#119/569 ●短編
★タイトル (XVB ) 03/10/23 18:56 (304)
お題>都市伝説 $フィン
★内容 03/10/23 18:58 修正 第2版
発端は、学校にきた一枚の張り紙だった。それにはこう書かれていた「きたれ次の世
代をたつ少年少女よ。そして一度見にくるがいい偉大なる長老様のメガロポリスを」そ
の下には募集項目があって、誰でも応募できるもののいろいろな角度から見て長老様の
接見するにふさわしい子供を選抜するというものであった。張り紙を見た僻地の少年少
女はどんなに胸を高ならしたであろう。モノクロの写真でしか見られなかったメガロポ
リスを列車で行けて、その足で歩くことができる。最先端の衣装をまとい、意気揚揚と
歩く姿を想像するだけで、目頭が熱くなるほどであった。だが、子供たちの大部分は諦
めざるをえなかった。赤茶けた荒地に育つ食物は限られている。政府の研究所で作られ
たその土地にあった食物の種や苗も植えても、途中で枯れてしまうか、さもなくは背だ
け延びてひょろひょろとしたものしか収穫できないのであった。それでもここに暮らし
ていかなくてはいけない。膨大なエネルギーを必要とするメガロポリスのために、僻地
の人々は何世代も何世代もこうしてやってきたのだった。忙しい両親を手伝わないとい
けないので大部分の子供はここで諦めた。それでも向上心に燃える子供はどうやったら
メガロポリスに行き、憧れの長老様にあえるだろうかと考えた。美しさをより磨きかけ
るもの、運動をして筋肉を鍛え理想的な肉体を持とうとするものも現れた。祐樹は、そ
れぞれずばぬけてではないかすべてに上の成績を貰っていたので、家柄を別にすれば気
にすることがなかった。祐樹の家柄は僻地でもかなり下に位置するものであった。学校
のものにでもときどき貧乏人は学校に来るなと言われることもあったが、生来の明るさ
と持ち前の負けん気で立ち向かっていった。そのうちに影でこそこそいうものはあって
も祐樹直接には言うものはいなくなった。
そして、メガロポリスに行く選考会がはじまった。会場に現れたのは以外に少なく千
人集まっただけだった。今の農繁期に両親の手伝いでいかれなかった子供が大部分なの
だろう。ここにきている子供もかなり無理していると思った。実際祐樹も目のところに
黒いあざが残っていた。昨日の夜どうしても行きたいという祐樹と親の手伝いをするも
のだという父親と意見が別れ、喧嘩して殴られた後であった。
選考会は1日では終わらなかった。身体が健康であるかポリスの医師が横柄な態度で
祐樹たちをすみずみまで観察する。そして観察した後は消毒薬で念入りに手を洗うこと
を忘れなかった。メガロポリスとはいかなくてもポリスから医者がくるのは滅多にな
い。僻地に来る医者は、よほどかわった変人が犯罪に近い方法でポリスにいられなくな
ったものの二種類しかいない。重要な医剤も設備も不足している僻地では病気にかかる
ことは死を意味していた。だかポリス、メガロポリスと都市が大きくなるにつれて医療
技術は発展し平均寿命は大幅に延びていた。
そして学習能力をためすテストに入った。祐樹は少しでも点数をあげようと一生懸命張
り紙を見たときから勉強した。友達とのつきあいを避け、両親の収穫の手伝いも後回し
にして(顔を殴られたのはそれも原因があるのだろう)、最高点を取るように勉強し
た。そしてその後はメガロポリスにいって何をしたいか、そして長老様についてどう思
っているかという原稿用紙五十枚にもわたるものであった。祐樹は文章を書くのはこの
中で一番得意だったので、思っていることをすべて心を込めて熱心に書いた。少しでも
間違いのないように何度何度も見なおし、これでよいと思って提出したときは祐樹が最
後であった。
選考会を受けた子供はみんな必死であった。憧れのメガロポリスに行き、そして長老
様に会えることができるかもしれない。もしメガロポリスの高官と話す機会があり、気
に入ってくれて、そこで養子になった子供もいるものもいるという噂を信じて、メガロ
ポリスに行きたがった。子供たちが夢に見るところ、なにをつけても最先端の都市、希
望と夢の象徴それがメガロポリスだった。
一ヶ月後、祐樹が学校に行くと教師が、この地域からはおまえ一人だ。がんばってこ
いなと、封蝋が押された政府からの手紙を渡された。級友たちの羨望と嫉妬のなか、メ
