●短編 #0008の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
虫の知らせだろうか? 佐久間のことを考えた時、胸の奥に冷たい異物感が生まれた。前に会った時 は、仕事がうまくいってないと、言っていた。豪快な笑い声がトレードマーク だったが、別れ際に彼が浮かべたのは青白い微笑みだけだった。 指先をゆるめ、掌の汗をGパンでぬぐった。 身体が何かを訴えている。それは分かる。だが何を訴えているのか、それが 分からない。分からないことが私を不安にしている。 大通りのコンビニ前で足を止め、携帯で連絡を取ろうとしたがつながらない。 几帳面な彼のことだから電源を切ったままにするわけがない。心の中にそうさ さやく自分がいる。 自殺、という文字が脳裏に浮かんだ。まさかそんなことはあるまい、と首を 振る。あの男が仕事の悩みで死ぬとは考えられない。筋骨たくましく、街を歩 けば道行く人より頭一つは高い。頑強としか呼べない体躯で自殺するとは想像 できない。 肩をすくめてから、携帯電話をGパンの後ろポケットにしまう。 喧噪の中、小さいがはっきりと甲高い音が響いた。余韻を残すように音色が 踊り、淡く消えていく。鳥の鳴き声のような気がして、ビルの谷間から空を見 上げた。閉ざされた天空に黄色いバルーンが浮かんでいるのが目に飛び込んで きた。テレビで見た17フィートのタイプより大きいようだ。生命保険の宣伝 文句が印刷されている。 『万が一のために、シンクロニシティ生命』 この場所から佐久間の住むアパートまでは徒歩で20分くらいだ。 行ってみるか――。独り言が口をついて出た。 小春日和の日曜、寂れたこの街でも人出が多い。華麗に着飾った女性、ラフ な服装の若者たちを縫うように歩く。最初はゆっくりと次いで早足になる。 大通りの交差点を抜け、林立したビル群が小柄になる裏道に入る。狭いその 道を進むと、前方に腰を曲げた老人が歩いていた。酔っているのか千鳥足でふ らついている。九十九髪と手に提げた風呂敷包みが右に左に揺れている。私が 横を通り抜けようとした時、老人が膝から崩れ落ちた。 「大丈夫ですか?」思わず手を差し出した。 「うう……」うめき声をあげた老人の顔には深いしわが刻まれ、手は枯れ枝の ようにくすんでいた。 老人を抱えながら「大丈夫ですか」と、繰り返す。彼は「年でねえ、歩くの もつらい」と、言いながら私の肩を借りて立ち上がった。老人のスラックスを 手で軽くはたき、埃を払うと、彼はまたよろめいた。 「危ないなあ、どこに行くんですか?」 「すぐそこの大同アパートまでなんじゃが」 老人の視線の先に目をやると、歩いても1分、おぶっても数分の距離だと分 かった。頭の片隅に、佐久間の知り合いなのだろうか、いや彼は天涯孤独の身 だからそれはないだろう、と自問自答している自分がいた。 「おぶりましょうか。行き先が同じですし。住んでるんですか?」 「いや、訪ねる相手がおるだけじゃ」 私は膝を折り、老人に背を向けた。「すまんのう」と、言いながら肩に触れ た指先が冷たかった。一瞬身が震える。小柄だがずっしりとしている。 「重いじゃろ?」 「いえいえ、軽いですよ」と、答えたが、鉄のかたまりを抱いているような錯 覚にとらわれる。 「親切な若者じゃのう。今時めずらしい」 「――情けは人のためならず、って言うじゃないですか」 老人はため息をひとつついてから、私に「お礼をしなくてはいけないなあ」 といった。肩を回した老人の手が胸元にのび、ポロシャツの胸ポケットに何か を忍ばせた。うつむくように下を見ると、小さなケースがおさまっていた。 「中に錠剤が三つ入っておる。