●短編 #0327の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
改めて見直すと、大げさなお題……。「創作のコツ」ぐらいにしておけばよ かったかなと、ちょっと後悔。 この手の毛色の変わったお題は、提案者が口火を切らないといけないかなと 思い、書いてみます。とりあえず、悠歩さんが『BookS!』のおまけで用 いておられるスタイルを踏襲しました。会話のみとは言え、久々の小説らしき ものの執筆であるため、リハビリの色合いが濃くなったような(汗)。 * * 風谷美羽:速水先生、今日はよろしくお願いします。はじめまして……じゃな いんですよね。 速水無月:ですね。ああ、先生じゃなく、さん付けでお願いします。 風谷:分かりました、速水さん。 速水:撮影のとき、一度だけお邪魔させてもらいましたね。少ししかお話しで きなかったのが物足りなくて、こうして対談を組んでもらったんです。 風谷:ほんとですか? 速水:半分以上、本当(笑)。ドラマ「魔女と美獣」がおかげさまで高視聴率 を叩き出し、原作者としてわがままを言える身分になった。そこへちょう ど、雑誌の企画で、自作のヒロインと対談なんてどうですかと持ち込まれ たものだから、二つ返事でOKしたのです。 風谷:私はこの企画のお話をいただいたとき、意外に感じたんです。もっと固 い人なんだと、勝手に思い込んでいましたから。速水さんがと言うよりも、 作家さん全般にそんなイメージを持っていました。 速水:少なくとも僕は堅物ではありませんよ。どうしてそう思われるのか、分 からないな。書いている物だって、このドラマの原作であるライトノベル に止まらず、漫画原作にまで手を染めているくらいだ。 風谷:作品の中身とは関係なしに、創作に対する態度というか……。 速水:ちょうどいい。今回の対談のテーマ、「物語のできるまで」にそろそろ 入るとしましょうか。 風谷:テーマについても、私、首を傾げたんですよ。このテーマだと、対談じ ゃなく、私が速水さんに尋ねるばかりになってしまう、って。 速水:でもないでしょう。あなただって、ヒロインを演じることで、物語を作 り上げた。 風谷:かもしれませんが、物語ができるまでの過程を言葉で語れるかとなると、 自信ありません。 速水:じゃあ、風谷さん。今度のドラマ出演を引き受けて、脚本だけでなく、 原作にも目を通してくれたそうですが、その結果、どんな風に演じようと 思いました? 風谷:まず、ドラマの脚本と原作の小説とを読み比べて、ヒロインの描き方に 違いがあればそれを感じ取り、理解しようとしました。そして明らかに違 いがあった。原作の美琴はかなり弾けていて、頭の回転は速いが、身体が 動くのはもっと早い。脚本の方は原作よりも年齢がやや上の設定で、どち らかと言えばお嬢様風。頭はいいんだけど、世間知らずというか流行に疎 い面があるため、少しずれているという感じ。 速水:なるほど。なかなか鋭い分析をする。 風谷:それを踏まえて、時折、“きゃぴきゃぴ”した言動を入れたり、おっと りしているけれども運動はできるんだぞってところを、アピールしたつも りです。それとなくですけどね(笑)。もちろん、俳優は脚本に沿って演 じるのが基本ですが、原作も考慮すべき。だって、ドラマができる前から、 原作にはすでにファンがいますから。それも、速水無月作品ともなると大 勢いますし。 速水:お褒めの言葉をどうも(笑)。それはともかくとして、ほら、あなただ って、物語ができるまでの過程を話せているじゃない。過程どころか、入 口の段階で、たっぷり喋ってる。 風谷:これは……。ほんと、これだけです。入口の地点で方針をある程度決め たら、あとは周りの皆さんの意見を聞き、よくしていくだけ。さあ、今度 は速水さんの番です。 速水:仕方がないな。では、質問をどうぞ。最初に風谷さんが言ったように、 あなたに尋ねてもらって、それに僕が答える形にしてみよう。 風谷:えっと、じゃあ、話を「魔女と美獣」に絞りますね。