AWC 「R.N.S.」<プロローグ4> Fon.


        
#1001/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (DGJ     )  88/ 5/ 9  18: 9  (100)
「R.N.S.」<プロローグ4> Fon.
★内容
 「Rpg.Novel.Story.」<プロローグ4>  by 尉崎 翻

「しっかし‥‥‥」
 レナが水で冷やしたタオルをギュッと両手で絞りダグのおでこへ置く。
「ああ見事に正面衝突してよく生きてたわね。あなたホントに人間?」
「あのな‥‥」ダグがおでこのタオルを右手でとりガバッと起きあがる。
「もっと、他に言うことはないのか!?」
「ないわ」
「‥‥そう、あっさりと言われても困るが」
 場所は、部屋は違っているが先程の宿。時間は少したっている。
 ティスタの放った椅子の直撃をうけたダグがベッドの上に横たわっている。
 その周りにレナ、リクト、そしてティスタも集まっていた。
 チラリとダグかティスタを見る。
「ったく。命の恩人に椅子を投げるとはね。どーゆー育ちをしてきたんだか‥‥」
「ちょいまち」
 と、ティスタ。
「念のために言っておくけどね。あたしは一っ言も『助けて下さい』などと言っち
ゃいないんだから! あなたが勝手に助けただけじゃない!」
「なんだと!? あの時、俺が助けていなかったらお前なんぞ、今頃人買いに売り
とばされてるか、南港に浮いてるはずだったんだぞ!」
「ばか言わないでよ! あたしはそんなドジじゃない! あなたが助けなくたって
あんなゴロツキの一人や二人!気絶してたってやっつけられるわ!」
「むちゃくちゃいうな!夢遊病じゃあるまいし、そんな起用なことできるか」
「夢遊病をなめちゃいけないわ! 夢遊病者の戦士に殺された人だっているんです
からね!」
「どこに?」
「‥‥‥どっかに。 世界は広いんだから」
「あのな‥‥‥」
「‥‥‥なによ、それじゃ世界は十歩歩いたら果てにつくくらい、狭いっての?」
「いや、そーゆーもんだいじゃ」
「どーゆー問題なのよ」
「はい、ストップ」
 レナが横からティスタ、ダグの間に割り込んだ。
「そのままで討論が突き進むと永遠に続きそうな気がするから」
「いい判断だレナ」
 と、これはリクト。自分の剣を腰につけ荷物を持ち上げていた。
「でしょ?」
 レナが答える。同時に部屋の中の荷物を一つにまとめている。
「おいしょっと!」
 ダグがベッドから降りて自分の装備を整えてはじめた。
 ティスタの目の前で着々と物事が進んでる。
「‥‥‥?」
 ポケッとティスタは訳が判らずその場につっ立っている。
 間を置いてティスタに向かって物体が投げ向けられた。
「わっ!」
 反射的にティスタはそれを受け止める。
「あなたの荷物でしょ?それ」
 見れば間違いない。ズタ袋に入った荷物だ。同時に装備品も横にある。
「‥‥あの。 いったい‥‥‥?」
「あなたも早く装備しちゃったら? そろそろよ」
「へっ? そろそろっていったいなに‥‥‥‥」
 ティスタの言葉はそこで遮られた。ダグが横からティスタに飛びかかり床に押し
倒したのである。
 完全にティスタがダグの下になった。身体がピッタリくっついて顔と顔が10c
mと離れていない。
「うわっ! な、なにするのよっ!!」
 ポカポカと両手でダグの頭を叩く。瞬後、長細い音と共に部屋の窓ガラスが粉々
に割れ爆音が炸裂した。
 レナ、リクトは既に部屋のドアを開けはなち、外へ飛び出している。
「二度もの命の恩人にそーゆー態度はないんじゃない?」
「な、なんなのよ、これは!?」
 見れば部屋の中は廃墟と化していた。あのままの体勢で立っていればティスタは
かすり傷程度ではすまなかったことは一目で判る。
「昨夜のチンピラさ」と、ダグ。「昨日の仕返しにやってきたらしい」
「だって、今、真っ昼間よ!?」
「ここら辺じゃ有名な組織の下っ端らしい。ながびかせなきゃ、どうにでも始末が
つくってもんだ。「「「とはいっても、チンピラはチンピラ。腕はたいしたこたー
ない。でもあれくらいの気配に気付かなかったのかい?」
 なめちゃいけない。ティスタも一応、立派な戦士だ。今ならハッキリと敵の気配
が五感から感じとれる。
「‥‥レズの色情狂と、伊達男と、妙におつけがましい痴漢に囲まれて、敵の気配
が感じとれると思う?」
「はっ、そのセリフの答えは後でたっぷり教えてやるよ。とりあえず今は敵から逃
れるか、反撃するかだ」
「そのようね」
 第二弾の爆薬は部屋に投げ込まれてこないようだ。
 敵がレナとリクトが外へ飛び出したのを察知したのか「「「「
 そとで剣と剣がぶつかり合う音がしていた。おそらくリクトであろう。
「「「「「ちょっと」
「なんだ?」
「いつまでこのままでいるつもり?」
 ティスタの上にダグがいる態勢がまだ続いていた。
「さぁ‥‥‥?」
「ちょっと!態勢変えなさいよ!」
「こういう風に?」
 ダグが顔をティスタに寄せ始めた。8cm、6cm 5、4、3、2‥‥‥
「違う!!! さっさとどきなさいよ!重くてしょうがないでしょ!!」
 ティスタはとっととダグを突き飛ばしたいのだが。ダグが『固め技』をご丁寧に
も決めてるらしくまったく起きあがれない。
「俺は平気なんだがなぁ、気持ちいいし。いっそのこと一生このままでいない?」
 とぼけた顔でダグがセリフを吐く。
 そのセリフに答えるべく。ティスタは目を細めて少しニコッと笑った。
「この、へんたぁ〜い!!!!!」
 バコーーーーーーーッと、ティスタの左フックがダグの左顎に見事に決まった。
反動でダグは壁に叩きつけられる。起き上がれば既にティスタは荷物ごとドアから
外へ駆け出していた。
 ダグは首を左右に曲げてコキッコキッと鳴らしつぶやいた。
「おれの固め技から抜け出すとは。あの娘。たいしたもんだ」
 そして自分の荷物を持ち急ぎ足で外へ向かった。
                                <つづく>




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