AWC 狂気の勇者達。第四章「海戦」   一楽亭 モウキ


        
#146/569 ●短編
★タイトル (yiu     )  04/01/24  23:55  (158)
狂気の勇者達。第四章「海戦」   一楽亭 モウキ
★内容
ウッドミドガルド征圧に成功したものの、兵糧も兵装も間々ならない状態であった反乱
軍はロックガンバに拠点を置くハンジ反乱軍の輸送部隊の補給の兵糧に頼って兵士の離
反を避けていた。
 そこでこのままだと軍資金や兵糧に悩まさせられ、反乱が自ずと自然消滅してしま
う。軍資金や兵糧を提供してくれる後ろ盾が必要。反乱軍一行は貿易商や豪商が住むア
ラガスへハンジ・ガバンを派遣。ウッドミドガルド守備には赤・青の魔女。そして白・
黒の魔女はウッドミドガルドの奥地へと向かった。
       *                      *
この日、ヒョウホ邸は慌しかった。貴族の軍が集まり三十万の兵力となった。更には王
兵一万。異民族らの兵士二十万が加わった。総兵力五十一万である。あのエクトロスの
言葉が、天下が、すぐそこに近づいてきた。王リースに反旗を翻し天下を手にしたい
と、ただの貴族の一人で終わりたくはないと少しづつ感じ始めた。
「北、ゴブヒプマ族今参った。」
軍議中に人が入ってきた。顔を見た途端に全身に戦慄が走った。そうだ。遠征の時にヒ
ョウホを死に追いこんだ武将だった。どすんと椅子に座ると部屋をまじまじと見つめて
いた。
「何か?」
女性の声だ。ウッドミドガルドの忘れ形見、レデイである。
「いやぁ、土地が違いますと屋敷の造りも違いますな!」
元気がある。戦ではない時になると好漢らしい。
「さて、此度の戦には策を用いずに全軍でアラガスから一直線にウッドミドガルドに伸
びるマパラカ街道を使わずに遠回りではありますが野道を行軍します。敵は篭城戦で来
るでしょう。長期戦は覚悟してください。兵糧は今現在の物資がなくなってしまった
ら、王様から輸送部隊が派遣されることでしょう。」
エクトロスはヒョウホを一瞥した。
「では二時間後に我が軍を先鋒として進む。皆、凡愚どもに武勇を見せつけてやろう
!」
     *                      *
「姉さん、こっちで良かったけ?」
白の魔女は馬に乗りながらウッドミドガルドを果てない森を眺めた。
「たしか師匠はもっと西のモロクソウよりの森の近くに住んでいたわね。」
「西か」
馬は翔けた。モロクソウ。通称バスラーニャの谷と呼ばれる土地である。バスラーニャ
とは翼族の始祖。伝説上の怪物で元々は人であったけれども強さと引き換えにカレスト
ワルキュレスという怪物へと近づく体になり、五十年前に起こったマナコアの暴発で急
激に完全体へと変貌したという。現代の人々が最も恐れる土地だ。
「あ、師匠。」
白の魔女がそう呼んでいるのは流れるような青髪を一つに縛り、透き通るような黒い
目、きりりとした目。美男子だ。
「ダイモン師匠。探しました。いきなりでなんですがお願いです。我が軍を救ってくだ
さい。」
ダイモン・ダイゴ・ドンキホーテは口を開いた。
「反乱はシリアちゃん達が決めたことでしょう?親の仇討ちはいいけどさ小生まで巻き
込まないでよ。」
「でも、母さんの事を教えてくれたのは師匠ですよ。」
「あの子はその場しのぎで小生にシリアちゃん達を預けたんだよ。仇討ちのためじゃな
い。」
「だいだい、仇討ちとかに魔法を使うな。今のシリアちゃんよりもできそこないのメラ
ちゃんの方がいい。仇討ちするっていうから家出させた。破門したんだ。」
「あ・・・・・・・。」
「す、すいません、私達が愚かでした。」
二人は一目散に翔けて行った。
「ふう。まったく、あの頃を思い出させるよな。そういえば・・・・今の王リースっ
て・・・・あれ?召喚機構の諜報部員だったよなぁ。」
「・・・・・・・・!そういうことか!仕方ない。応援するか。」
ダイモンは家に戻って準備を整え始めた。
         *                     *
時同じくしてアラガスは海賊の攻撃を受けていた。その頃にはもう貴族同盟は行軍して
いたので守備は手薄だった。しかしその海賊の一部は家も焼かない、女も奪わない。た
だ金目の物を奪うだけだった。その筋が通った海賊の部隊を率いるのはカラパという喧
嘩っぱやい青少年だ。
「いいかぁー!女、家には手を出すな!出した奴は俺と喧嘩勝負だ!」
「へい!兄貴!」
その行動は海賊団の理念と反れていた。団長が黙っているわけがない。
「カラパ!お前の海賊は甘いって言ってるんだ!命令に従え!」
カラパは聞く耳を持たない。最前線のカラパの部隊にたった一人で斬り込んで来た男が
目に入った。
「海賊め!お前の首、このライライが頂く!」
「よぉ!ライライ。いっちょやるかぁ!」
ライライはアラガスの用心棒をやっている。度々ヒョウホらの兵と海賊撃退に携わって
いる。
「お前、気安くライライと呼ぶな!」
二人は鍔迫り合いになった。二人とも戦だというのに軽装でカラパは革のベストに簡単