ガロポリスに行ける。そして長老様にあえるかもしれないと幸福感で一杯だった。その
日の授業はメガロポリスのことばかり思って授業に専念することができなかった。そん
な祐樹を普段なら注意する教師も仕方がないなぁって感じで苦笑いするしかなかった。
祐樹は手紙を開封するにも他の子供に見られないように家に帰ってきてからやろうと思
っていた。
祐樹はメガロポリスに行くことがきまって、地域をあげての送別会を開いてもらい、
みなが長老様をたたえる合唱をし、飲めや食えやの宴をしてもらい、めったに食べられ
ない魚や肉が出て――ただし合成たんぱく質を使った本物ではなかったが――みんな祐
樹が憧れのメガロポリスに行くことを喜んでくれた。両親は少ない稼ぎの中から恥ずか
しくないような服を買ってくれた。そんなこんなしているうちにあっという間に、メガ
ロポリスに行く日になった。
当日祐樹は両親に連れられて、たった一つトランクを持って駅まで行った。駅では政
府が特別に調達してくれた非常に型は古いが、頑丈な造りの専用の運転席と客席だけの
二両編成の列車が煙を吐いて待っていた。重厚な造りの列車に触った。長い年月の重み
を感じさせる列車だった。それを触りながら祐樹はこれは夢じゃないのだと改めて感じ
ることができた。トランクを持ってそれじゃあと両親に別れを言うと祐樹は車中の人と
なった。
すでに四十人あまりのさまざまな地方から出た子供たちが列車の中で嬉しそうに飛ん
だり跳ねたりして列車が出るのを今か今かと待っていた。祐樹は、白い服をきた少女の
隣に声をかけて座った。
しばらくして、車掌ややってきて選ばれた子供たちはがみんな乗ったと言った。列車
はゆっくり白い煙を吐いて動き出した。子供たちは初めて乗る列車に興奮している。わ
たしはどこからきた。ぼくはどこからきたと紹介している。そしてメガロポリスの長老
様にサインをねだって、家に持って帰って自慢をするのだとか、最先端のものを見たい
とか、いろいろメガロポリスへの不安と期待を込めて話しあっている。祐樹も例外では
なかった。メガロポリスについたなら、僻地のものが考えている究極の願い事、あわよ
くば自分のことを認められて、誰かの養子になり、メガロポリスに永遠に住めるように
なることであった。だがそれは身分不相応な願いだと半分諦めていた。それはそうだろ
う。当時、僻地に住むものは政府からの許可がなければ列車に乗ることもできず、一生
同じ場所で暮らしていかなくてはならない決まりになっていた。大人たちの中でも一生
列車に乗るものが多くない時代、まだ成人にもなっていない祐樹が、選ばれて列車に乗
ってメガロポリスに行けるなど自体夢のような話しであった。分不相応なことだとはわ
かっていたが、虫けら同然の僻地の暮らしが嫌で嫌で死ぬほど堪らなかったのだ。
ごっとんごっとんごとんごとん、列車は何時間も眠たくなるような安定した振動をとも
なって動いていた。最初の興奮から醒めて、祐樹たちはめいめいの弁当箱を取り出して
食べ始める。祐樹のは、両親がだいぶ無理して調達してくれた合成肉がはいっている。
合成肉の原料はポリスからの食物の廃棄物からできたとか噂があるが、そんなことは気
にならなった。廃棄物であっても祐樹にはめったにないご馳走であるの変わりなかっ
た。父さん母さんごめんよ。オレ、メガロポリスに行ったら何が何でも認められて、こ
んな合成肉じゃない本物の肉を毎日父さんや母さんに食べさせてやれるぐらい偉い人に
なってやるとじわりと涙を流しながら考えた。半透明の窓ガラスから外を見るとまだ未
開拓の赤茶けた荒野が広がっている。開墾が進んだとはいえ、まだ目前の大地が緑地帯
になるまでまだ長い年月がかかるであろう。いやもしかしたら、祐樹たち世代が終わっ
てもこの地域は赤茶けた荒野のまま開拓されないかもしれない。オレもうこんな生活嫌
だと祐樹は車窓から見える光景を見て思った。
長い旅になるわね。合成肉が入った弁当を食べて一人物思いにふけっていると隣の少
女が語りかけてきた。祐樹は自分の名前と出身を言うと少女はかなり遠くの地域から車
もなく歩いてきたと言う。長い黒い髪に茶色いふけがたまっている。白い服も茶色くす
す汚れている。年を聞くと祐樹と同じ年で、今年の選考会で年齢の上限に達するので、
何が何でも健康と勉強に力を入れてこの一年頑張ってきたのだと言う。勝気そうな目で
