AWC アルツハイマーに思う       泰彦



#4130/9229 ◇フレッシュボイス過去ログ
★タイトル (BWM     )  07/05/18  08:01  ( 93)
アルツハイマーに思う       泰彦
★内容
 いや、最近物忘れが激しくて、という話ではありません。(確かに最近うっかりするこ
とが多くて困っていますが) 


 今日息子を保育園に迎えに行った帰り、唐突に60歳前後とおぼしき女性に声をかけら
れました。(娘は半休を取った妻が昼過ぎに回収済み) 

「すみません、私、どうしたんですかねぇ?」 

 目が点になる私。何が言いたいのかつかめなくて相手の出方を見守っていると、駐車
場に止めてある車の方を見ながら 

「車、どうしちゃったんですかねぇ?」 

 息子連れだったこともあって、正直見切りを付けて家に帰ろうかと思いました。風体
もやや浮浪者に近い印象だったし。ですが、真剣に困っていそうだったので話を聞いて
みました。道に迷ったようだったので、要は「あっちの方です」と言えばそれで終わる
と思ったので。 

 しかし女性の口から出てきたのは 

「私、アルツハイマーみたいなんですよ」 

という衝撃の言葉。 
 ドキュメンタリー番組が好きなので知識だけはある(つもり)のですが、さすがにアル
ツハイマーの人を目の当たりにするのは初めてなので内心たじろぎました。 

 会話して分かったのは 

・アルツハイマーである 
・宣告された時は目の前が真っ白になった 
・住所は言える (が、私の方が場所を特定出来ない……) 
・どちらから来たのか分からない 
・過去にも帰れなくなって交番に世話になったことがある 
・交番に世話になると、家族はいい顔をしない 

 とは言え私がその住所へ連れて行くことが出来ないので、「帰れないで一晩中さまよ
ったりするくらいなら、交番にお世話になってでもちゃんと帰宅した方がいいですよ。
お巡りさんはそれもお仕事なんですから」と言って、徒歩5分強の場所にある駐在所へ行
くことに。 

 道中、黙々と歩くのも何なのであれこれ話をしたのですが、 

・アルツハイマーになってから、急に家族がよそよそしくなった 
・来客があっても「おまえはいい」と言われる 
・家族が自分に何もさせないようにする 

 話していて思ったのは、「アルツハイマーの進行は止められないが、進行を少しでも
遅らせる方法があるはず」ということ。この人の言うように「何もさせない(心配だから
 / 面倒だから)」という方向に行くとますます進行してしまうのではないかと。 
 確かにずっと目を配っているのは、周囲の人にとってはかなりの負担です。けれど普
通の人と同じように身の回りのことを行い、一人では無理でも外出して刺激を受けるこ
とで多少なりとも進行が抑えられるのではないかと思いました。(この辺、無知故の発言
ですが) 
 孤立させるのは最も良くないことだと思います。 

 どうやらこの女性は、家族が外出するので「自分も連れて行ってもらえるのかな」と
思っていたら、自分を待たずに家族の車が行ってしまい、そのままふらふら歩いていた
とのこと。だから最初に車の話をしたのか、と納得。 

 交番に到着してみると、人がいない。「ご用の場合はこちらへ」と電話番号が書いて
あったので携帯でかけてみると、最寄りの警察署へつながりました。 
 そこで事情を説明すると、警察の人が駐在所まで来てくれることに。電話の相手がや
や面倒くさそうな口調だったのに引っかかりましたが、車(普通の乗用車だった。覆面パ
トカー?)で来たのは親切そうな人だったので安心。 

 そこで女性を引き渡して、私と息子は帰宅。息子は文句もわがままも言わずにじっと
待っていて実に偉かったです。 

 この女性は発症してからまだそれほど経っていないのか、会話を交わしているとごく
普通の人でした。やや「思い出す」という行為が苦手な様子はありましたが、様々なこ
とを覚えていました。 
 ただ、さすがに自分がアルツハイマーという事(そしてそれに伴う家族の態度の変化)
にショックを受けているようで、かわいそうなほど自分に自信がない様子。 

 今回は赤の他人と言うことで派出所へ連れて行くだけで済みましたが、「もし自分の
親がそうなったら」と思うと急に心配になってきました。果たして今日のように自然に
接することが出来るだろうか。イライラして怒りをぶつけてしまったり、無視してしま
ったりしないだろうか、と。 
 あるいは遠い(若年性ならそう遠くない)未来に自分がアルツハイマーになったら、人
に迷惑を与えないように行動出来るだろうか、と。 

 「知っているつもり」と「知っている」の間には、かなりの距離があることを痛感さ
せられた出来事でした。 

 ちなみに夜22時過ぎに警察の方から電話があって、無事に送り届けたとのこと。何よ
りでした。(警察のお世話になったので、家族からまた何か言われてしまうのかもしれな
いけれど) 