青い錠剤は、これから起こる人生の良いことが 全て見られる。赤い錠剤はその逆で、これからの人生に起こる悪いことが全て 見られる。黄色は死ぬ覚悟がいる。なにせ自分の人生で重要な分岐点に戻って しまうのじゃからのう」 私は小さく笑った。観察している人がいれば、苦笑いと言うかもしれない。 「人の親切でもひとつはひとつ。どちらにせよ、わしは持ち帰らねばならぬが のう」 おじいさん、面白い話だねえ。と私が喋ろうとしたとき、身体が浮くような 感覚に包まれた。堅い老人の触感が掌から抜け落ち、ひんやりとした体温が背 中から消えていた。後ろを振り返ると、そこには何もなかった。立ち止まって あたりを見回しても、誰もいない。掌を見つめてから、叫び声をあげようとし たが、嗚咽とも吐息ともつかない音が漏れるだけだった。私は走り出していた。 後ろを振り返ることなく、ただ佐久間の住む大同アパートを目指して。 わずかな距離がやけに長く感じられた。 あけたままの表玄関から飛び込み、二階へと続く階段を駆け上がる。突き当 たりの部屋が佐久間の暮らす場所だ。私はドアの前で足をとめ、髪を掻き上げ てから呼吸を整えた。人間、訳の分からない事態に直面すると脳内が白紙状態 になる――このとき初めて知った。無意識にドアのチャイムを押す。返事がな いのでノブを回す。一連の動作は考えてやったものではない。 ゆっくりとドアを開け、中を見ると佐久間が居間で座っていた。低いテーブ ルの前でうつむいて正座している。太陽の光はカーテンで遮られ薄暗い。部屋 の中は乱雑で読みかけの新聞やカップラーメンの器が重ねられ、灰皿からタバ コの灰がこぼれ落ちていた。足の踏み場もない状態だ。なのにテーブルには出 刃包丁がひとつ置かれているだけだった。 「佐久間……」 問いかけても返事はかえらない。私はドアを閉め、上がりぶちで靴を脱ぎ、 彼に近づいた。もう一度問いかけても返答はなかった。彼の両肩に手を置き、 身体を強く揺さぶると「ああ、おまえか」と、力無く応えた。生命を感じない うつろな表情を前にして、私は老人の事が頭から完全に抜け落ちた。 どうしたんだ? と、尋ねる前に、佐久間が話し始めた。それは私にではな く自分に話しかけているように無機質な口調だった。 「会社、つらくてやめたんだ。……それはまだいい。だけど俺の給料が払えな いからやめてくれ、って言っていたくせに、一昨日会社に行ったら、もう若い やつが俺の席に座ってやがる。莫迦にされたようで、やりきれなくてなあ。ど うせハローワークに行ったって仕事なんか簡単には見つからないし、彼女もい ないし、三十路をはるかに越えてこれだもんなあ、ホント莫迦だよなあ。考え たら俺の人生いいことなんか、ほとんどなかった。悪いことばかりのような気 がする」 私は足下の新聞を畳み、佐久間の横に腰をおろした。 「毎日、死ぬことばっかり考えていた……」といって、佐久間は口を閉じた。 私は黙って彼の横に座っている。 壁に掛けた時計が一定のリズムで音を刻んでいた。呼吸と時計だけが、この 部屋を支配しているかのように振る舞っている。 しばらくしてから、佐久間が「何か飲むか?」といった。私がうなずくのも 待たず、ビールでいいか? といって立ち上がった。彼の後ろ姿を目で追うと、 キッチンシンクから血肉が腐ったような臭いが立ち上った。わずかに鼻をしか めるのと、佐久間が冷蔵庫のドアを閉めるのは同時だった。 「ちょうど2本しかないや」と、いって佐久間はテーブルの上に缶ビールを置 いた。 「つまみはないなあ、すまん」佐久間は私の対面に座り直した。 「かまわないよ、そんなもの」私の視線は一度包丁に向けられた。