●長編 #0113の修正
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八犬伝第八輯巻第五附録 江戸麻生長坂のほとりなるまみ穴は、いと名だたる地名なれば知らざるものなし。沾凉 が江戸砂子に雌狸穴と書たり。雌狸をマミといふ義は何に拠れるにや、こ丶ろ得がた し。貝原益軒の大和本草には猯をマミとす。 篤信云マミ、ミタヌキトモ云。野猪ニ似小ナリ。形肥テ脂多ク味ヨクシテ野猪ノ如シ。 肉ヤワラカ也。穴居ス。其四足ノ指各五ツ恰如手指。猟師穴ヲフスベテ捕之。行クコト 遅シ。▲(ケモノヘンに灌のツクリ)ハ猯の類ナリ。狗ニ似タリ。並ニ穴居ス。 といへり。又本草網目{五十一獣之二}▲(ケモノヘンに灌のツクリ)の下に、 稲若水和名を剿入れマミとす。李時珍云猯猪(ケモノヘンに灌のツクリ)也。▲(ケモ ノヘンに灌のツクリ)は狗▲(ケモノヘンに灌のツクリ)也。二種相似而略殊。狗▲ (ケモノヘンに灌のツクリ)小狗、尖啄矮足短尾深毛褐色皮可為裘領。 といへり。か丶れども和名をマミといふ獣はなし。益軒若水の二老翁、一は猯をマミと 訓し一は▲(ケモノヘンに灌のツクリ)をマミと読せしは、訛によりて訛を伝ふ世俗の 称呼に従ふものか。今按ずるに▲(ケモノヘンに灌のツクリ)は和名鈔に載せず。猯は 和名ミなり。和名鈔{毛群部}猯の下に、引唐韻云 猯{音端又音旦和名美}似豕而肥者也本草云一名▲(ケモノヘンに灌のツクリ)▲(ケ モノヘンに屯){歓屯二音} といへり。独野必大本朝食鑑に和名鈔を引てをミと読たり。必大云、 猯頭類狸狸状似小猯体肥行遅短足短尾尖啄褐色常穴居時出窃瓜果本邦処処山野有之人多 不食惟言能治水病予昔略見状然未試之則難弁▲(のみ) といへり。これらの諸説を参考るに近来世俗のマミといふ獣はミを訛れるに似たり。是 則猯なり。又田舎児は、これをミタヌキといふ。その面の狸に似たればなり。何まれミ とのみ唱よからぬ故に或はマミといひ或はミタヌキといふにやあらん。か丶れば麻布な るまみ穴も、むかし猯の棲たる余波なるか。遮莫猯は大獣にあらず。よしやその穴あり とても、地方の名に呼ぶべくもおもほえず。且猯をミタヌキと唱るは本づく所あり。是 その頭の狸に似たればなり。又猯をマミと唱るは拠ところなし。何となれば猯に真偽の 二種なければなり。因て再案ずるに麻布なるまみ穴は、元来猯の事にはあらで▲(鼠に 吾)鼠ならんかと思ふよしあり。▲(鼠に吾)は和名モミ、一名ムササビなり。和名鈔 ▲(鼠に吾)鼠の下に引本草云、 ▲(鼠に田みっつ)鼠{上音力水反又力追反}一名▲(鼠に吾)鼠{和名毛美俗云無佐 佐比}兼名苑注云状如▲(ケモノヘンに爰)而肉翼似蝙蝠能従高而下不能従下而上常食 火烟声如小児者也 か丶れば▲(鼠に吾)鼠の和名は毛美なれどもいとふるくよりむさ丶びとのみ唱たるに や。歌にはモミとよみたるものなし。万葉集第三、むさ丶びは木ぬれもとむとあし引の 山のさつをにあひにけるかも、とよめるにて知るべし。しかれども古言は多く田舎に遺 るものなれば昔東国にては▲(鼠に吾)鼠ををさをさ、みみといひしならん。その証は 今も日光山の頭にて▲(鼠吾)鼠の老大なるものをモモングワアトいへり。モモンはモ ミの訛りなり。グワアはそが鳴く声なるべし。さてこの▲(鼠に吾)を下野にては、も 丶んぐわあと唱へ武蔵にてはまみとといへるにやあらん{まみはもみなり。マモ音通へ り}。然らばむかし麻生長坂のほとりには人家もあらで樹立ふかく昼もいと闇かりける 比は▲(鼠に吾)鼠などの栖べき処なり。故にまみ穴の名の遺れるにや。今も世人の小 児を権すになべても丶んぐわあといふなり。▲(鼠に吾)鼠の形はいともいともおそる べきものなればまみ穴の名の高かりけるも{今はこの穴なし}是等によりて思ふべし。 縦その穴に▲(鼠に吾)鼠などの棲たることはあらずとも、いとおそるべき穴なれば土 俗これをもみ穴とも又訛りてまみ穴とも呼なしたるにあらんかし。まみ{即もみなり} は則魔魅にも通ひて是おそるべきの義なり{今もおそるべきものを、も丶んぐわあとい ふがごとし}。猯をまみといふよしは方言なるか知らねども考る所なし{安永七年の夏 両国の頭にて観せたる千年もぐらといふものは即猯なり。予も観たり。▲鼠に偃のツク リ/鼠にはあらず}。然るを若水の▲(ケモノヘンに灌のツクリ)をまみと和訓せし は、猯と▲(ケモノヘンに灌のツクリ)とは似たるものにて共に穴居を做すなれば猯の 和名をミといふに対へて▲(ケモノヘンに灌のツクリ)をまみといふにや。しからずば まみのまはまねにて、猯をまなぶの義なるべし。又愚説の▲(鼠に吾)鼠は鼠類なり。 穴居する物ならずといふとも怕るべきの義に憑らば、この名なしとすべからず。とにも かくにも麻生なる、まみ穴を真名に書ば▲(鼠に田みっつ)鼠に作りて怕るべきの義と なさば妥当なるべし。江戸の地名を誌せるものに、かばかりの考だもなきは遺憾の事な らずや。