 さて、今日はこれから息子の遠足。親も同行します。

篠原 泰彦




#4131/9229 ◇フレッシュボイス過去ログ    *** コメント #4130 ***
★タイトル (yiu     )  07/05/18  16:45  ( 70)
アルツハイマー   shura
★内容
はじめまして、でしょうか。
数ヶ月前にAWCに加えていただきました、shuraと申します。
横から失礼いたします。
わたしにも身内にアルツハイマーの者(女性です)がおりまして、思わず読ませていた
だきました。
わたし自身、若年性アルツハイマーを自ら疑うほど見事な忘れっぷりを発揮しているの
で、それもあって、拝読した記事は大変興味深いものでありました。
わたしどもの方は症状が少々重く、当人からはもはや(その人の心への影響も考え)ア
ルツハイマーであるという現状に対する彼女の意見を伺える状況ではないので、実際に
アルツハイマーでいらっしゃる方の心情というのは想像するしかなかったのですが、記
事を読んで、間接的にではありますが、ああこういうことを思われるのか、と。思いま
した。
また、アルツハイマーの患者(患者と言っていいのでしょうか……)と少なからず関わ
る身として、このお話にあった女性のご家族が抱えてらっしゃる思いも判らなくもなく
……いろいろと考えさせられた次第です。
「家族が自分に何もさせないようにする 」というのは感じているだろうなと、彼女の現
状を考え、思い当たりました。
実際、わたしどもは彼女にはできるだけ何もさせないようにしてしまっています。
家事一つとっても、やはりその能力に不安を覚えるからではありますが、それが彼女に
とって良いことかどうかは、正直判りません。
最後まできちんとできなくても、やっていただくのが良いのか、毎日その後始末をする
ことを考えるとしてもらうだけ無駄であると判断し、初めから何もしないでいただくの
が良いのか、難しいところであります。
ただわたしも思うのは、孤立してしまうことが一番症状を悪化させるだろうということ
です。
人との付き合いは、良くも悪くも刺激になります。
篠原様がお会いになった方は、自分から外へ出て行かれる、外出を厭わない方のようで
すから、人との刺激は症状にとって良いものとなると思います。
逆にわたしの身内のような、好んで外へ出て行こうとしない方の場合、刺激や変化は症
状を悪化させてしまう場合もあります。
刺激は混乱につながりますので。
しかし、それでも一人でいることは、自分がすべてになってしまうわけですから、好ま
しくない状況であると思います。
わたし自身も一人暮らしをしていると、他者への配慮に激しく欠くことがあり、それに
気づいて愕然とします(ただ単に自分が元来自己中心的な思考の持ち主であるというこ
とも考えられますが……)。
一人でいることは気楽ではあるものの、少なからず自分を基準に考えてしまうように思
うのです。
ですから、そのあたりのバランスも難しいなと思いました。
ずっとついているわけにはいかない、でも、一人にもできない。難しいです。
また、わたし個人の経験から言えば、自分の現状を認めた上でも、周りの”本当の”理
解が欲しいと思いますね。
わたしは、一度だけですが、家から一番近い郵便局への道が判らなくて途方に暮れたこ
とがあります。
いつも郵便局に用がある時はそこへ行くし、月に一度くらいはそこへ行っていたのに、
その時ばかりはどうしても道が判らなかったのです。
歩いて五分くらいなのに、十五分くらいさまよって、ようやくたどり着きました。
帰りはすんなり帰れたんですが、さすがに自分の脳に疑いを持ちました。
忘れた、というのとは少し違う感じがするのです。
判らない、というのが一番近い。
思い出せそうで思い出せないというのではなく、本当に、記憶がなくなって、真っ白に
なって、判らなくなります。
ショックというよりは、たまげた、というのがわたしの感情でしたが。
本当にびっくりしました。
そのことを人に話したんですが、ことごとく「疲れているだけ」「その時だけだったん
だし、大丈夫」と言われ(アルツハイマーの彼女にも、彼女なら判ってくれるだろうと
思ったのに「若いんだから心配ない」と言われ、ショックでした)、我ながら「いや、
あれはさすがにやばいだろう」と不満に思ったものです。
「それ危ないよ、医者に行った方が良くない?」とただ一人言った方がいて、その言葉
に何故かほっとしました。
何となく、わたしの現状を認めてもらえた気がしたのかもしれません。
……まあ、その後は再びそういうこともなく、結局医者には行かなかったのですが。せ
っかく言っていただいたのに、甲斐のない人間です。

……何やら勢いだけで長々と取りとめもないことを書いてしまいましたが、改めていろ
いろと考え、得るところがあったように思います。
ありがとうございました。

最後になりましたが、息子さんの遠足が楽しいものになりますよう、お祈りいたしま
す。




「◇フレッシュボイス過去ログ」一覧 shuraの作品 shuraのホームページ
             


オプション検索 利用者登録 アドレス・ハンドル変更
TOP PAGE