●長編 #0264の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
遅れてきたともだち 悠木 歩(ゆうき あゆむ) 広い広い宇宙の中にあって、それはとても小さかった。 惰性で流れて行くそれは、空間に漂う岩石やごみの類と何ら変わりないもの だった。宇宙船、かつて人がそう呼んだもの。それもとびきり小型のものだっ た。 いまはただ漂うだけ。その機能はとうに失われてしまったかに見えた。 それが、突然に動力を動かし始める。慣性の法則に従い漂っていただけの船 体が、ほんのわずかだが向きを変えた。 どうやら何か目的のものを見つけたようだ。 今日はあさから、とてもにぎやかだった。 村じゅうのおとなたちが学校の前にあつまって、なにか話しあいをしている。 「学校、中止かな?」 そう言ったのは、黒い肌のギニア。ぼくたちの中では、一番の力もち。ほか の運動も、ぜんぶ一番かな。でも一番って言ったって、五人しかいないんだけ ど。 「たんけん隊を出すのかしら」 鉄棒で逆上がりして言ったのは、ロス。きんいろの髪がきらきらと光った。 彼女も運動がとくいなのはいいけど、パンツが見えたよ。 「私は学校があったほうがいいなあ」 読んでいた本に、しおりをはさんで閉じたのはマニラ。マニラの肌はぼくと おんなじ。きいろの肌って言うらしいけど。これってきいろなのかな? 「私も。学校がないと、一日じゅう、家の手伝いだもの」 これはシドニー。シドニーの肌はロスとおんなじだけど、髪は黒いんだ。 「ぼくんちもだよ。けどさ、たんけんなら、連れていってくれないかな」 そしてぼくがトキオ。 ぼくらのほかにも、村には十人ちょっと子どもがいる。でもぼくら五人は、 ほかの子たちとちょっと違うんだ。 ぼくのお父さんとお母さん、それから先生、それにほかのおとなの人たちみ んな、「ちきゅう」って星で生まれたんだ。でもその地球はもうない。この世 からなくなってしまった。 地球には、たくさんの人が住んでいたんだって。この村の百倍の百倍の、百 倍より、もっとたくさんいたんだって。 そのたくさんの人たちが、地球からいっせいに逃げだした。何億って数の宇 宙船にのって。 あっ、宇宙船って知ってる? 空をとべる、大きな船のことさ。星の海をお よぐ船だから、宇宙船。 その何億って数の宇宙船は、みんなちがう方向にとんだ。だって、地球以外、 人の住める星がどこにあるのかなんて、だれも知らないから。みんなが違うほ うへとべば、どれか一つは人の住める星につくかも知れないから。 お父さんたちが、この星をみつけるまで、やっぱり何年もかかったんだ。そ の宇宙船の中で生まれた子どもが、ぼくたち五人なんだ。だから、ぼくたちを スペースチャイルドなんてよぶ人もいるよ。 だけど、ほんとうは、もっといたんだよ。 みんな死んでしまった。長いあいだの宇宙船での生活は、みんなを弱らせた。 だって食べものはどんどんへってくるし。運動もあまりできないし。 弱い子どもから先に死んじゃったんだって。子どもだけじゃないよ。おとな の人たちもたくさん死んだ。そして食べものがあとちょっぴりになって、もう だめだってみんなが思ったとき、この星をみつけた。 星におりるときにも、たくさん人が死んだらしい。長い旅をして、ぼろぼろ になった宇宙船で、空気のある星におりるのは、ものすごくたいへんらしい。 この星におりたとき、生きていたのは三十人ちょっと。この数が多いのか、 少ないのかぼくにはわからない。だって、いまの村の人の数より、たくさんの 人なんて、ぼくは見たことがないんだもの。 ああ、ぼくたちののっていた宇宙船? それは村から南にずうっといったところの海に沈んでいるよ。 「聞いて下さい」 話し合いがまとまったらしい。村のみんなに向けて、先生が大きな声でいっ た。ぼくたちはおしゃべりを止めて、耳をかたむける。 「昨夜の流星の正体を確認するため、人を送ることにしました」 「やっぱりたんけん隊だって」 ロスはちょっぴりこうふんぎみ。 ギニアは手でガッツポーズを作っていた。 ぼくらがメンバーに選ばれるわけ、ないのに。 