登場人物を作るとき、 面白いエピソードがあったら、聞かせてもらえますか。 速水:面白いかどうかは保証できないけれども、たとえば、あなた――風谷さ んではなく、美琴というキャラにはモデルがいてね。姉夫婦の長男と、僕 の初恋の人を足して二で割ったんですよ。 風谷:初恋というのは深く聞いてみたい話題ですが、テーマから外れそうなので、 やめます(笑)。 速水:聞いてくれてかまわないのに(笑)。 風谷:えーと。ヒロインは、初恋の人の外見と、お姉さん夫婦のお子さんの内 面を兼ね備えたということで、いい――。 速水:いやいや。姉の子供はかわいい盛りの十歳で、頭の良さどうこうってい う年齢じゃありません。うん、さっきのあなたの言葉じゃないが、これこ そ言い表しにくいな。その人物を見守る気持ち、眼差しを、キャラクター に投影したとでも言えばいいかな。 風谷:何となく分かるような。頭がいいとか運動神経がいいとかは、モデルが なくてもごく当たり前にある設定ですもんね。 速水:そう。言ってみれば、記号だね。僕にとって重要なのは、そのキャラク ターにどれだけ思い入れが持てるか、だと思う。ま、それはヒーロー、ヒ ロインの場合で、悪役ならどれだけ憎めるかってことに。 風谷:キャラクター作りに関しては、この辺りで終えたいのですが、編集部さ んから、これだけは対談中に入れてほしいと指示が出ています……。私も 気にはなるのですが、できれば聞きたくない質問。「私の演じた美琴はど うでしたか」です。 速水:真面目に答えると、イメージ通りとは言わないが、充分に満足できまし た。風谷さん独自の美琴像が、きっちり固まっていたしね。 風谷:はあ、よかった。ほっとしました。 速水:残念なのは、もし風谷さんを起用すると知っていたなら、全く別のキャ ラクターによる全く別の物語を書きたかったな。それだけ、あなたからは インスピレーションを受けた。 風谷:こ、光栄です。……。 速水:口数が減っちゃったな(苦笑)。次の質問、どうぞ。 風谷:はい。では、今度こそキャラクター作りは終わりにして……ミステリ、 推理小説を多く書いておられますが、ストーリーとトリック、どちらを先 に作るんです? 速水:僕の場合、トリックはさあ考えようと思って、ぽんぽん作れるものじゃ ないからねえ。普段、何気なく、ふっと浮かぶとしか言いようがない。そ れを書きとめ、ストックしておく。ストーリーは机に向かって考えていれ ば、徐々に形ができてくるから、そこへトリックを当てはめるんだ。 風谷:トリックに合わせてストーリーを作ることは? 速水:基本的にはない。それをやると、僕の場合、紋切り型のストーリーにな りがちなんだよ。けれど、締め切りの迫った短編なんかだと、つい、その やり方で書いてしまうこともたまにある。 風谷:トリックはふっと浮かぶんですよね。ストーリーはふっと浮かぶのでは なく、形ができてくると仰いましたが、この二つに具体的な違いはある? 速水:ストーリーは、そうねえ、小さなことでいいから、何らかのきっかけが あれば、それをスタートに織り上げていくんだ。即興でやるのはさすがに 厳しいかもしれないが……風谷さん、彼氏から初めてのプレゼントは何だ った? 風谷:え? ク、クッキーになるのかな。 速水:それ、逆じゃない? ほう、クッキーとはユニークな彼氏だ。 風谷:ちゃんとした記念日の贈り物も、花やぬいぐるみをもらいましたよっ。 速水:ユニークな事柄の方が、発想を膨らませ易くていい。こんなのはどうだ ろう――三人の男女がいる。年齢は、中学生か高校生くらい。男が一人に 女二人。女Aは男をものにしようと狙っている。ある日、Aは移動する車 中から偶然、男が女Bからプレゼントを受け取る場面を目撃する。ファン シーな包みからして、その意図は明らか。AはBに嫌がらせをするように なるが、大きな勘違いをしていた。プレゼントは男からBに贈ったものだ った――細部を詰めなきゃいけないが、学園を舞台にしたミステリの発端 になりそうでしょう。なると思ってください(苦笑)。 風谷:はい(笑)。 速水:それで、膨らませ方は一つに限らないんだ。