抑本輯第七巻に、まみ穴の事あれば此に愚考を附録して下帙の引に代るのみ。 天保三年壬辰夏五月中浣 蓑笠漁隠識 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 八犬伝第八輯巻第五口絵 憂邦婦徳 心猿美▲(クサカンムリにルマタ)佞老▲(サンズイにム月)憑駿才 邦を憂う婦徳の心猿(さかし)き。奸を▲(クサカンムリにルマタ/か)るに老▲(サ ンズイにム月/けん)、駿才に憑(たの)む。 河鯉権佐守如かハこひごんのすけもりゆき・蟹目前かなめのまへ 雨をしるけものゝ穴にとしふりて雲なすわさは魔魅のまかわさ (雨を知る獣の穴に年経りて雲なす技は魔魅の禍業) 冠松鬼四郎かむりまつのおにしらう・魔魅穴鵞▲(魚に單)坊まミあなのがぜんばう 猫兒可愛木天蓼柯犬子▲(頼のしたに鳥)看匹夫欺黠豪 ふりわけてささの葉たをれ鈴のもり竹しはのうら遠くなりゆく ▲(頼の下に鳥)斎 (試記・振り分けて篠の葉倒れ鈴の森、竹芝の浦遠くなりゆく) 穂北小才二ほきたのこさいじ・石亀屋嗚呼善いしかめやのをこぜ・氷垣世智介ひかきの せちすけ・仁田山晋五にたやましんご・五十子善悪平いさらこのさぼへい −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第八十三回 「得失地を易て勇士厄に遇ふ 片袖禍を移して賢女独知る」 夏行怒て二犬士を斬んとす なつゆき・おも戸・小才二・現八・せち介・大角 ★此処で夏行の紋は分かりにくい −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第八十四回 「夜泊の孤舟暗に窮士を資く 逆旅の小集妙に郷豪を懲す」 野渡の歇船に現八夜両敵と闘ふ 大角・未詳・現八・未詳 四犬武勇を顕して夏行有種を懲 信乃・河太郎・のら平・大角・道節・現八・なつゆき・ありたね −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第八十五回 「志を傾けて夏行四賢を留む 夢を占して重戸讖兆を説く」 夏行有種四犬士を歓待す なつゆき・おも戸・道節・ありたね・信乃・現八・大角 ★床の間に兎の置物がある。第八十三回で分かりにくかった夏行の紋が、正面揚羽蝶で あることが明らかとなる。重戸の着衣にも、揚羽蝶。揚羽蝶は道節の紋だが、夏行は信 乃の祖父・匠作の弟子。しかし養子・有種の実父は練馬家臣。道節は鯛関東管領戦の後 にも穂北荘のことを気にかける。ただ、信乃の女装は柄が大きな正面揚羽蝶。有種の着 物柄は卍だが、仏教/密教/修験道まで連想すれば、豪荊が浮かんでくるけれども、其 処までは言わない −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第八十六回 「道節再復讐を謀る ヽ大巧に妖賊を滅す」 笠を深くして道節敵城の虚実を覘ふ 道節 あつま路に名をのミうつす水鳥のかものあふひの岡の辺の池 ちゆ大・たね平・しま平 ★試記・東路に名をのみ移す水鳥の鴨の逢う日/葵の岡の辺の池 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第八十七回 「天機を談じて老獣旧洞を惜む 蕉火を照して勇僧猯穴に入る」 二賊を▲(ソウニョウに旱)ふて丶大老翁老婆に遇ふ 風九郎・たね平・しま平・ゑもん二・ちゆ大 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第八十八回 「湯嶋の社頭に才子薬を売る 聖廟の老樹に従者猴を走らす」 湯嶋の社頭に薬賈人坐撃大刀を抜く処 鮒三が越路の物かたり次団太夜奸淫を捉ふ をこぜ・次団太・土丈二・物四郎・ふな三 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第八十九回 「奇功を呈して義侠冤囚を寧す 秘策を詳にして忠款奸佞を鋤く」 夥兵を找めて守如物四郎を搦捕んとす ゐあひ師もの四郎・もりゆき・かねめのうへ ★毛野には天神が似合う 塩浜閻魔堂しほはまのゑんまだう 此ところの本文ハ巻の八の下のはじめに見えたり 帳八・しやくゑもん・ふなむし −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第九十回 「司馬浜に船虫淫を鬻ぐ 閻羅殿に牛鬼賊を劈く」 目前地獄もくぜんのぢごく二兇就戮じけうりくにつく 冥府の鬼四郎が牛鬼・信乃・おバ内・小文吾・道節・ふな虫 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第九十一回 「鈴森に毛野縁連を撃つ 谷山に道節定正を射る」 胤智単身にして大敵を撃つ かまとやすなり・毛野・よりつら
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