●短編 #0239の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
子供の頃犬を飼っていた。名前をミツという。秋田県の雌だった。 母親がどこからか貰ってきた犬だ。血統書付きの犬だという触れ込 みだった。そういわれてみるとどことなく品がありそうな犬であっ た。 当時子供たちの世界では、犬の善し悪しを、犬の尻尾をを握って ぶら下げて、鳴くか鳴かないかで決めていた。鳴く犬は駄目な犬で 鳴かない犬はいい犬なわけだ。ミツの尻尾を握ってぶら下げてみる と、全然鳴かない。これはいい犬だとワタシは勝手に決め込んだ。 しかし、かなり大きくなって体重が重くなってからぶら下げても鳴 かない。ただ単に鈍感なだけだったんじゃないかと今にして思う。 九州の田舎のことである。犬は完全に放し飼いである。首輪は一 応つけていたが、ひもで結ばれるということもなく、ミツは自由に 動いていた。朝飯を食べてそれからどこかへいき、夕方帰ってくる という感じ。どこで何をしていたのか知らないが、自由気ままに生 きていた。犬にとってはいい時代だった。 そしてある日、ワタシたちは大阪に移ることになった。行った先 では犬は飼えないといわれて、ミツは親戚のひとに飼ってもらうこ とになった。大阪に出発する日、ミツも親戚のひととお見送りして くれた。ワタシたちの乗ったバスが発車するとミツが追いかけてき た。どこまでもどこまでも追いかけてきた。しかししだいにミツと 間があき、いつか見えなくなった。それきりミツとは会ってない。 引っ越した大阪では、何だかんだ大変で、ミツのことも思い出す こともなく時間が過ぎていった。高校生くらいのときだろうか、ふ とミツのことを思い出し、あれからどうなったんだと母親に聞いた ことがある。そしたら、ミツは別れて一ヶ月くらいして死んだとい う。全然ご飯を食べず、それで死んだそうだ。 我が家にはミツの写真が一枚だけある。ワタシと弟と一緒に写っ ている写真だ。写っているミツの姿をみるたびに、ワタシはすこし 後ろめたい気持ちになる。この犬はワタシを忘れなかった。ワタシ はすぐ忘れた。 これ以後、我が家で犬を飼うことはなかった。
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