●短編 #0158の修正
★タイトルと名前
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「くそぅ!反乱軍め!火計を使うとは!」 ヒョウホは怒りに燃えていた。王軍と互角に戦える軍勢の大半が焼死してしまったの だ。斥候が赤・青魔女の行動を探ってきた。 「申し上げます!赤・青魔女は二千の兵を率いて反乱軍の主力がいるアラガスに向かっ た模様です!」 「追撃をかけよ!」 ヒョウホが怒鳴った。 「待って下さい、この砦、兵糧の運搬には五日はかかります。ここはあえて魔女を逃が し、軍備を整えて攻撃に移りましょう。」 エクトロスである。行動が早いもので、既に配下の兵士達に土木作業をやらせていた。 「お主がそう言うのなら、しかた有るまい。全兵に砦の解体、荷物を片付けさせよ。」 「承知致しました.」 * * 其の頃、アラガスを手に入れた反乱軍は治安維持を行っていた。貴族同盟の攻撃とアラ ガスを守ることを含めてアラガスの入り口に城を建てた。といっても、貴族が住む居城 のようなものではなく、軍議と兵糧の収納武器の整備などができる極めて攻撃的な城に なった。城壁はアラガスを取り囲むように建てた。 で、アラガスの民衆から信頼が厚いライライの仲立ちの元、豪商から軍資金の調達を 行っていた。 「では、マルトアールさんからは五拾万二千貫を頂戴致します。」 ライライだ。意外と弁舌が利くようである。 「ありがとうございます!感謝に絶えません。」 ガバンだ。礼法は忘れない。 それで軍資金の使い道である。兵士達に施しとして分配するか、各将に仕度金として 与え軍備を強化するか。軍議が開かれた。 「全部で二百万八千貫。この使い道であるが、」 ガバンが口を切った。 「ウッドミドガルドの戦から不利な戦ばかりで兵士達の士気が下がっているぜ。ここは 施しをした方がいいと思う。」 ハンジだ。なかなか軍略の才がある。この意見は最もである。今軍議が開かれている場 所は前に述べた、アラガスの入り口の城である。まだ木の匂いが漂う。軍議が開かれて いるここは天上、壁、椅子、机まで漆を塗ってある。 「しかし、これまでの戦で我々の武具が使い物になりませんぞ。」 アンデラスだ。自慢の長い長い名剣もその権威さえなくなっている。そこに赤・青魔女 と配下二千の兵が帰陣した。 「おぉ、お帰りになったか、湯に浸かってお休みなされ。」 カミュエルが言った。カミュエルは名目上は将扱いだが、実際は歩兵頭あたりの兵を与 えられている。軍議所から少し離れた場所で木刀を二つ持ち、稽古をしていた。 「あれ?白・黒魔女殿が居られませんが?」 「それが・・・・・・・。」 青の魔女の声だった。 * * 白の魔女は目を疑った。やっとの思いで奪取したウッドミドガルドの方角から火が見え た。 -------------やはり、メラに任すべきではなかったか・・・・・。 馬の腹を力いっぱい蹴った。翔けた。もしかしたら、まだ間に合うかも知れない。落城 を防げるかもしれない。森の影に人が見えた。武装している。兵士だ。よく見てみると 旗を掲げている。丸に二つの矛がクロスした家紋。オルドス家だ。つまり、ヒョウホ。 息を押し殺してその軍勢を眺めていた。大蛇のように長い長い列。森の中を大きな蛇が 蠢いているように見えた。火。迫ってきた。いきなり周囲の木々が燃えた。怖い。何故 か怖い。腰の細剣を抜いた。力いっぱい振りまわした。姉のカルナが何か叫んでいる。 分からない。炎の中から魔物が出てきたような気がした。殺される。