AWC トゥウィンズ・1 六章 (3/3) (19/34)


        
#891/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (VLE     )  88/ 3/ 9  20:10  ( 61)
トゥウィンズ・1 六章  (3/3)  (19/34)
★内容
 ディモスがこちらに向かって歩いてくる。僕の足も勝手に動いていって、部屋
の半ばでディモスと向き合う格好になる。
「博美、嘘でしょう? なんとか言ってよ。ねえ、博美!」
 一美の叫び声が聞こえる。でも、なぜか一美の方に向くことができないし、話
すことさえ、ままならない。
 ディモスと二人で部屋の正面に向くと、その壮大なステンドグラスの下、牧師
らしい人が片手を軽く上げる。
 しばらくの間、牧師らしい人が、何やら話をしていたが、そのうち目の前に指
輪が運ばれてきた。
 意識では、非常にヤバいと思ってるんだけど、体がいうことをきかない以上、
どうやったって逃げようがない。ディモスが僕の左手の薬指に、その指輪をはめ
る。
 そのあと僕の手も動いて、ディモスの指に指輪をはめた。
「それでは、誓いのキスを。」
 牧師の言葉で、ディモスが僕の体を引き寄せる。うわっ、馬鹿! よせ、やめ
ろってば。
 そしてディモスの手が僕の顎にかかり、僕の顔を少し上向かせる。そして、ディ
モスの顔が段々と近付いてきて、唇が重ね合わされる。と、その時、
「博美のバカッ!」
 一美が叫んで、そのまま部屋を飛び出して行くのが目のはじの方に見えた。
「一美ちゃん!」
 康司が、その後を追った。
 おい、一美、康司、行かないでくれ。頼む、助けてくれ。
 そんな思いが頭の中を駆けずり回る。だけど、体が動かない。
 結局、式は無事に済んでしまい、僕はまた、元の部屋に戻された。

 部屋に戻されてしばらくすると、ディモスが入ってきた。
「さて、これで、あなたも晴れて私の妻ですよ。今の気分はいかがですか?」
 てめえ、このやろう。ふざけたこと、ぬかすんじゃねえ。
 そう思っても、全く言葉にならない。
「おっと、失礼。まだ薬が効いているんでしたね。さ、これをどうぞ。」
 ディモスは手にした布切れを僕の鼻と口に当てる。ツーンと喉の奥が痛んで、
頭の中がクラクラして一瞬だけ意識を失った。そして一瞬の後、再び意識を取り
戻すと、手足が自分の思い通りに動くようになっていた。
「さて、気分はいかがですか? だけど、それにしても、あなたのウェディング
ドレスの姿というのは色っぽいですねえ。」
 そう言って、いきなり僕を引き寄せて、ドレスごと抱き締める。
「離せ! このやろう、なんてことしやがるんだよ!」
 僕は暴れようとしたが、腕ごとディモスに抱き締められて身動きが取れない。
「ほらほら、女性たるもの、そんな言葉遣いではいけませんよ。前に忠告したで
しょう。」
 ディモスは、そう言いながら、僕の首筋に口づけをする。思わず全身に鳥肌が
立つ。
「うわっ! こら、やめろってば!」
 しかし、ディモスは聞く耳を持たず、僕のドレスを脱がそうとする。なんとか
抵抗すると、
「やれやれ、往生際の悪い人だ。」
 などと言いながら、僕をベットの上に押し倒し、胸元に顔をうずめてくる。
「このやろ。いい加減にさらせっつうの!」
 頭にきた僕は、ディモスの股間を膝で蹴り上げ、ディモスが股間を押さえての
けぞったところで起きあがり、思いっきり頬を殴りつけた。そして、最後に仰向
けに倒れたディモスの腹に向かって飛び蹴りを加えた。
 ディモスが完全に気絶したのを確認すると、自分のワンピースや下着類を探し
出して、それを手に部屋の扉を開けて廊下に飛び出し、城内を走り回って門を見
つけて、外に出た。
 そして、悪魔がいるというプラネット公の城に向かって走りだした。
「えーい、くそ! まったく、ハイヒールってのは走りにくいな。」
 そんな独り言を言いながら、ディモスやマース侯の追手がいないことを確かめ
て……。

−−−− 6章 終わり −−−−




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