AWC トゥウィンズ・1 十章 (5/5) (34/34)


        
#908/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (VLE     )  88/ 3/11  21:59  ( 52)
トゥウィンズ・1 十章  (5/5)  (34/34)
★内容
 ヘラの手が、ふわりと動く。と、白い柔らかなやさしい光の一角がスウッと開
いて、そこには、先刻までいたお城の全景が見えた。そして、そこに見えたのは、
既に争いもなく平和が戻っている光景だった。
 ソーラ王とプラネット公が、そして周りにはソーラ王とプラネット公の連合軍
が並び、その前にはディモスとマース侯、それにマース侯の息のかかった貴族達
が土下座をしていた。
 セレナ姫とマイア姫は、ちょっと離れた所から、上を見上げている。
「どういうことですか?」
 一美がたずねる。
「今まで敵同士だったもの同士が和解したのです。そなた達も、四人目の悪魔ま
では倒した覚えがあるでしょう。ところが実は、五人目の悪魔というのは、それ
までの悪魔を違って実体がなかったのですよ。その正体は、人々の心の中に巣喰
い、結果的に世の中を破滅に導こうとしていた人々の心の中の欲望だったのです。」
 ヘラは、そこで一息つくと、
「それが、そなた達の力によって人々の心の中から浄化され、消え去ったのです。
ごらんなさい。今は平和が蘇っています。そして、最後の悪魔を知らず知らずの
うちに消し去った、そなた達は、晴れて元の場所に戻れるということになったの
です。」
 僕達は、顔を見合わせる。ヘラは言葉を続ける。
「役目の終った四個の玉は、私の手に回収しておきます。あと、そなた達の荷物
は一緒に元の世界に一緒に送ります。私は、また占い師としてプラネット公のと
ころに戻り、悪魔が復活しないよう、しばらくは世の中の様子を見守っていかな
くてはなりません。」
「マイア姫とセレナ姫は?」
「大丈夫。あの二人は私が陰ながら見守ります。心配はいりませんよ。では、お
別れです。そなた達も元の世界で頑張るように。」
 その言葉が終わると共に、白くやさしい光は収縮していき、その中心にいたヘ
ラ自身の姿も見えなくなった。最後には見ていられないほど眩しい点となり、次
の瞬間には、それも消えていた。
 そして、辺りは、白く薄暗い、霧がかかったような状態になってしまった。
 しばらくの間、ボケッとしたまま、四人で立ちすくんでいた(僕は健司に背負
われたままだった)が、このままではラチがあかないので、仕方なく適当な方向
を目指して歩き始めた。
 と、ほんの数歩も歩かないうちに、皆、バランスを失って、転びそうになった。
 そして、その次の瞬間、足元から吸い込まれるような感じがして、目の前が真
っ暗になっていき、遥か彼方に灯のようなものが見えた。
 もはや、前に進んでいるのか、それとも落下しているのか、全然判らない状態
だったけど、必死になって、その灯を目指して近づいていった。
 その灯が目の前に来たとき、僕達は一瞬呆然とした。
 だって、灯だと思っていたのは、実は単なる穴で、そこが明るいのは、その穴
の向こうから光が届いてきていたからなんだ。そして、その穴の向こうに見えた
のは……僕の下宿の部屋だった。
 僕達は互いに顔を見合わせると、順番に、その穴に飛び込んだ。
「きゃん。」
「わっ!」
「うっ!」
「いてえ!」
 その穴に飛び込んだ途端、強い痛みのようなショックを感じて、皆、気絶して
しまった。
 そして、その場所は、もう既に僕の部屋だった。

−−−− トゥウィンズ・1 終わり −−−−




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