必死で切り刻ん だ。死なない。 「シリアッ!」 頭の中で何かが弾けた。 「私は姉のカルナよ?分かる?母さんはもう死んだの。」 「はぁ・・・はぁ・・・大丈夫、姉さん。」 シリアはカルナに抱きついた。そんな時、貴族同盟の一兵士に見つかった。反乱に暗雲 が見え始めた。 ヒョウホは先程の不機嫌はどこへ行ったのか、反乱の主犯者を捕らえた事を多いに喜 んでいた。 「これは大した手柄だ。おい、お前の働きを認め、将に引き上げてやろう。これからは オルドス姓を名乗って良いぞ。」 「有りがたき幸せ。今後ともご期待にこたえましょう。」 「おう。頼りにしておるぞ。」 この白・黒魔女を捕らえた男は後にゲシュペンスト・オルドスと名乗るようになる。 「さて、尋問をしよう。」 ヒョウホは白・黒魔女を連れてこさせた。 「さて、反逆者よ。何故に反乱を起こした?」 「・・・・・・。」 「喋ればこのヒョウホ・オルドスがリース王に口添えをして貴様等の処罰を軽くする事 もできるのだぞ?」 「・・・・・・・・・・・・。」 「えぇい!この屑が!貴様等の反逆も残りわずかで終わるだろう。今に見ているがよ い。おい、そこの者この反逆者達を運搬せよ。王への手土産にするのだぞ。傷つけては ならんぞ。」 * * 赤・青魔女は休憩に入り、軍資金の使い道は残る将達に託された。折角の軍資金で城郭 を増築を主張する者、人心を得るためにそのまま返却を主張する者。 サジジには考えがあった。火薬や銃を国の命令で研究してきたから、この軍資金で開 発はできないか。願わくは銃を大きくした筒を開発したい。西国では大筒とか呼ばれて いたのを書物で読んだことがある。その大筒があれば遠距離から狙撃できるし、破壊力 も抜群。サジジはこの案を主張してみた. 「俺にちょっとやらせてくれ。大筒っていうばり強い兵器を造らせてくれ。」 強い兵器という言葉にひかれたのか、反対はなかった。 翌日、早速開発に取りかかった。城壁を設置してもアラガスの貿易は衰えていなかっ たので必要な材料は揃った.あとは記憶を頼りに設計するだけ。幾度も試作した。どれ も暴発などで粉砕してしまった。そんな開発の時に斥候より、王軍五十万、貴族五十一 万の総勢百一万の軍勢がアラガスに押し寄せてくるとの報告があった。其の中には白・ 黒魔女が確認できたらしい。 緊急に軍議が開かれた。サジジの開発の報告と軍評定だ。 「さて、此度の戦は白・黒魔女奪還と敵の撃退に専念にて頂きたい。・・・・・・・・ ところでサジジ殿、例の物は仕上がったのですか?」 ガバンだ。 「いや、それが・・・・・。」 「できていないのですね?ま、いいでしょう。では、予定通り徹底篭城で戦います。」 三日後、遂に王・貴族同盟軍がマラピヤ街道に現れた。先鋒はハンジとガージが向か った。 「おっし!俺達の武勇で圧政王を驚かせてやろうぜ。」 ハンジは馬に跨った。馬の腹を蹴る。翔けた。敵が気づいた。剣を抜く。四人も翔けて きた。右手の剣を振る。頭は二つ飛んだと思う。王兵独特の長鳥帽子型兜が針のように 見える。左の方から何か叫びながら迫ってくる兵士がいる。一閃。血しぶきが上がっ た。最後の一人。死に物狂いで剣を振り回す。避ける。腹に剣を貫かせた。汗で塗れた 長鳥帽子型兜が肩に凭れた。重い。抜く。ハンジが其の死体を支えるようなかっこう だ。足も使って力いっぱい抜く。血が噴出した。目に入ったか。否、入っていなかっ た。遠くを見ると今度は十人は来ている。ガージが見当たらない。死んだか。討ち取ら れたか。分からない。退却した。 「すまない。