AWC ◆シビレ湖殺人事件 第2章・春田ー2 ぴんちょ


        
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★タイトル (sab     )  16/01/22  18:35  (158)
◆シビレ湖殺人事件 第2章・春田ー2 ぴんちょ
★内容
原っぱに戻ると、女子達に、土砂崩れの状態を説明して、
「そういうわけだから、とりあえず引き上げ」と言った。
「じゃあどうやって家に帰るのよ」ヒヨリの顔が星飛雄馬のスパイクになる。
「だから、それをロッジで協議するんだよ。
もっともすげー空腹だから、とりあえず食うという事になると思うけど。
だからみんな丸太を持って帰って」
と言うと、俺は率先してシーツに丸太を包んだ。
他のメンバーも、シーツに丸太を包めるだけ包む。
そして肩から担ぐと、ロッジに向かった。

湖畔の小道に出ると、ミキ、斉木、ヒヨリ、ヨーコ、俺の順番で歩いた。
道がくねっているところでは、ミキの様子がよく見える。
背中を丸めて丸太を担いで、頬を真っ赤に紅潮させている。
人間の顔って、あそこまで赤くなるものなのか。
丸でプチトマトみたいだ。
つーか、ああやって赤くなってハァハァして俺を誘導しているじゃなかろうか。
猿が尻を赤してオスを挑発するみたいに。
斉木が、性欲はあるが強情だからやらせない、とか言っていたが、
今、ハァハァしているのが性欲なんだ。
だけれども、骨盤がでかくて強情だから、そんな恥ずかしい事は出来ない。
そういえばナベサダが、リンパ球のコピーは骨盤に宿った磁気が、
なんたら言っていたが、排卵も骨盤のパワーによるんじゃないのか。
骨盤がでかいからどんどん排卵する癖に、骨盤がでかいから強情で恥ずかしい、
という矛盾があるんじゃないのか。
だから、俺が、その、いやよいやよも好きのうち、という葛藤に気付いてやれば、
やっぱやらせるんじゃないのか。
もしかして、斉木はそれを察知して、
俺には無理とか言って邪魔しているんじゃなのか。
斉木はミキの後で、へばりつく様に歩いていた。

あいつにしてみりゃあ、ミキなんて、
星野鉄郎におけるメーテルみたいなものだからなあ。
性欲があったら困るよなぁ。

ロッジに到着すると、ロッジはスルーして、俺らはそのままキャンプ場に行った。
そこで、シーツに包んだ丸太をドタドターっと落とす。
それから、女子はロッジに戻って、鍋だの芋だの調味料だのを取って来た。
そしてみんなで、石ころでカマドを作って、湖水の入った鍋をかけた。
それから女子と斉木は、芋を洗いに、湖へ行ってしまった。
俺は、ナタで、丸太の皮を剥いたり、細く削ったりした。
それらを鍋の下に突っ込んで、チャッカマンで火を付ける。
本格的に燃えてくると丸太のままのを突っ込んだ。
やがて焚き火がぼーぼーになって、鍋がグツグツと煮立ってくる。
あとは芋を入れるだけかぁ。
ふと見ると、塩とか醤油とかと一緒にレトルトご飯が2パック転がっていた。
俺はそれを鍋に入れた。
だって、折角煮立っているんだからもったいないと思ったのだ。
そして15分たったら、棒っきれで取り出して、蓋をあけると、
ふんわりご飯の出来上がり。
蓋の底をへこませてご飯が浮き上がる様にして、ふーふーしながら食う。
甘い。ご飯の甘味が、まぃぅー。
それから塩を振って残りを食った。
それからもうひとパックは、醤油をかけて、のりなしのり弁にして食う。
まぃぅー。
腹が張った頃、みんながタオルに芋を包んで戻ってきた。
「よお」とこめかみのところで2本指の敬礼をした。
「ちょっとあんた、何食ってんの」とヒヨリ。
「あ、これ。あったからさあ」
「あったから、じゃねーだろ。みんなが芋を洗っているのに、
なんで一人で食っちゃうんだよ」
「一応リーダーなのに、なんで勝手な事するの。
そのお湯は芋を茹でる為に沸かしたんじゃないの?」とミキ。
みんなで、なんで、なんで と俺を攻めてくる。
「無理無理」と斉木が言った。「そんなのね、イルカに、
どうして浮き輪に飛びついた、と聞いているようなものだよ。
イルカは小脳でジャンプしているのに、大脳に、どうして、
なんて聞いてもしょうがないよ。
つーか、春田君の場合、小脳と大脳が関連付けられていないのかも知れないなあ。
つーか、小脳だけで生きている気もする」
と何やら俺を馬鹿にした様な事を言っていた。
しかし、女子らもなんとなく納得してくれた様だった。