新聞紙にく るみ、テーブルの下に置く。それから佐久間の瞳に向き直った。彼は視線を逸 らした。 私は目線を落とし、リングプルをあけ液体を喉に流し込んだ。佐久間もそれ にならう。 「心配で来たのか?」佐久間がいった。私は首を縦にふった。 「人生の最後でいいことがひとつあったな。俺にも、心配してくれる友達がひ とりいた。でも、それだけだ」佐久間はそういって小さく笑った。 私はどう話せば、自殺なんて馬鹿なことをやめるのか、考えていた。だが言 葉がまとまらない。頭の中で様々なイメージと文字が群舞する。固まってはち りぢりになってとりとめがないのだ。私は唇をかんだ。 「?」 佐久間の右手が私の胸ポケットにのびた。 次いで「なんだい、それ」彼がポケットから老人のくれたケースを取り出す と、薄暗い部屋の中で淡く発光しているのが分かった。 「ああ、それはなあ……」と、いって事の顛末を話した。佐久間は黙ってケー スを開いた。中には赤と青、それに黄色の錠剤がそれぞれ一錠はいっていた。 「青いやつ、俺にくれないか?」と、佐久間がいって錠剤をつまんだ。 「老人の冗談に決まってるさ。たちが悪かったんだよ。それに毒かもしれない じゃないか」 「飲めば分かることだ。それに毒でも構わない。一体、何が困るっていうんだ」 佐久間は止めるまもなく口を開け、ビールと一緒に飲み干してしまった。私 は手をあげかけたが、どこに置けばいいのかも分からず、宙をさまよわせた。 佐久間の表情に精気が宿った。頬がほてり、目が輝く。唇がわななくが、何 を言っているのかわからなかった。 佐久間が我に返ったのは壁掛け時計の時報が鳴った時だった。何も言わずに 立ち上がり、積み上げたカラーボックスをあさりはじめた。 「これだ!」と、いって振り上げた手は宝くじを一枚握っていた。 ゆっくりと眺めてから、「間違いない」といった。 「それってウルトラジャンボか? 特賞で10億だかってやつだろう」 「ああ」 「当たるのか?」 「……」 佐久間は宝くじを元の場所に戻し、財布をもつと「さあ、いくぞ」といった。 私が反応できないでいると、前祝いさ、といって大きく笑った。ただの夢かも しれないがな、といいながら、立ち上がった私の肩に腕を回し、夢で終わって もいいんだ、とつないだ。 「俺のことを心配してくれる友達がいるんだからなあ、これじゃあ死ねないや。 だってお前、泣き虫じゃん」 「なにいってんだか」と、肩を組みながらこたえる。で、他になにか良いこと あったのか? と、尋ねると、「これ以上に良いことなんかあるわけないじゃ ないか」と答えた。 「もっともだ」と、私。佐久間は声をあげて笑いはじめた。 その日、私たちは飲み歩き、月曜日は会社を遅刻してしまった。上司に怒ら れながらも、私は笑いをこらえることがひどく難しかった。カレンダーを見つ めながら発表の日を待ちわびる。佐久間からは時折、電話が入る。うるさいく らいに快活で微苦笑を浮かべずにはいられない。宝くじの結果が分かる前の日 は当選祝いと残念会をかねて、佐久間と飲み歩いた、前回は佐久間のおごりだ ったが、今回は私が支払った。 別れ際、彼が私に尋ねた。私は首を横に振った。 「悪い事って、分かっても回避できないことだったらどうする? 必ず死に至 る病とか……事象はいくらでも考えられる。自分の死に様を知ることは正直言 って怖い。黄色だって、そうだ。本当に過去の分岐点に戻れるにしても、自分 の望む場所に還るとは限らないだろう。危なすぎて飲めない。だいたい飲むべ き理由もないしなあ。とはいえ、捨てることもできない。役に立つときがある やもしれないし」 佐久間は頭を垂れ、スマン、といった。 