●短編 #0283の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
数知れぬ矢の数のシュラが城壁に通し矢で貼りついている。 ひからびた骨皮ばかり、ピンで留めた貼り紙のように無数に貼り付いている。 その不可思議な光景を沈め、この霧を捌いて何者か歩む。 それは司法議事堂の柱のひとつから抜け出した青白いミイラだ。 ミイラは風のように吠えながら彷徨した。 見よ、ここにそそり立つは大いなる司法議事堂。 天の月と太陽が喉をすべり神の腸内を昇りまた沈んで打ち建てた。 余は甦った律法学者。この議事堂の中興の祖にして柱と化した者。 議事堂の内部は下界をみおろす天空の清冽にしずまり、 正面大広間に大柱廊があって、生前の偉業を称える人柱像を成していた。 余はこの列中の中央に位置して配下を見下ろす。 今宵また一体のミイラがこの列柱のひとつに加わった。 彼は五十年に一度の輩出と称えられた亡国の書記長。 おお、書記長よ、汝は人を書かず己れを書く。 汝はそのように己れを書くために生まれついた。 そのために大いなる才能の星はその町のその階級のその家のその者の上に落ちた。 かくしてその者とその家とその階級とその町とが世界の表へ上昇した。 けれど今や星落ちの法はくずれ、汝の周辺は時を得て選民と知らず、 選民の名声で輝くまい。 今宵真新しい人柱像の足元でシュラが跳ねる。 いずこからか湧く食物の残滓に群がって、ただひたすらにシュラがうるさい。 億万の光陰の矢よ、億万のねずみの心臓を射抜き身上書のとどめをさせ。 ミイラたちはざわめいた。 「われわれの余りを生かすのは長ではない、税収である」 「いや、余りを生かすのは神である、神ごとである」 「いや、余りを生かすのは機械である、人でも神でもない」 「いや、余りを生かすのは口実筆実である、雲と霞である」 「いや、余りを生かすのは超脳波である、超脳波の指令である」 われわれの余りを生かすのは われわれの余りを生かすのは 久びさに柱を出で、城壁を出で、目実を集めて、余は歩いた。 雲と霞を晴らして干あがった浜を歩いていくと、 アンコウの背骨に矢が突き刺さっていた。 ぬめりと水気があり、まだ生きていた。 −了−
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