#7347/9229 ◇フレッシュボイス過去ログ
★タイトル (AZA ) 12/09/17 21:55 ( 30)
本の感想>『京都魔界伝説の女 魔界百物語1 』 永山
★内容
・『京都魔界伝説の女 魔界百物語1 』(吉村達也 光文社ノベルス)
12/3441
※粗筋は裏表紙折り返しより引用
雷鳴轟く京の都を高台から見下ろすひとりの人物――
その手には、完成年代及び著者ともに不詳の悪魔の書
『陰陽大観』が携えられていた。その冒頭の一行は、
《魔界は天に在らず、地に在らず、人の心に在り》
人の心に悪魔を運ぶことを使命と信じ、殺人者を生み
出す快感に最大の生きがいを覚える狂気の伝道師QAZ。
謎のコードネームを持つ人物が仕掛けた第一の大罪は、
京都魔界伝説の地を舞台に、前代未聞のバラバラ殺人。
人間の左手とぬいぐるみのサルの左手が、同じ場所から
見つかった! 悪魔の挑戦を受けて立つのは、東京から
京都へ活動拠点を移したばかりの精神分析医・氷室想介。
作者ライフワークの全百巻シリーズがいま始まった!
亡くなった直後ホームページにてメッセージを発したことで知られた作者の、
ライフワークとされた魔界百物語。その第一弾を読んでみました。手に取ると
まずその分厚さに怯みそうになります。が、読み始めると、リーダビリティは
なかなかのもので、さくさく進む。かなりの部分、観光案内的な情報紹介に費
やしているためもあるでしょうが、その紹介の仕方自体が上手でないと、こう
まで読み易くはならない訳で。
ミステリとしては、途中まではいいんだけど、犯人サイドの視点が出て来て、
長々と絡繰りを説明調で語る部分から失速。最終的には探偵役が一応、推理で
解決するのだから、犯人側の視点はもっと短くすべきだったと思う。それでも
まあ、大きな逆転が用意されていたことを評価し、及第点を出せる出来映えで
した。
この調子で百巻まで出すつもりだったという企画力には恐れ入ります。
ではでは。
#7366/9229 ◇フレッシュボイス過去ログ *** コメント #7347 ***
★タイトル (AZA ) 12/10/02 22:01 ( 26)
本の感想>『平安楽土の殺人 魔界百物語2 』 永山
★内容
・『平安楽土の殺人 魔界百物語2 』(吉村達也 光文社ノベルス)
10/4330
十七歳のとき、青井紗英子は自宅に侵入してきた男
に両親を惨殺され、ひとり生き延びた。傷ついた心を
癒すため、彼女は自らカウンセラーとなる道を進むが、
三十年後、両親殺しの犯人としか思えない男から相談
を受けた。過去のひどい過ちで心が壊れそうです、と。
恐怖におののく紗英子は、尊敬する氷室想介に相談
するが、ほどなく彼女は惨殺体で見つかった。
田丸警部らは容疑者を絞り込む。幻の城、安土城を
模した豪邸を建て、己を信長の生まれ変わりと称する
ノンバンク社長。だが、彼には堅固なアリバイが。
百巻まで続く予定だった魔界百物語の第二弾。第一弾に比べると、本が薄く
なった。内容の方もそれに合わせて、やや薄味に。
着想は悪くない。上記の粗筋紹介は本書のカバー折り返しから書き写したも
のですが、本編読了後にこれを読み返すと、非常に巧みであるし、こういう書
き方をせざるを得ないと分かる。
ただ、その着想を活かし切っていない感が強かった。前半の、読んでいて気
分が悪くような過去の事件の話に比して、重要人物の登場(作中で動くという
意味で)が遅く、造形が書き割りみたいに薄っぺらく感じる。後半は淡々と進
む中、いつの間にか解決した形になっており、物足りない。この解決まで流れ
を工夫すれば、きれいな裏返しを示すことでカタルシスを読者に与えられたん
じゃないかな。惜しい作品。
ではでは。