それから、今後は芋を鍋に入れた。
全員で車座に座って待つこと10分。
茹だった芋を木の棒で刺して取り出すと、皮を剥いた。
醤油をつけて磯辺焼き、塩をつけてポテチ風味、砂糖をまぶしてザラメ、
砂糖と醤油でみたらし、とか味を変えてみんなどんどん食う。
俺もご飯を食った上に芋も食った。

満腹するすと、みんな後ろに手を付いて、Gパンのボタンを外したり、
腹をさすったりしていた。
食った後だから暑い。
あぢー。半端ねー。
じーっとしていると、汗が吹き出してくる。
お日様は出ていなのだが、風がないからだろう。
空気が澱んでいて、森の方から土のニオイ、というか、
すえた様なニオイが漂ってくる、と思ったんだが、なんだ、この沢庵みたいな臭いは。
もしかして誰か…。
「ミキちゃん、オナラした?」俺は隣のミキに聞いた。
「してないわよ。失礼ねえ」
「そんなに怒る事ないじゃない。オナラぐらいで」
「してないって言ってんの」
「じゃあ誰だろう」
「知るかー」
俺は腰を浮かせると、くんくんやりながらニオイの元を探って行った。
まずトイメンの斉木に近付くと「オナラした?」
「してないよ」
そしてカニ歩きで横に行くとヒヨリに「オナラした?」
「してねーよ」
そして隣のヨーコに「オナラした?」
「した」
「なんだよー」
そのまま中腰でカマドの周りをぐるり一周してきて、ミキの横に戻ってくると、
「ヨーコだったよ」と報告した。
「あんた、ガキだね。楽しいの、犯人探しして。満足そうな顔しちゃってさあ」
「なんで、俺はただヨーコだったよーって」
「あーあ、このガキの影響で私までトイレに行きたくなっちゃった。
ちょっと行ってこよーっと」
ミキは、立ち上がって、ぱたぱたと尻を叩きながら、森の方へ歩いて行った。
そのGパンのポケットをじーっと見ていたのだが、ふと、
あれ、ティッシュもっていないんじゃないか、と思った。
なんか拭くものがないと困るんじゃないか、とあたりを見回す、
と、丸太をくるんできたシーツが丸まっていた。
俺はそれを引っつかむと、足元に転がっていたナタの歯で切れ目を入れて、
ザーッと裂いて、
くるくるくるーっとトイレットペーパーの様に丸めると立ち上がった。
「どこに行く気」とヒヨリ。
「ペーパーがないんじゃないかと思ってさ」
「はぁ?」
「これを持って行ってやろうかと思って」
「やめろー」
「だって無かったら困るだろう」
「やめろ、ってんの」
と引き止めるのを無視して、俺はキャンプ場の砂利をじゃりじゃりいわせて
森の方に走って行った。
そして森に入ると 歩調を緩めて、「ミーキ、ミキ、ミキ。どこにいる」と、
迷い猫でも探す感じで、あたりを見つつ進んでいく。
と、ひときわ大きいケヤキの木陰にミキらしき人影が。
「そこにいるのは、ミキか」
とにじり寄ると、さっと立ち上がってホットパンツを上げるが早いか、
「なぁーーーーにしに来たのよ。デバガメ?」
「そうじゃないよ。紙をもってきたんだよ。布製だけれども」
「そんなものいらない」
「だって困ると思って…」
「思ってくれなくていいよ」と言うとケヤキの根の間から出てきて、
こっちを向いた。「思ってくれなくていい、ってんの」
「思っているよ」言うと、丸めた布を放り投げた。
するとミキは足で踏み潰した。
「あッ。俺の愛を踏みにじったな」
「愛? 何言ってんの。あんたみたいなガキに愛なんて分かるか」
「分かるよ」
「じゃあ何よ。教えてよ。あんたの愛を」
「俺の愛の証を見せてやる」
「何よ、それ」
「そのウンコを食ってやる」
「はぁ?」
「お前のウンコを食べてやるって」
「はぁ? あんた、何言ってんの? 頭は正気? でもいいわよ。
だったら食べてみなさいよ」
「食ってやるッ」と俺はケヤキの根に突進した。
が、すれ違いざま、ミキが足で土を蹴飛ばして、目くらましを食らわせてきた。
「うわー、目がッ」
「もう、あんたみたいな馬鹿とは付き合ってらんないわ」と言って、
俺をスルーして行ってしまう。
「見ていてくれなきゃ意味ないじゃないか」とミキの背中に叫ぶ。
しかしミキの白いTシャツは、木の間から差し込んでいる光の中に滲んで行った。
しばらく立ち尽くしていたが、そんなもの一人で食べても馬鹿みたいなんで、
肩を落として脱力すると、とぼとぼと戻った。




元文書 #1043 ◆シビレ湖殺人事件 第2章・春田ー1   ぴんちょ
 続き #1045 ◆シビレ湖殺人事件 第2章・春田ー3
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