な造りのズボン。対するライライは大きな上着にこの土地では珍しい‘袴”を履いてい
る。武器は長い斬り殺す部分と全く斬れない部分がある‘日本刀”というものを使って
いた。二人が何故、こんな軽装か。それはここ数年にアラガスの漁民たちが西国との接
触で生まれた新しい学問、西方流学問による。ライライは船で西国へ渡ったことがあ
る。
「おぉ。強くなったな!」
カラパは命のやりとりだというのに嬉しそうだ。
「そこの御仁、助太刀しよう」
ガバンである。ニ対一だ。
「すまない。その方の名は?」
「ガバンだ。ガバン・ストラーチュ。と言う。」
ガバンが突剣の構えを変えた。ガバン必殺の三段突きの構えだ。
「やっ!」
一段。間なく、
「たっ!」
二段。死角を狙い
「せいっ!!!」
三段。カラパは負傷を負った。
「くそ!ここは退く!喧嘩はまただ。じゃあな!」
カラパの部隊は母船へ逃げ帰った。状況を母船から把握した団長は邪魔なカラパを討つ
計略をたてていた。
「すまねぇ!団長。もうちょっとしたらあんなのぶっ倒すからよ!な!勘弁!」
「あぁ。カラパ、お前は入江を抑えてくれ。お前が抑えている間にアラガスの入り口か
ら残る兵力でここを乗っ取る。」
「わかった。団長。行って来るぜ。」
          *                  *
「様子が可笑しい・・・・・。」
砦の高台に立つヒョウホが呟いた。ウッドミドガルドの入り口に貴族同盟は布陣した。
木が豊富な地理なので長期戦は十分できる。しかし先ほどから、他貴族の斥候が戻って
こない。たまに森からガサガサと恐怖心を煽る音がする。怖かった。
「斥候が戻りませんね。ここにはモウユウが潜んでいますから。・・・・・・不安です
か?ヒョウホ殿。」
エクトロスが心を察するような言葉を発した。正直、心理戦では勝てる気がしない。
「いや!ふん!こんな反乱ごときに驚いていては、豪族オルドス一族の名が廃る。何も
怖くはないぞ。」
「盟主殿!ミドガルド一族の斥候、戻ってきました。」
「おぉ!」
急いで階段を降りた。レデイ。貴族同盟の紅一点。つい一年前に幼馴染み、ラクーツの
愛娘だと聞いて顔を見せに言った時は『ヒョウホおじちゃん』と言っていたのに今はも
う戦乙女だ。女の変貌はすごいなと思った。
「それで、敵の兵力はどれくらいだ?」
「二万と見られます。」
「二万・・・・・・、嘗められたものだな。して、伏兵はいそうか?」
「それが、敵は徹底篭城を考えているようです。」
       *                     *
「ついに貴族も黙っちゃいないってか。」
赤の魔女である。
「そうだな。今は篭城か、抗戦か。どちらかで師匠を待とう。あの人の魔力なら、この
戦況を如何にかしてくれる。」
青の魔女だ。
「たった一人で、戦況変えられるわけないと思うぞ。」
「あの人は魔法の他に錬金術、召喚術を会得している。」
「そうか。俺に策があるんだが、いいか?」
「できそこないのメラが策ねぇ。面白い。」
         *                   *
「おらおら!!!!!ここから先に進みたいなら、このカラパを倒してみろ!!」
カラパの怒鳴り声。
「へ、カラパが馬鹿で良かった。これで俺たちは戦線を離脱するぞ。おい、カラパ以外
の部隊を集合させろ。集まりしだい、退却するぞ!」
ライライとカラパは再び鍔迫り合いになった。
「おい、いつもの兵はどうしたんだ?」
「知らん!」
「へ、見捨てられたか。括弧悪いな。」
「見捨てられたのはお前だ!裏の見ろ!」
「母船が・・・・・ない?」
「どうやら、解雇されたようだな。」
ガバンが口を挟んだ。
「けっ!好きにしろ!殺すなり、捕虜にするなり。」
ガバンはカラパをじっと見つめた。そこへカラパの部隊がやってきた。
「待ってくだせぇ!俺達、ずっと兄貴を慕ってきたんです。兄貴が死んだら他に行くと
ころがありません。どうか俺達をあなた達の大望に使ってください!」
「ふむ・・・・・。決意は本気だな。よし、俺の軍に編入しよう。」
「あ、あ、有難う御座いますだ!」
     *                         *
「全軍!突撃!目指すはミドガルド城!進め!進め!」
「父上の恨み晴らすのよ!」
斥候の情報を元に全軍突撃を決行した。途端、砦が炎上した。すると、森までが炎上し
た。しかも行軍路にも油がひいてあったようで、たちまち貴族同盟軍は火計に翻弄され
た。
「やってやったぜ!見たか、これがイフリートの力だ!さあ皆、鬨の声を!」
「おぉぉぉぉー!」
「奴等をバラバラに拡散させて、それを一つ一つ潰すぞ!」
一気に巻きかえされた。火計の混乱もあって、ニ万の軍で貴族同盟の兵力の三分の一ま
で倒した。しかしもう限界が来たので、赤・青魔女一派はアラガスへ南下。
それを知らない。白・黒魔女は・・・・。





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