがりながらこの世を発ったの かもしれない」 「そんな夢のないことを。ドリームジャンボは三億円というじゃないか」 「訳が分かりません。次、ちょうど十人。愛知県は|天娘。《てんむす》さんからいた だきました。こんなダイイングメッセージは嫌だ! 犯人を示すであろうメッセージの あとに続けて『な〜んちゃって』と書き足してある」 「犯人が偽装工作していったのかな。斬新だ。被害者のメッセージを壊すことなく、そ の内容の信憑性に疑いを抱かせる高度なテクニックです」 「実際に遭遇したら本気で嫌だなあ、これ。案外、実用性のある答かもしれませんよ」 「僕らが犯罪者の味方をするような発言はまずい。ほどほどにして、次に行ってみよ う」 「それでは十一人目。佐賀県はガサ入れさんによる作品。こんなダイイングメッセージ は嫌だ! 犯人の名前が素直に書いてある」 「これは嫌だな。謎にならないから、我々の出番がなくなる訳だ」 「シュールですねえ。伝えたい意味を必死になって読み取ろうとするのがダイイングメ ッセージであり、意味が明らかだと最早それはダイイングメッセージではないことにな ってしまう」 「ま、少なくとも我々の世界ではそうだなあ」 「それでは次が最後になります。十二人目、何と海外からだ。フロムUSA、アメリカ 合衆国のエラリー・ジャックさんから送られて来た作品。こんなダイイングメッセージ は嫌だ! 被害者がエラリー・クイーンだからといって皆難しく考えすぎる」 「お、洒落が効いている。エラリー・クイーン氏はダイイングメッセージ物を得意と し、また発明したとまで評価されているのだから、最後を締め括るのにふさわしい。作 品としてはちょっとばかり弱いがね」 「さすが明智さん、手厳しいです」 「いや、これでも他のことに気を取られていたのだよ」 「え? そうは見えませんでしたが」 「ふっふっふ。広島県の作品が何故あんな配置にされたのか、気になってね。犯人が分 からないシリーズとしてひとまとめにすればいいのに」 「ということは、何か他に理由があると?」 「多分だがね。ここのスタッフの遊び心じゃないか。もしかすると、僕らを試そうとい う魂胆があったのかもしれないよ」 「うーん、分からないですねえ」 「ちなみにだけど、金田一さん。最後の作品紹介で、USAと言ったのは、君の意思か な?」 「いや、違いますね。スタッフに指示されていました……お。ちょっと待ってください よ、明智さん。僕にも見てきましたよ。はぁはぁ、なるほど。順番に意味があったのか あ」 「その通り。今回、このコーナーで紹介したリスナーの住んでいる都道府県を、順に並 べてイニシャルを抜き出してみると、HANNINHAYASUとなる。アメリカ合衆 国はUSAだから、そのままUにした。これをローマ字読みして、『犯人はヤス』とな る。この有名なフレーズを織り込むために、広島県を七番目に持って来ざるを得なかっ た」 「どうなんですか、スタッフ? ――え、違う? 偶然だって?」 「そんな馬鹿な。悪魔の証明かもしれないが、わざとではない証拠は何かないのかい? うん? 何なに。『広島と同じHの兵庫県とを入れ替えれば、犯人が分からないシ リーズがひとまとまりになる。ネタの順番としてもさほどおかしくないでしょ』だっ て? ……うーむ」 「じゃ、じゃあ、何でそうしなかったの? ネタの紹介順として理に適っているし、 『犯人はヤス』を組み込めて、万々歳じゃないか。あ? 気が付かなかった、すみませ んて……」 「うむ。金田一さん、どうやら我々は難しく考えすぎたようだ」 「そのようですね、明智さん。被害者の能力の程度を見極めてから出ないと、ダイイン グメッセージを解き明かすことは困難だと、改めて肝に銘じておくとしますか」 「読者諸氏も、くれぐれも注意召されよ。被害者はあなたほど賢くはないかもしれな い」 ああ。そんなダイイングメッセージは嫌だ。 おしまい
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