「それじゃ船長、昨晩のあれは………」 だれかが言いかけると、先生がくちびるに指をあてた。しゃべるな、って合 図。 船長っていうのは、先生のことだよ。先生は、ぼくたちの乗っていた宇宙船 の船長さんだったんだ。だからいまでもおとなの人は、先生のことを船長って 呼ぶ。 それから、さくばんのあれ、っていうのは流れ星のことだと思う。 昨日の夜おそくに、大きな流れ星があったらしいんだ。残念だけど、ぼくは 見てない。だってその時間は、ぐっすりとねむっていたから。 でも音はきいたよ。 どーん、って言うのか、ばーん、って言うのか。とにかくものすごい音。そ れで目がさめた。 ギニアは見たんだって。さっきまで、じまんしてたよ。 夜中、ちょうどトイレにおきたとき、窓から見えたって。 夜なのに、まわりが昼みたいに明るくなったんだって。 それから、大きな光のかたまりが西のほうへおちていった。よく見る流れ星 の百五十倍はおおきな流れ星だったらしいよ。百五十倍、っていうのがよく分 からないけどね。 とにかくいままで見たこともないくらい、おおきな流れ星。ぼくは音しかき いてないけど。それにはなにか、秘密があるみたいだ。先生や、ほかのおとな の人たちは、それを知っている。なんだかぼく、わくわくしてきたよ。 「ドクター、お願い出来ますか?」 「わかりました」 「ありがとうございます。ではあとは………」 ドクターっていうのはお医者さんのこと。やっぱり何かある。だっていまま でのたんけん隊に、ドクターが選ばれたことなんてないんだよ。もしドクター のいないあいだに、村のだれかが病気やけがをしたら大変でしょ? それから先生は、つぎつぎとたんけん隊のメンバーを選んだ。ぜんぶで七人。 すごい大部隊だ。 村の人口は五十人。せいかくには五十一だけど。そのうちぼくらや、ぼくら より小さな子どもが、やく二十人。三十人しかいないおとなのうちの、七人だ もの。これはきっと、とんでもないことがおきたんだよ。 たんけん隊には、ギニアとロスのお父さんも選ばれた。ふたりとも、村で一、 二番の体力じまんだ。それからぼくのお父さんも。ぼくのお父さんは、とって も手先がきようなんだ。ハーモニカはにがてだ、って言うけど。 これで学校のお休みはけってい。だって三人のお父さんが選ばれたんだもの。 その分、ぼくたちが仕事をしないとならない。 おとなの人たちは、それぞれに仕事をもってる。けど、自分の仕事だけして いるわけじゃない。だって村には足りないもの、必要なものがたくさんあるん だ。みんなが自分の仕事だけしていたら、ぜんぜん間にあわないからね。 話しあいがおわって、いったん解散。たんけん隊に選ばれた人は、三十分後 に西の井戸に集合だって。 家につくなり、お父さんとお母さんは大急ぎで準備をはじめた。食べものに 水とう、着がえは一回ぶんだけ。ドクターがいるから心配ないけど、くすりは ねんのため。それから、村にはまだ三ちょうしかない「鉄ぽう」 これ、お父さんがつくったんだって。 「命中精度は、まだまだだ」 って言ってたけど、すごいでしょ。 「ねぇねぇ、こんどのたんけんは、どのくらいかかるのかな?」 準備しているお父さんを見ていると、なんだかぼくのほうがこうふんしてく るよ。 「探検じゃなくて、調査なんだけどな」 そう言って、お父さんは笑う。 「片道でおよそ二日。場合によっては向こうで一日、二日は滞在するかも知れ ない。まあ、五日から六日ってところだろう」 ああ、いいなあ。 ぼくもはやくおとなになって、村のそとを探検してみたい。 村のそとには、危険などうぶつがたくさんいて、ぼくたちこどもは、めった に出れないんだ。 「いいか、お父さんの留守中、お母さんの言うことをよくきいて、家の手伝い をしてくれよ。一日一回は畑の様子を見てくれ。ああ、それから勉強もするん だぞ」 どうして勉強が必要なのか、ぼくにはわからない。けど、ここはすなおに、 返事をしておく。出発まえのお父さんを心配させるなんて、できないからね。 それから時間になって、お父さんたちは西の井戸のまえにあつまって、それ から出発していった。