◇フレッシュボイス過去ログ #9172の修正
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・『その可能性はすでに考えた』(井上真偽 講談社ノベルス)18/6561 人里離れた山奥で村を形成し、三十三名で暮らしていた新興宗教団体「血の贖い」。 教団は首の切り落としによる集団自決で終焉を迎えるが、唯一生き残った少女はある違 和感を抱えたまま、育った。そして十数年後、その少女――渡良瀬莉世は、青髪の探 偵・上苙丞のもとを訪ね、依頼を出す。曰く、宗教団体の村でともに暮らしていた少年 が、集団自決の際、少女を助けるために、自らは首を切り落とされたあと、少女を抱き かかえて運んだのではないか、というもの。そんなことはあり得ないとすると、今度は 莉世が少年を殺したことになってしまう。 この依頼を聞いた上苙は、欣喜雀躍して宣言する。「これは奇蹟です」と。上苙は、 奇蹟が存在することの証明に生涯をかけている探偵なのだった。上苙は、ありとあらゆ るトリックの可能性を退け、奇蹟が存在することを証明できるのか? ある意味、一周回ってきた上での本格ミステリの極致と言えなくもなし。私は好きで す、この趣向。奇蹟を調査・鑑定するミステリは今までに何作かありましたが、本作は (主役の)探偵の役目をひっくり返して、奇蹟の存在を証明することを目的としたの は、ユニークで面白い。 話の流れは、事件の詳細を聞いた上で奇蹟であることに確信を持った上苙に対し、奇 蹟ではないことを示そうとする探偵が順に現れては、勝負を挑んでくる形が取られてお り、少年漫画かブルース・リーの映画を連想してしまいました。 終盤に入って、ごちゃごちゃしてきて、物語を畳むために多少の無理を通さねばなら なくなりますが、キャラクター小説の側面もあることですし、あり得べきエンディング に向けての調整と見なせば、まあ仕方ないでしょう。点数は甘めになりましたが、この 発想は買いますし、発想を小説の形に結実させた力に感嘆させられたのも確か。一読の 価値ありです。 ではでは。
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