●短編 #0003の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
「蟹が居るんだ」 また始まったな、とラビオリは口の中で小さく舌打ちをした。 「俺の頭の中にね、蟹が・・・居るんだ」 蟹の話になると彼はもう止まらない。まるで薬をやったみたいに目が虚ろになってい る。ラビオリは、2杯目のコーヒーを作る為に立ち上がった。 「ねぇ、ラビオリ。今夜は満月だろうか?」 一昨日も同じ事を聞いた。その夜は三日月だった。今日も月は欠けている。 「いいや、まだ、先だよ」 ソーサーとカップをトン、と目の前に置く。彼は視点を空に漂わせたまま、器用にカッ プを手に取り、そして一口目を啜った。 「おかしいな、蟹が騒いでいるんだけど」 長い夜になりそうだと、頭の隅で考えながらラビオリも自分のカップを持って、彼の目 の前に座る。 「確か、一昨日も同じ事を言ってたよ?」 彼は暫く腕組みをして考えていたようだが、すぐに頭を抱えて蹲ってしまった。 「蟹が動いてる、なぁ、知ってるか?ボクの頭の中に住んでいる蟹。満月の夜に蟹は騒 ぎ出すんだ。この蟹は横歩きなんて・・・」 息を詰まらせる彼に、ウンザリしたようなしぐさを捨ててラビオリが続けた。 「横歩きなんてしない、そして縦に、前につんのめるように走るんだ・・・」 蟹なんて居やしない、全部彼の妄想だ。彼には見えるし感じるのに、ラビオリには何一 つ解らない。それが何だかとても悔しかった。 「蟹が・・・蟹が・・・蟹が・・・」 狂ったように口走る彼を見ていると胸が切なさに締め付けられるように苦しくなってし ま う。だから、ラビオリは彼の唇を自分の唇で塞いでしまうのだ。 そう言えばいつか、彼がこんな事を言ってたっけ・・・。 彼の頭の中に住む蟹の種は、メスがオスよりも強く、性交を果たしオスの蟹に存在価値 が無くなった時、メスはオスの硬い殻に鋭く尖った挟みを突き刺し、そしてオスの身を バリバリと殻ごと食べるのだそうだ。それも悪くないかも知れない。このまま彼を食べ てしまおう。そして自分が蟹になればいい。そしてラビオリは・・・唇を重ねたまま彼 の舌を強く噛んで食いちぎった。
メールアドレス
パスワード
※書き込みにはメールアドレスの登録が必要です。
まだアドレスを登録してない方はこちらへ
メールアドレス登録
アドレスとパスワードをブラウザに記憶させる
メッセージを削除する
「●短編」一覧
オプション検索
利用者登録
アドレス・ハンドル変更
TOP PAGE