#693/1159 ●連載
★タイトル (sab ) 09/03/28 07:43 ( 17)
She's Leaving Home 乾物が食べられない ぴんちょ
★内容
それから一週間ぐらいした或る日、
教室でふと阿部君を見ると何かの新書を読んでいるので、
何を読んでんだろうと思って目を凝らしたら
「スルメを見てイカがわかるか! 養老孟司」
という本で、それを見た瞬間に、
スルメ、かんぴょう、しいたけ、こんぶ、切干大根、
などの乾物がダメになった。
イカは元々ダメだったのでスルメはダメだったのだが、
スルメが人体の不思議展の標本の皮膚を連想させて、
乾物が全部ダメになった。
さすがに焦ってきて、首筋から背中にかけてぞくぞくしてきた。
このまま食べられるものがなくなってしまうんじゃなかろうか。
お母さんになんて言ったいいのか分からなかったが、ただ「昆布嫌いになった」
とだけ言ったら出汁はお揚げから取ってくれた。
つづく
#694/1159 ●連載 *** コメント #693 ***
★タイトル (sab ) 09/03/28 07:43 ( 13)
She's Leaving Home 生野菜が食べられない ぴんちょ
★内容
それから一週間ぐらいした或る日、
家でテレビを見ていたら、
菊池桃子が冷蔵庫のCMで「野菜は生きているのよ〜」と叫んでいて、
えっ、野菜って生きているの?
生きたまま食べるなんて出来ない。
どれぐらいの大きさにまで刻めば死ぬんだろうか。
関西の方で「ど根性大根」というのが話題になっていた。
舗道のアスファルトの隙間からど根性で生えてきた大根。
あれはすごく小さな欠片から生き返ったんじゃないのか。
大根おろしは死んでいるのだろうか。
でも結局、生野菜も果物もジュースもダメになってしまった。
つづく。
#695/1159 ●連載 *** コメント #694 ***
★タイトル (sab ) 09/03/28 07:44 ( 56)
She's Leaving Home 卵も牛乳もダメになった ぴんちょ
★内容
それから一週間ぐらいした或る日曜日の夕方、
私しか居ない時に誰かが玄関のチャイムを鳴らした。
魚眼レンズから覗くと真面目そうな若い男が見えた。
「どなたですかぁ」
「聖書の言葉についてお伝えしている者なんですけど」
「そういうの、いいです」
「ほんの少しでいいんですけど」
「興味ありませんから」
と言ってからはっとして玄関を開けた。「エホバですか」
「それとはちょっと違うんですけど」
「なーんだ」
「どうしてです?」と男が言った。
「エホバって輸血しちゃいけないとか血を食べちゃいけないとかいうから
なんでかなーと思って」
「私たちもそういう教えなんですよ」
「そうなんですか」
「ほら。ここに書いてあるでしょ」と言うと男は聖書を開いて見せた。
「偶像に汚されたものと、淫行と、絞め殺したものと、血とを避けなさい」
「ふーん。私、血と肉を一緒に食べたらいけない、とか、
牛乳と肉と一緒に食べたらいけないとか聞いた記憶があるんですけど」
「それはユダヤ教ですよ。ユダヤの教えでヤギを乳で煮てはいけない、
というのがあるんです。だからクリームシチューもダメ。
ステーキにバターをのせるのもダメ」
「親子丼はどうなんですかねえ。子持ちシシャモとか」
「それは分からないけれども、チーズバーガーはダメらしいですよ。
パンもベーグルらしいです」
「お兄さん達はチーズバーガー食べるんですか?」
「勿論」
「輸血はなんでダメなの?」
「目的にかなっていないからですよ」
「口の中切って血が出たらどうするんですか?」
「血がダメなわけじゃなくて目的にかなっていないのがダメなんですよ。
例えば牛乳だって元々は血から出来ていますよねえ。
でも目的にかなっているから摂ってもいいんです。
卵だって無精卵ならいいんですよ。有精卵だと雛になりますからね。
フィリピンの方に雛になりかけの卵をゆで卵にする料理がありますけれども、
ああいうのはダメですね」
という訳で、乳製品は血から出来ているからダメ、
プロティンもパンも乳製品を含むのでダメ、
卵は雛を連想するからダメになった。
この段階になると食べられるものの方が少ない感じ。
現状で食べられるものは、
あんこ
チョコ
ナンとかベーグル
そば
うどん
しょうゆ
塩
煮た野菜
豆類。豆腐。湯葉。ゴマ豆腐。
つづく