「青い錠剤だって、自分には飲む勇気がなかった。役に立っただけ、よかった と思ってる。それにだ。太っ腹だから1億くらいくれると思うし」 私が舌を出すと、佐久間は引き抜く真似をした。 最後に、お前の言っていた老人って何者なんだろう? と、佐久間がつぶや いた。推測しかできないのは、お互い分かり切っている。神のみぞ知る、とい うやつだ。 発表の日、その日は会社が休みだったため私は昼頃まで寝過ごしていた。痛 む頭を薬と水でごまかし、テレビをつけた。そろそろかな、と思ったとき、胸 の奥の冷たい異物感がざわめきだした。異物からゆるやかに触手がのび、身体 の隅にまで浸食してくるようで、這いずるような不安感が全身を包み込む。 何か忘れていることがあるのだ。 薬……。 お守り代わりに身につけたケースを眺める。紐を通し、蓋にはアイドルのシ ールをはった。開けると中に赤と黄色の錠剤がおさまっている。青い錠剤は佐 久間が飲み干した。服用したが毒はなかったようだ。今のところ異常が出たと は聞いていない。私にも佐久間にも残った錠剤を飲む勇気はなかった。 誰が自分の人生に起きる悪いことを見たいだろうか? それも全部だ。 老人の語った通り、彼は人生に起こる良いことを見た。願いがかなうなら特 賞を当てて欲しかった。そうすれば……二度と死ぬことは考えないだろう。 テレビから歓声があがり、携帯がなった。出ると、相手は佐久間だった。 声をとぎれさせながらも、力一杯喜びを伝えようとしているのが分かる。 「いま、そちらにいくからよ。やったぜ、本祝いだ! 10億だぜ……」佐久 間は切ることなく、しゃべり続ける。靴を履いて、玄関を出る。鍵をかけ忘れ て戻り、また階段を下りる。実況中継で全てが伝えられる。 「大通りに出たところ。これから車を拾って」 ゴムのきしむ音が響き、轟音と同時に話が切れた。私が呼びかけても返答は ない。遠くから、事故だ、という叫び声が聞こえてくる。やがて通信そのもの が途絶えた。 老人はいった。「これから起こる人生の良いことが全て見られる」と。 佐久間が宝くじをあたるところしか見なかったのは、それで彼の人生が終わ るからなのか? 馬鹿な! そんな馬鹿な話があってたまるか。 私は赤い錠剤をつかむと一気に飲み干した。目の前に四角い銀幕が現れ、四 肢に砕けたフロントガラスを着飾った佐久間が映った。頭蓋骨は陥没したのか 醜くゆがんでいる。耳から血を吹き出し、一目で死んでいると理解できる。佐 久間を跳ね、貸店舗に飛び込んだ4トントラックより無惨な姿に、私はどうし ようもない無力感を覚えた。 場面が変わる。私が黄色い錠剤をのみ、過去に戻る映像がうつしだされた。 階段を降りようとする佐久間を止めている。階下には老人がいて、風呂敷包 みをほどいていた。老人は何かを包んだ新聞紙を取り出した。くるまれた物は 出刃包丁だった。私が包んだ物と同じ出刃包丁だ、そのとき私はそう確信した。 「ひとつはひとつ」氷のように冷たい声が響いた。同時に老人の身体は漆黒の 霧で覆われだした。皮膚と肉のはげ落ちた顔は骨のみになり、眼窩の奥には闇 しか広がっていなかった。 私は彼の正体が死に神だと悟った。 そして映像がはじけた。 震える指先にも構わず、黄色い錠剤を取り出し、一気に飲み込む。甘い味わ いが広がった刹那、私はベッドにいた。時計に目を向け、急いで着替えると財 布だけ身につけ、マンションを飛び出た。タクシーを拾ってから、携帯を持っ てこなかったことを悔やんだが、時は待ってくれない。運転手をせかしながら、 私は後悔していた。赤い錠剤を早くに飲んでいれば、もっと早くに対処できた のだ。だが、まだ間に合うはずだ。 