#3166/9229 ◇フレッシュボイス過去ログ
★タイトル (AZA ) 05/12/15 18:20 ( 32)
本の感想>『扉は閉ざされたまま』 永山
★内容
・『扉は閉ざされたまま』(石持浅海 祥伝社ノンノベル)18/6552
東京の高級ペンションにて、大学の同窓会が久しぶりに開かれることになり、
七人が集まる。その内の一人、伏見は一つ下の後輩・新山の殺害を決意し、実
行に移した。綿密な計画に基づき、密室内での事故死を作り上げると、素知ら
ぬ顔で他の五人と接する伏見。
やがて、姿を見せない新山を心配する声が持ち上がり、何度か部屋を訪ねる
が、返事はない。眠り薬の効果で熟睡しているのだろうと楽観視されていたが、
時間の経過とともに、より深刻な事態ではないかという懸念が生じる。だが、
合鍵はなく、高級ペンション故に扉を傷つけることもおいそれとはできない。
窓を破るにしても、セキュリティシステムが作動しているため、室内の新山に
緊急事態が確実に起きていると信じられない限り、行動には移せないでいた。
そんな中、現役院生の優佳だけは、積極的に疑問を呈し、部屋を見ることを主
張する。
犯人と探偵役の息詰まる頭脳戦が繰り広げられる、新しい密室ミステリ。
昔、同じようなことを考えました。扉の下から赤い液体が流れ出て、血溜ま
りが徐々に大きくなっていく。呼び掛けても中にいるはずの人物から返事はな
く、扉は施錠され、開けることも破ることもならない。開けられない密室殺人
……といった状況だけ作ったが、ネタとしては何も浮かばなかった。
本書は、少し趣は異なりますが、“開けられない密室殺人”をテーマとし、
見事な解を与えています。密室ミステリの新たなありようを示したとさえ、言
えるかもしれません(どの程度のバリエーションを持つのかは不明ですが)。
ミステリとはこんなこともできるんだなあ、と感心させられました。
とは言え、パターンとしては心理的閉鎖状況下での倒叙ミステリであり、密
室トリックに期待して読むのは間違い。密室の必然性と論理展開を楽しむ作品
です。それに付随して、動機の謎もあります(余談。本書にやられっ放しの私
が唯一、動機だけは早い段階で完璧に分かった。えっへん。でも外れていたら
自作に使えると思っていただけに、残念)。閉鎖状況の工夫も見所です。
フェアに描かれているので、じっくりと取り組めば、作者の意図を全て汲み
取ることも可能でしょう。
ではでは。
#8386/9229 ◇フレッシュボイス過去ログ *** コメント #3166 ***
★タイトル (AZA ) 14/12/30 21:58 ( 25)
本の感想>『人面屋敷の惨劇』 永山
★内容
その前に。
一応、お題募集中!
本の感想>『人面屋敷の惨劇』(石持浅海 講談社ノベルス)12/4341
幼児連続失踪事件から十年。当時、有力容疑者とされながらも証拠不十分と
して嫌疑を逃れた投資家・土佐の家、通称「人面屋敷」を被害者家族の六人が
訪ねる。取材名目で乗り込み、屋敷の中を捜索するためだ。しかし、土佐は余
裕綽々で、子供達も見付からない。ただ、土佐が描いたという子供らのイラス
トが出て来た。それをきっかけに、殺意を募らせた被害者家族の一人が、土佐
を刺し殺してしまう。ちょうどそのとき、一人の美少女が現れた。土佐を「お
父さん」と呼ぶ彼女は一体? 謎の少女と被害者家族達の心理戦が展開される
中、新たな事件が発生する。
変わったミステリだなーというのが第一印象です。いい意味でも悪い意味で
も、どこへ着地するか分からない。そういう作品であるせいか、謎の焦点がや
やぼやけている感もありました。
また、物語を成り立たせるために、登場人物にかなり無理のある振る舞いを
させていると思いました。出来の悪いコントか不条理劇を観ているかのような、
据わりの悪さを覚えたです。
ただ、この作者の、閉鎖状況を作り出すための工夫は、見るべきものがあり
ます。本作もそうですが、色々なパターンを編み出している。その意欲は充分
に買いです。一部で、論理ならぬ倫理のアクロバットと評される作者独特の展
開もユニークで、そういうのが肌に合う読者なら面白く読めるでしょう。
ではでは。