学校の前で話しあいをしたときとおんなじで、村の人た ちほとんどあつまっていたよ。 お父さんを見おくるお母さんは、なんだか心配そうな顔をしていた。寂しい のかな、悲しいのかな。 「気をつけて」 「無理はするなよ」 そんな声がかけられ、お父さんたちは出発していった。そしてたんけん隊の 姿がすっかり見えなくなると、あつまっていた人たちもかいさん。それぞれの 仕事にもどるんだ。 ぼくも家に帰ろう。そう思ったときだった。 「トキオ、トキオ」 だれかが呼んだ。ギニアだ。ほかの三人もいる。 それともう一人、あれはギニアの妹のリリィ。 「なに、どうかしたの?」 「こんにちは、トキオ」 ぼくがみんなのところに行くと、リリィがあいさつをしてきた。両手の指で、 スカートをつまんでもちあげるんだ。そんなあいさつをするのはリリィだけ。 ほかの誰もしないよ。むかし、地球のレディって人たちがしていたあいさつら しい。 「うん、こんにちは、リリィ」 ぼくは、ふつうにあいさつした。 「それで、どうしたのさギニア。ぼく、これから畑のようすを見て、それから まき割りしなくちゃならないんだ」 「それがさ、リリィのやつ、先生たちの話を聞いてたらしいんだ」 「えっ」 ぼくは、リリィのほうを見た。リリィは、にこって笑う。 「そう、ビッグ・ニュースなの」 なんだかリリィの顔は、とっても自慢そうだった。 先生たちのようすで、子どもにはしらせたくないことがあるのは、ぼくにも 分かる。実を言うと、ぼくもそれを知りたくてたまらなかったんだ。 「昨夜の流れ星、あれな、宇宙船かもしれないんだって」 「あーん、あたしがいおうとおもってたのにい」 ほほをふくらませたリリィが、ギニアの背中を、ぱんぱん、って二回たたい た。 でもそれって、ほんとうにビッグ・ニュースだよ! 「あのね、あたしね、あのとき、きょうしつにいたの」 あのとき、っていうのはたぶん、おとなの人たちが話しあいをしていたとき のこと。 リリィは最近、学校にかようようになったばかり。学校が楽しくてしかたな いらしく、いつも一番で来ているよ。兄妹で、いっしょに来ればいいのにね。 「それでね、きょうしつにいたら、せんせいたちのこえがきこえたの」 昨夜の流れ星、小さな宇宙船が「たいきけんとつにゅう」っていうのに失敗 したときの感じとにているんだって。もし、そうだとしたら、たいへんなこと だよ。 ぼくたちの、ううん、お父さんたちのほかにも、地球で生まれた人たちが、 この星に来たのかもれないんだ。 でもぼくたちがそうだったのと同じように、ちゃくりくのしっぱいで、たく さん人が死んでるかも知れないって。もしかしたら、ぼくたちのときより、ひ どいかも知れないって。 そうか、だからドクターもたんけん隊にはいってたんだ。生きてる人がいた ら、きっとおおけがをしてるだろうからね。 「子どももいるのかしら」 シドニーが言った。 そうだね、ともだちがふえるとうれしいな。 「男がいるといいよな」 これはギニアだ。 「あら、どっちだっていいじゃない」 あれ、ロスはちょっと怒ったのかな。 「へへん、女にはわからない、男のあそび、ってのがあるんだよ。な、トキオ」 ぼくはちょっぴりロスに気をつかった、小さくうなづくだけ。でもたしかに、 この村にぼくと同い年の男の子はギニアだけ。男同士のあそびが出来るなかま がふえたらいいよ。 「でも、だれも生きていないかもしれないのよ」 マニラの一言で、ぼくたちはみんな、だまってしまった。 それから、お父さんたちが帰って来るまで、ぼくはおちつかなかった。 村のそと、森にはきけんがいっぱいだからね。お父さんたちがぶじに帰って 来ますようにって、ずっとお祈りしてたよ。 それと新しいともだちが出来たらいいな。どんな子たちなんだろうって、い ろいろ想像したんだ。だけど、宇宙船の人たちは死んでしまったかも知れない。 だれも死んでませんように。 ああ、そうか。それより先に、流れ星が宇宙船だって、きまったわけじゃな いんだ。 とにかく、お父さんたちが帰って来ないと、なんにもはじまらないよ。 「調査隊が戻って来たぞ」 だれかが村じゅう、大声をだしながら走っていく。