●長編 #0109の修正
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八犬伝第五輯序 余常以謂有遊乎世者有為世所遊者遊乎世者適於自所適不適於人所適是以楽在内無竭也為 世所遊者適於人所適不知自所適是以徴其楽於外以自苦焉若狂接与遊于歌詠荘周遊于寓言 左思司馬相如遊于文場杜甫李白遊于詩詞羅貫笠翁遊于伝奇小説雖所遊不同而其楽一致亦 悪踏人之足跡哉蓋鸞鳳不群飛葛藤不独立葛藤也者吾欲払之鸞鳳也者不可得而為友雖然人 世一夢中其所遊非華胥必南柯寤寐在我何遠之有能知是楽而後遊者心之欲与不欲無相不楽 遨乎遊乎余固也久矣今茲端月本編脱藁曁▲(厥にリットウ)人告成即是言為序 文政五年陽月上澣 蓑笠漁隠 余は常(かつ)て謂(おも)えらく、世に遊ぶ者あり、世に遊ばるる所の者あり。世に 遊ぶ者は、自ら適く所に適き、人の適く所に適かず。是を以て楽み、内に在りて竭( つ)きず。世に遊ばるる所の者は、人の適く所に適きて、自ら適く所を知らず。是を以 て、その楽しみを外に徴して以て自ら苦しむ。狂接与の歌詠に遊び、荘周の寓言に遊 び、左思司馬相如の文場に遊び、杜甫李白の詩詞に遊び、羅貫笠翁の伝奇小説に遊ぶが ごとき、遊びは同じからざるといえども、その楽しみは一致す。また悪(いずく)んぞ 人の足跡を踏まんや。けだし鸞鳳は群れ飛ばず、葛藤は独りにては立たず。葛藤なる 者、吾は之を払わんとす。鸞鳳なる者、得て友たるべからず。しかりといえども、人の 世は一夢の中。その遊ぶ所は華胥にあらざれば必ず南柯に寤寐するに我は在り。何の遠 きこと之あらん。よくこの楽しみを知りて後に遊ぶ者は、心の欲すると欲せざると、往 として楽しまざるはなし。遨や遊や、余が固なること久し。今茲(ことし)の端月に本 編は藁を脱しぬ。▲(厥にリットウ)人の成るを告ぐるに曁(およ)びて即(すなわ) ち、この言を序とす。 文政五年陽月上澣 蓑笠漁隠 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 八犬伝第五輯口絵 くしら射る海のさち雄かしらま弓 張りあるこころいさ引て見ん ▲(頼のしたに 鳥)斎 丁田町進・神宮▲(矛に昔)平 ★試記・鯨射る海の幸雄が白真弓、張りある心いざ引いてみん/白真弓は白木の質素な 真弓だが、万葉集二八九「天の原、振り放け見れば白真弓、張りて懸けたり、夜道は佳 けむ」など、引き絞った形から三日月の異称となっている。椿説弓張月も念頭に過ぎっ たか。弓の弦を鳴らすは古代以来いまに続く宮廷に於ける魔払い呪術であるが、「白真 弓」が魔を撃つ場面は江戸人士に馴染みであった。読本「道草」でも触れた「安達ケ 原」である。京に住む公家の乳母が、愛する若君の病を癒すには胎児の生肝が必要だと 教えられ、生肝取りの旅に出る。岩手の安達ケ原に住み着き、旅の宿を乞うた妊婦の腹 を割く。妊婦は、出奔した母を捜していたと打ち明け、死ぬ。妊婦の懐にあった守り袋 は、件の乳母が娘に与えたものであった。我が子の腹を割き惨殺した乳母は、鬼女とな る。いや、若君への妄執を抱き生肝取りを決意した瞬間に既に鬼女となっていたのだ が、もはや後戻りできず真性の鬼女と変じた。何年かして乳母の家に宿を借りた熊野 僧・東光坊祐慶は、乳母の秘密を知ってしまい命を狙われる。逃げ出し、追い詰めら れ、覚悟を決めて背に負っていた荷物から如意輪観音を取り出し祈る。鬼女は眼前まで 迫っている。と、如意輪観音が虚空へと飛び上がる。宙高く、白真弓を引き絞り、鬼女 を射殺した。東光坊は其の地に落ち着いた。天台宗・真弓山観世寺である。熊野は、馬 琴が縁起を書いた九州・両子山と同様に天台修験の一大拠点であった。東光坊も其の名 からして修験者であったようだが、彼の持仏・如意輪観音は、月の化身であったか。空 に懸かる三日月が「白真弓」となって破魔の矢を放ち、鬼女を射抜いたのだ。空想科学 動画にしたって、気の利いた場面である。日本の昔話にはSF顔負けのスペクタル映像 が満載だ 釣竿のいとも直きをあけてみて まかれるをおくはりはしたかへ 玄同▲(クサカ ンムリに合にニジュウアシ) 小厮依介・暴風舵九郎 ★試記・釣り竿の、いとも直きを上げて見て、曲がれるを置く、針はしたかえ/釣り竿 が真っ直ぐだから魚のかかっているわけもないのに上げて見る、逆に曲がっている釣り 竿は置いたまま、全く分かっちゃいないな、ところで、先の糸に針はつけているのか い。悪事を働くわけもない心直き者を邪推し疑い、自分の悪事には無頓着、この様子で は、針を付けていないと魚が釣れぬ道理も分かってはおるまい。舵九郎の性格 おくれしとおもひ おも荷を草まくら 旅ゆく君におひつつあはむ 閑斎 十条尺八郎・単節 ★試記・遅れじと思ひ重荷を草枕、旅行く君に追いつつ逢わん 馬の背をいくともしはし夏の雨ふれや駅路のすすしくそなる 蓑笠隠居 曳手・十条力二郎 ★馬の背を行くとも暫し夏の雨、降れや駅路の涼しくぞなる くもりなきまれひの道煮かがみもて てらしてえらめ人のよしあし 彫窩楼 竈門三宝平・卒川菴八・越杉駄一郎 ★試記・曇りなき稀日の道に鏡もて、照らして選め人の善悪/八犬伝終盤、カーテン コールの如く主要登場人物が口絵に描かれる。そのとき「王佐の器」たる信乃は鏡を持 っている。王のもとには様々な人間が群がる。