アパートに横付けして、運転手に代金を支払う。釣り銭はいらない、といっ て走る。階段で佐久間に出会う。私は駆け上がった。 「連絡とれなくてよ〜。で、大きな声じゃいえないが……ふふ、当たった!」 「佐久間、部屋に戻れ!」彼の顔に困惑の色が浮かんだ。 「なんで、――まさか、お前」 私は黙って紐をひき、カットソーの首筋からケースを出した。 「赤い錠剤、飲んだんだ。すぐに戻れば最悪の事態は避けられる」 「最悪って……俺が死ぬってことか」 私は沈黙した。 見下ろすと、老人がいた。あの日と変わらぬ姿で階下にいる。表情からは何 も読めない。彼が風呂敷を下におろす。その姿が段々と変容していく。暗黒の 霧をまとい、形が朧になっていく。異様に細く白い筋張った指先が包丁を握っ ていた。佐久間の声が震えた。 「あれって、死に神じゃないか。嘘だろう」 頭を振ると佐久間は、黄色の錠剤は死の覚悟がいるって言ってたよな、とい った。死に神は刃物を振りかざしたまま、上ってくる。昼間なのに、彼の周り には光がない。ただ刃先だけが鈍く輝きながら近づいてくる。私の足は逃げた くても硬直してしまった。 「ひとつはひとつ」と死に神がいった。重低音が湖水に広がる波紋のように私 の心臓を歪めていった。 「どちらにせよ、持ち帰らねばならぬがのう」 死に神から視線をはずせなかった。 佐久間が紐を引きちぎり、私からケースを奪った。中を開くと赤い錠剤がこ ぼれ落ちた。軽い音を立てながら階段を跳ね、死に神の身体を突き抜けた。 「空じゃなかったのか?」かすれた言葉が私から出る。 振り返ると佐久間は黄色い錠剤を口に含んだところだった。 「お前も飲んだんだろう? 俺のために」佐久間の喉が動いた。 * 虫の知らせだろうか? 佐久間のことを考えた時、胸の奥に冷たい異物感が生まれた。前に会った時 は、仕事がうまくいってないと言っていた。豪快な笑い声がトレードマークだ ったが、別れ際に彼が浮かべたのは青白い微笑みだけだった。 大通りのコンビニ前で足を止め、携帯で連絡を取ろうとしたがつながらない。 「よう! 間に合ったか」 人混みから頭一つ突き出た佐久間が手をあげた。 「なんだ、元気そうじゃないか。ちょっと心配で電話しようとしてたところ」 私が笑うと彼も笑った。明るくて豪快、悪く言えば騒音に近い笑い声だ。 「俺にとって一番悪いことは、友達を失うことだ。仕事は失ったが、それは深 刻なことでもない。比較すればだがなあ」 「リストラかあ。相談にのるぜ。田舎は農家だし、最悪の場合は二人で百姓す るか?」 「それは最悪じゃない。最高に良いこと、というんだ。間違えるなよ」 彼がそういった時、ふらついた老人が通り過ぎた。 すれ違い様「ひとつはひとつ」といったような気がするが、小声だったため 判然としない。 一刹那おいて耳元に空気を切り裂くような金属音が届いた。佐久間の身体が 正面から崩れ落ちる。四肢から力が抜け、だらしなく口を開けている。その唇 から呼吸が消えた。 「佐久間! 佐久間!!」 何度も呼びかけ、幾度となく頬をはたいたが反応はなかった。見よう見まね で心肺蘇生法を行った。やがて救急車がやってきた。救急隊員に止められても 私は替わりたくなかった。 佐久間の身体がタンカに乗せられるとき、小さいがはっきりと甲高い音が響 いた。余韻を残すように音色が踊り、淡く消失していく。鳥の鳴き声のような、 それでいて佐久間の笑い声のような気がして、空を見上げた。 小鳥が一羽、旋回している。 やがて青空に向けて翼をはためかせ、高く、どこまでも高く飛んでいった。
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