出発して五日めに、お父 さんたちは帰って来た。 出発のときと同じ。 西の井戸の周りに、村のみんながあつまった。もちろん、ぼくと母さんもね。 たんけん隊にえらばれた人の家族は、優先てきにみんなの前で待てるんだ。 あ、見えてきた、お父さんたち。 みんなが歓声をあげた。とってもにぎやか。 ひい、ふう、みい。 ぼくは見えてきた人のかずをかぞえる。 はなれていたって、お父さんがいるのは分かったけどね。ほかの人たちも、 無事に帰って来たか、かぞえるんだ。 いつ、む、なな。 うん、ちゃんと七人いたよ。 あれ? 七人しかいない。 だって、あの流れ星が宇宙船だったら、帰りは七人よりふえているはずだよ。 ちがったのかな。 みんな、死んでしまったのかな。 そう思って、ぼくとおんなじに一番前で待っていたギニアとロスに話しかけ ようとしたときだ。 喚声がやんだ。 ロスのお父さんとドクターが、くちのところで、指を立てたんだ。 静かに、って合図。 「見て、トキオ。あなたのお父さんの背中」 ひそひそ声のロスに言われて、ぼくはお父さんの背中のほうを見た。 あっ、誰かをおんぶしている。子どもみたいだ。 ぼくたちは、学校に来ている。先生にそうしなさい、って言われたの。 村じゅうのみんな、ぼくのお父さんと先生とドクター以外の人たち、ほとん どみんなが教室にあつまったんだ。 教室はよくおとなの人たちの会議に使われるんだけど、子どもも入れてみん ながあつまるなんて、めずらしい。 いすには子どもと女の人たち。男の人たちは、立っている。それでも教室は いっぱいで、ろうかに立っている人もいる。 お父さんがおんぶしていたのは、女の子だった。たぶん、ぼくたち五人とお なじ歳くらいかな。 その子は眠っていた。だから静かに、って合図したんだね。 いつもは七人だけで、広く感じる教室も、村じゅうの人があつまると、とて もせまく感じる。 七人っていうのは、ぼくたちスペースチャイルドとリリィ、それからロバー トって男の子。 「ひとり、だったね」 一番前の席にすわっていたリリィが、ふりむいて言った。ぼくたちは六人、 近くにすわっていたんだ。ロバートは、はなれたところでお母さんとすわって る。それから、ロスにはリックって弟がいるけど、やっぱりお母さんの近くに いるみたい。 「あの子、地球人なのかしら」 つぶやくみたいに言ったのはマニラだ。目はひらいた本を見ているけれど、 たぶん読んでない。 地球人、ってなんだかぼくたちにはピンとこない。 だってお父さんやお母さんは、地球で生まれた地球人だけど、ぼくたちはち がうもの。あれ、そうだ。あの子、ぼくたちと同じくらいの歳だったよ。それ ならきっと、地球で生まれたんじゃないはずだよ。 そのことを、ぼくが言おうとしたときだった。 「船長だ」 だれかの声。教室のみんなが、しずかになった。 それから少しして、お父さんと先生、それとドクターが教室にはいってきた。 あの子はいない。 「皆さんに事情を説明しましょう」 いつもと同じ。先生のおだやかな声。 先生は、ゆっくり、教室じゅうを見まわした。 「子どもたちには秘密にしていましたが、どうやらすっかりと知れ渡っている ようですね」 そう言って先生は笑った。ぼくは、ううん、ぼくだけじゃなく、ギニアもロ スも、マラらもシドニーも、先生の笑顔がだい好きなんだ。 「あれはもう、六日前になりますか………深夜に大きな流星が見られました」 ギニアが見たやつだ。 「この村で大きな流星がみられたのは、三度目です。ですが、それはいままで のものと少々違いました………ほんの一瞬の出来事ではありましたが、明らか に人工物、即ち、宇宙船の姿を、多くの人々が見たのです」 やっぱり、そうだったんだ。 ぼくは、つばをごくんって、飲みこんだ。 「私たちはまだ、私たちの故郷の星以外に知的生命体の存在を知りません」 いつもは分かりやすい言葉で話してくれる先生なのに、今日はちょっとむず かしいよ。「ちてきせいめいたい」ってなんだろう? 「つまり、言葉を話したり、道具を作ったり、人間みたいな生き物のことよ」 マニラがそっと教えてくれた。 