其れらを、人間関係とか何とかで目を曇 らすことなく明鏡止水、捌くことも「王佐の器」だ。毛野の智は、唯物的な思考で限り ない可能性を生み出す。戦術家の機能だ。信乃の場合は、人間に対する深い洞察を伴う 文系の知性を持っている もみちする秋の野山に松はかりひときはいろのかハらさりけり 著作堂 荘役根五平・音音 ★試記・紅葉する秋の野山に松ばかり、ひときわ色の変わらざりけり/秋が深まり寒々 としていく時の流れの中で、多くの樹木は葉の色を変えてきた。その中で、常緑樹の松 だけは、変わらぬ色を保っている。音音の、変わらぬ心を表している −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第四十一回 「木下闇に妙真依介を訝る 神宮渡に信乃▲(矛に昔)平に遭ふ」 三犬士船を神宮の渡につなぐ ヤス平・犬塚信乃・犬田小文吾・犬飼現八 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第四十二回 「夾剪を▲(テヘンに庶)て犬田進退を決む 額蔵を誣て奸党残毒を逞す」 額蔵を誣て社平等残毒を恣にす いさ川菴八・額蔵・丁田町ノ進・背介・ひがミ社平 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第四十三回 「群小を射て豪傑法場を▲(モンガマエに市)す 義士を渡して侠輔河水に没む」 法場を脇して三犬士額蔵をすくふ 犬飼現八・菴八・五倍二・額蔵・犬田小文吾・犬塚信乃・社平 ★木に吊され救われる荘介は後に、吊された船虫を救う。稗史七則を以て見れば、余り にも気の長い「照応」 戸田河に四犬士ふたたび窮厄を免る 額蔵・現八・信乃・小文吾・町ノ進・尺八・力二郎・ヤス平 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第四十四回 「雷電の社頭に四雋会話す 白井の郊外に孤忠讐を窺ふ」 定正途に近習をして売剣の人を問しむ 扇谷定正・竈門三宝平・妻有六郎・薪六郎助友・松枝十郎・犬山道節 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第四十五回 「名刀を売弄して道節怨を復す 窮寇を追失ふて助友敵を換ふ」 名刀を閃して道節定正を刺す 妻有六郎・竈門三宝平・松枝十郎・犬山道節・扇谷定正 〈英泉画〉 四犬士再厄白井の城兵と戦ふ 現八・信乃・小文吾・荘助・おほた助友 道節月下に父の讐を撃 竈門三宝平・犬山道節 〈英泉画〉 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第四十六回 「地蔵堂に荘助首級を争ふ 山脚村に音音旧夫を拒む」 石塔を斫て荘助道節を走す 姓名未詳・犬川荘助・犬山道節 〈英泉画〉 荒芽山の麓に▲(矛に昔)平旧情婦を訪ふ 音音・ひとよ・ヤス平 〈英泉画〉 ★闇に二つの人魂が浮かんでいる。ヤス平が手にする包みには「杉」の文字。此は道節 が討った越杉駄一郎遠安の首を死骸の袖で刳るんだもの。挿絵では、八犬伝に限らず登 場人物の着衣に姓名の一字を入れて標識とする手法がある。読者は挿絵を見れば、ヤス 平が抱いていた尺八・力二郎の首級が、道節の携えていた荷物と入れ替わっていること を了解する仕懸け −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第四十七回 「荘助三たび道節を試す 双玉交其主に還る」 枯草おのづから燃て山川愕然たり 犬山道節・犬川荘助・音音 ★荘介が点けようとして燃えなかった火だが、埋め火により自然と点火する。暗黒に在 った犬川荘介と犬山道節が三度目の対面、互いに驚く。山川は犬山と犬川。また、「山 /天あま」「川」の組み合わせは、赤穂浪士が討ち入りの際に闇で同士討ちを避けるた め用いた、合い言葉として有名だ。本来なら仲間同士であるのに闇夜、図らずも敵対し てしまった荘介と道節の「愕然」と穿つも興あるか −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第四十八回 「駄馬暗に両夫妻を導く 兄弟悲て二老親を全す」 秋の野への虫にも似たりしづの女のひるは馬おひよるハはたおり ひく手・ひとよ・音音 ★試記・秋の辺の虫にも似たり賤の女の、昼は馬追ひ夜は機織り/暇なく働く女性を示 すか 忠魂義膽既往を話説す ひく手・力二郎・音音・尺八・ひとよ −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第四十九回 「陰鬼陽人肇て判然 節義貞操迭に苦諌す」 陰鬼啾々として冥府に皈る 音音・ひく手・ひとよ・ヤス平 〈英泉画〉 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第五十回 「白頭の情人合▲(丞の下に己)を遂ぐ 青年の孀婦菩提に入る」 樵夫を将て根五平音音等を搦捕んとす 道節・ひく手・ひとよ・音音・ヤス平・根五平・丁六・ぐ助 〈英泉画〉 五犬士一刀に捕手の兵を鏖にす 犬飼現八・犬田小文吾・犬川荘助・犬塚信乃・犬山道節 〈英泉画〉
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