君ばかりに苦労をかけてしまって。」 ガバンだ。 「水臭い事を言うなよ。俺はガバンの義兄。弟を守るのは兄の勤めだ。」 汗と血でいっぱいの顔を水で洗いながらハンジは言った。 「あぁ。嬉しい事を言ってくれるな。しかし・・・・・・ガージが死んだか。惜しい な。武芸は秀でていたのだが。」 「敵は斬っても斬ってもまた出てくる。きりがない。どうする?」 ハンジが腰兵糧を口に押し当てながら言った。腰兵糧は汗と血まみれの手で食べたの で、少ししょっぱく鉄のような味がした。 「兵糧は充分にあるが、何か策が必要だな。サジジ殿の大筒とやらも完成の目処がたっ ていないし。」 ガバンは城の中央で試作をしているサジジを一瞥した。 * * 同日、ヒョウホ他貴族同盟幹部らは王都入りを果たした。貴族同盟はアラガスから一直 線にウッドミドガルドへと伸びるマラピヤ街道の最果てに布陣。そこをレデイ・ミドガ ルド、ゲシュペンスト・オルドスに守らせ、自らは二百の兵で道中警護をさせた。 王都は華やかの極めだった。庭園のような計画的に配置された民家、商家、貴族屋 敷、透き通るように綺麗な水路。この王都に民家を持てるのは税を多く収めた者。商家 には西国の民族の姿も見える。西国の民をヒョウホは初めて目にした。西国の民族は男 も女も目が大きく、猫に酷似した大きな耳が目立った。 「あれは、、、、古の書物に登場するエルフ族に似ていますね。」 エクトロスが言った。ヒョウホはさすがは学者だと思った。 王屋敷に案内された。王の前には大きな王一族の家紋が書かれた布が垂れていた。 「貴族同盟、ヒョウホ。今参りました。まずは仕度金として五百九千貫を献上致しま す。」 「大義である。」 王の声だ。初めて聞いた。透き通るように高く、どこか低い。 「戦についてはビダー、アークマンに任せた。別の部屋で待っているぞ。」 「はっ。」 案内された部屋は大理石でマラピヤ街道周辺の地図が彫られていた。王の権力を象徴し ているようだった。 「待っておりました。貴族同盟の同志の皆様。私がアークマンです。」 アークマンと名乗った男は眼鏡をかけていて、文官といっと感じだった。 「で、こちらはビダーです。」 ビダーと呼ばれた男は流れるような白髪が腰まで伸びていた。服装は王の側近で有るの に略装だった。使い古したような剣を腰にぶら下げていた。武官だ。 「今回、我々王軍側は王城大手門前に陣を設けます。」 アークマンが言った。ビダーは何も語りそうにない。 「王軍側は我々貴族同盟を戦わせて、王軍の兵力を温存するつもりでしょうね。」 エクトロスが耳打ちした。ヒョウホ自身も陣の配置からしてだいたいの魂胆は分かって いた。 「王軍は弓等で敵本陣、つまりアラガス城を攻撃します。」 「承知した。」 「では、明日の昼間に法螺を吹きますので攻撃を願います。此度の戦にはリース王が出 陣します。兵の士気も上がるでしょう。」 ヒョウホは王城の大手門を出ると果てしなく長いマラピヤ街道を眺めた。先王が国土 開発に造ったこの道が明日、血で血を洗う合戦場となるのか。先王が居た頃はこのマラ ピヤ街道は商人や各貴族の使節、旅人、吟遊詩人などが行き交った。リースは王城の前 を通る人々から税を取った。それからだ、この街道が廃れてしまったのは。 帰陣すると兵に施しをした。兵士達は喜んだ。 「この金の使い道は自由だ。好きにするが良い。明日の戦の活躍を楽しみにしている ぞ。」 そして、各将達にも金を仕度金として与えた。鎧を新品にしたり、兵糧を買いこんだ り、旗を造ったりと、みるみる軍備と士気は上がっていった。 