「あるいは私たちと同時に故郷を離れた、何億、何十億の宇宙船のうちの一隻 が、この星に辿り着いたのかも知れない。それを確かめるため、調査隊を出し た訳で」 そこまで言って、先生はお父さんのほうをみた。それから頷いたんだ。そう したら、お父さんは、先生と場所を入れかわった。ここからは、お父さんが話 をするみたい。 「落下地点までは、丸二日、掛かりました」 なんだかお父さん、少しきんちょうしているみたい。あれ、お父さんのきん ちょうが、ぼくにもうつったみたいだよ。 「確かに宇宙船はありました………ただ予想はされましたが、それは大きなも のではなく、大型の宇宙船に搭載された、小型の脱出艇でした」 お父さんは、くちびるをぺろってなめた。 きんちょうのせいじゃなくて、なにか考えているみたい。 「それは直接、人が操縦するタイプではありませんでした。いわゆる、コール ドカプセル搭載機でした」 少し、むずかしい言葉が出てきた。 でもぼくは、ちゃあんとわかったよ。 コールドカプセルっていうのは、人を冬眠させておくきかいのこと。ずうっ と前に先生が教えてくれたんだ。 あれ? ギニアは覚えてないのかな。へんな顔をしているよ。だから今度は ぼくが、そっと教えてあげた。 でも結局、お父さんの話で、あまりくわしいことは分からなかった。 あの女の子ののっていた宇宙船で、なにか大きな事故があったらしいこと。 それであの子だけが、コールドカプセルのついた船で脱出したらしいこと。 きっと、あの子のお父さんとお母さんが、やったんだと思う。 あ、そうそう。あの子はやっぱり地球人なんだって。 ぼくはあたり前のことだと思ったけど。あとでお父さんが言ってた。 宇宙はとっても広いから、べつの星にぼくらたちと同じすがたの人間がいて も、おかしくないんだって。もしかしたら、ここに地球の人が来るより、べつ の星の人が来るかくりつのほうが高いかも知れないんだって。 いまはこれだけしか、分からない。 あの子、まだあんまり話してくれないらしいんだ。 しかたないよね。 きっとこわい思いをしたんだ。まだショックなんだよ。 名前は分かった。 リンダ・ロンジェクトだって。 「関係があるのか、偶然なのか、船体にはロンジェクト・カンパニーのエンブ レムがありました」 お父さんの説明に、おとなの人たちは、おどろいていたみたい。ぼくたちに は、ぜんぜん分からなかったけど。あとで聞いたら、ロンジェクト・カンパニ ーっていうのは、地球にあった大きな会社の名前なんだって。 会社っていうのが、どんなものなのかは知ってるよ。先生に習ったから。 だけどなんで、おとなの人たちがおどろいたのか分からない。だってこの村 に、会社なんて何もないんだもの。 あ、だけどぼくたち、ううん、ぼくをおどろかせることがあったんだ。 それはあの子、リンダを家で預かることになったこと。 預かる、って言ったって、いつか帰っていくわけじゃない。だってリンダの お父さんやお母さんは、ここにいないんだよ。どこかにいるのかも知れないけ ど、リンダは宇宙船で来たんだ。歩いて行けるところじゃないことは、確かで しょ? 分かってるよ。 分かってるんだ。 こんなこと、言っちゃいけないって。 でも……… 最近、ぼくんちは、少し広くなったんだ。たぶん、それがリンダを預かるこ とになった理由。 みんなこの星での生活にはなれたけれど、まだまだ村ではやらなくちゃいけ ないこと、作らなくちゃいけないものがたくんさんある。だから、まだどこの 家も、そんなに大きくないんだ。でもぼくんちは、最近部屋を増やした。お父 さんが、ぼくの部屋を作ってくれたんだ。リンダが来たら、きっとその部屋は ……… ごめんなさい、ぼく悪い子だね。 誰か困っている人がいたら、みんなで助ける。 それが一番の村のルールだもんね。
メールアドレス
パスワード
※書き込みにはメールアドレスの登録が必要です。
まだアドレスを登録してない方はこちらへ
メールアドレス登録
アドレスとパスワードをブラウザに記憶させる
メッセージを削除する
「●長編」一覧
オプション検索
利用者登録
アドレス・ハンドル変更
TOP PAGE