やってみせよう――不審死 を遂げた息子の日記を読むと、恋人から手焼きのクッキーをもらったとの 記述があった。この恋人が息子の死に関連しているようなのだが、名前な ど一切書かれていない。関係のありそうな女性を片っ端から当たるが、ど れも該当しない。実は、息子の恋人とは男性だった――という具合に。 風谷:話の膨らませ方はよく分かりました。どちらの筋書きも、私の思い出を 汚されたみたいで、ちょっと複雑な気持ちですが(苦笑)。 速水:謝ります(笑)。お詫びに、あなたと彼氏をモデルにしたキャラクターを、 作品に登場させてもいいですよ。 風谷:あ、それで思い出しましたが、もう一つ、編集部の人から頼まれていた ことがあったんです。推理小説に使えるような謎めいた状況を考えてきて くれ、と。速水さんが興味を持つようであれば、作品に使ってもらえるか もねとけしかけられました(笑)。 速水:なかなか魅力的なお話です。伺いましょう。 風谷:笑われるかもしれませんが、『舞台で一人芝居を演じていた女優が、早 着替えの最中に行方不明になり、五分後、切断遺体になって見付かる。何 故か鎧を身に着けて……』というものです。 速水:……難問だなぁ。 風谷:すみません。 速水:いえ、魅力的な謎だと思います。確約はできないが、うまい解決策を思 い付いたら、作品に取り入れさせてもらいましょう。多少、設定をいじる かもしれない。 風谷:私からすれば、検討してもらえるだけで、嬉しい。 速水:専門家じゃない方が、恐い物知らずな分、思い切ったことができるとい うのは往々にしてあると言うけれど、そんな感じですよ。 風谷:それでも、小説を書く、あるいは考える上で、こうすべきこととか、逆 に絶対にやってはいけないということはあると思いますが。 速水:あんまりないんじゃないかなあ? 僕が個人的に課している事柄なら、 なくはないけど。 風谷:よろしければ、聞かせてください。 速水:根掘り葉掘りだなあ。もしかして、風谷さん、作家デビューを目論んで いる? ライバルになるかもしれない人に、これ以上の秘訣を教えるのは 嫌だなあ(笑)。 風谷:まさか。ただ、知り合いに書く人がいるので、速水さんの秘訣を教えて あげたい気持ちは、なきにしもあらずかな(笑)。 速水:それじゃあ同じだ(笑)。でもまあ、サービスして一つだけ。ごく当た り前のことなんだけれどね。自分が楽しむ以上に読者を楽しませるよう、 心掛けるようにしている。 風谷:書いた本人が楽しめないようじゃ駄目だけど、自己満足に陥ってもいけ ない……ですね? 速水:何だ、言わなくても分かってるじゃないの(苦笑)。 風谷:いえ、私の本業にも当てはまるなあ、って。始めた頃は、つらい部分が 多かったのが、しばらくして仕事を楽しめるようになって。最近は、私を 見てくれる人達を、ほとんど意識してなかったくらい。今の速水さんの言 葉、自分を顧みるよいきっかけになりそう。 速水:僕の言葉で、風谷さんの仕事っぷりがますますよくなるのでしたら、サ ービスした甲斐があったというものだ(笑)。次にまた一緒に仕事をする ときには、グレードアップした姿を見せてください。あなた向きの最高傑 作を書き上げておきますから。 風谷:がんばります。速水さんの作品、これからも楽しみにしています。 * * 悠歩さんの『BookS!』のおまけを踏襲したと前置きしましたが、少し ぐらい違いを出そうと、メタ的な形式を避けてみました(ここでいうメタ的な 形式とは、登場人物が、自分達が登場人物であることや、読者の存在を自覚し た形式)。 代わりに、『そばいる』本編のワンシーンとしても不自然でないように書い たのですが、これだと弾けた展開が取りづらく、今回のお題には不向きだった 気がします。せめて、端から小説の先生と生徒のようなキャラクターを配置し、 会話をさせれば、まだスムーズな流れを作れたかもしれません。 てことで反省。 ――おわり
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