明朝、マラピヤ街道を見つめた。朝靄が身にしみる。 「殿、どうしましたか?」 エクトロスだ。何故か優しい女性の声に聞えた。 「時というものは残酷だと思ってな。」 「時、ですか。」 「あぁ。時だ。」 「そうですね。私は数年前は旅人として各地を流浪していましたが、今は貴方様の兵法 指南役として取り立てていただきました。大出世です。感謝しています。」 「そうだったな。」 「さぁ、殿。これから戦です。湯漬けを食しましょう。」 自分も二ヶ月ぐらい前はただの貴族だったが、今は貴族同盟という巨大団体の主だ。大 出したなとヒョウホは思った。 湯漬けは米を湯で煮てその上に野菜を炒めたものが盛ってあった。ヒョウホは湯漬け をいっきに口に掻きこんだ。湯漬けを食べ終えるとすぐさま具足を装備した。銀ででき た甲冑と背中に大きな家紋を染めた反物を羽織った。腰には短刀を装備した。敵に捕ら えられるよりは腹を開いた方が良い、これが貴族の間の考えだった。 雑兵に自家の旗を持たせて整列された。自分の近くには気に入っているゲシュペンス トとエクトロスを置いた。戦の前なのに静かだった。 「実はな、此度の戦は気が気ではないのである。」 ヒョウホだ。 「・・・・・と申しますと?」 エクトロス。 「何故か、この前の戦は天下を食らうような勢いがあったが今は自分の覇気がないよう な気がしてならないなのだ。」 「あっ!法螺の音が聞えましたよ!」 ゲシュペンストが二人の会話を破るように大声を挙げた。 * * ガバンは王城のあたりから法螺貝の音が聞えたのを耳にした。敵が来るな。そう思っ た。 「いよいよだな。」 ガバンが呟いた。 「あぁ。マラピヤ街道は長い。そんな早くはここに辿りつけないだろうな。」 ハンジ。戦の天才児と歌われた程であるから、戦を祭りかなんかのように思っている。 昨日よりアラガス城の前に三十の堀と、馬坊柵を設けた。そして城内に物見櫓を配 置。馬坊柵に梃子摺っている内に狙撃しようというものだった。先鋒がハンジ、アンデ ラスに決まった。両部隊とも、二百の歩兵と部隊長を含む三騎の二百三名で向かった。 ハンジは馬鞍に跨った。剣にこびり付いた血は拭き取った。剣を眺めると空が近く見 えた。思い出した。ガバンとロックガンバで誓った夢。乱世を終わらせること。目の前 の門が開いた。と同じに開門の合図の銅鑼がなった。その深みのある響きが士気を高ぶ らせた。馬の腹を蹴った。この前よりも強く。翔けた。風景が流れる。愛剣を抜いた。 自分でも分からない叫びを発した。歩兵達が叫んだ。街道の先に砂埃が見えた。来る。 「行け。」 自らも翔けて薙ぎ倒していった。首級は歩兵に取らせる。剣を振りまわしても振りまわ しても敵は幾度も翔けてくる。きりがない。しかし、敵を斬った。ひたすら斬った。何 故か気持ちはロックガンバ青年党の党首だった頃の気持ちだった。初めての戦で敵を斬 って斬って斬り殺した、あの頃。剣は血で使い物にならなくなった。いつのまにか自分 の周りには首のない屍体が横たわっていた。先の見るとまだ翔けてくるように見えた。 退却した。 ガバンは名案を考えた。アラガスにはヒョウホ邸がある。ならば、ヒョウホの妻子を 人質にして、貴族同盟を戦線離脱させる作戦だ。ハンジや諸将はこの案にもう反対し た。しかし、強行に踏み切った。これしか勝ち目はない、とガバンは断定した。 二十の兵でガバンはヒョウホ邸へ向かった。
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