祐樹をにらんでいる。少女も選抜試験を受けてきたのだと言った。そしてメガロポリス
にいって、最先端のファッションを知り、認められて奨学金を得て、一流のファッショ
ンデザイナーになり、やがて有名になり、この僻地から永遠に去りたいために勉強して
きたとも言っていた。祐樹は、目の前の少女の野望があまりに大きいため、冗談はやめ
ろと言いたくなってやめた。そして祐樹は無謀とも思える彼の野望を情熱的に話した
後、目の前の少女が自分と同様の表情をしたのを見逃した。
それからきっかり一時間後、最初に車掌からの贈り物があった。それは大福餅――餅
米とあんこを使った『天然』のもので、ポリスでも滅多に手にはいらない非常に貴重品
だった――が配られた。子供たちは口々にわぁわぁわぁと喜びの声を雄たけびをあげ、
これ以上ないほど喜び喚声をあげた。隣の少女から祐樹に大福が渡される。祐樹は少女
の手についた黒い染みが真っ白い大福を汚したのに気を悪くしたが、目の前の『天然』
の大福餅を食べられる誘惑には勝てなかった。そしてみなに一つ一つ『天然』の大福餅
が配られた。わたし初めて食べる、僻地に住んでいると一生食べられないものだなって
声が大部分だった。みんな図書館で見たことはあっても、はじめて食べる『天然』大福
餅に目が喜びで輝いた。そして車掌が子供たちにこれはこの旅が楽しくなる最初の贈り
物だと言って笑った。
「長老様は永遠に!!」子供たちは車掌の音頭で一斉に大福餅を食べた。そして何人か
の子供たちからうぐぐぐぐぐとくぐもった声が聞こえ、口からどばりどばりとと中の物
を出し、喀血する。祐樹は驚いた。そして少女を見ると半分大福を加えたまま目を大き
く開き驚いいている。どうやら大福餅に毒が入っていたようだ。毒入りの当たりと入っ
ていないはずれがあるようだった。祐樹と少女はどうやら運よくはずれだったらしい。
当たりをひいた血を吐き苦しんでいる子供たちは咽喉を掻きむしり、よだれを垂れ、苦
悶の表情を浮かべている。祐樹は苦しんでいる子供に駆け寄り舌を切らないようにハン
カチを入れなんとかしようとするが、悶え苦しむ姿を見るばかりでどうしようもない。
やがて大量の血を吐いていた子供は凄まじい形相をして次々と死んでいった。
死んじゃったよぉ。なんで死んじゃったの! 車掌さん説明してよ! 顔中血まみれ
になった子供を抱いたまま誰かが甲高い声を出して悲鳴をあげ叫んだ。
今まで死んでいく子供の介抱で気づかなかったが、この大福餅を配ったのが車掌だと
思い出し、生き残っている子供たちが車掌を見る。
車掌は下をうつむいて表情は見えないが身体を震わせている。車掌さん? 子供の一
人が車掌の肩に手をかける。まんじゅうは怖いのだよ! お前たちはぴぃぴぃうるさい
のだよ。お前たちなんか生きていても仕方がないのだよそう言うと車掌はいきなりその
子供の腹を隠し持っていたナイフで突き刺した。ぎゃあああああ悲鳴が辺り一面に響
く。車掌の理不尽な殺戮のはじまりだった。
なんでこんなことになってしまったのかわからない。中にいるのは車掌の皮をかぶっ
た殺人鬼、たった一時間の間に何人の死体が増えたのだろうか。夢と希望を抱いて楽し
く行けるはずだったメガロポリスへの旅が、血が血で洗う凄惨な殺戮劇になってしまう
とは誰一人として考えなかったことだった。祐樹は、失った代償は大きかったが(子供
たちの何人かは車掌の大福餅とナイフにより死んだ)なんとか殺人鬼となった車掌を取
り押さえることに成功した。車掌の両手両足をズボンのベルトで縛り、幾人もの子供の
命と幾人もの子供にキズを押させたナイフはとりあげた。もうこれで大丈夫のはずだっ
た。
祐樹たちは、最初運転席に行って、この列車から車掌が狂ったこと――大福餅に毒を
入れ、子供たちを殺しまわったこと――を知らせようとした。だが、運転席のドアやガ
ラスは堅くロックされていて出ることができない。これは列車という名の完全なる密室
だとわかった。私もう家に帰りたい。女の子のすすり泣く声が聞こえる。みんながんば
るんだ。ポリスの駅についたらなんとかなるといって祐樹はみなを励ました。ところ
が、縛られたままの車掌はくくくと笑った。この列車乗っている子供を助けてくれるも
のなんかいないよ。この列車は地獄行きの列車なのさ……。そんな馬鹿なと祐樹はばし
りばしりと乱暴に車掌の顔を殴る。車掌の口が切れ、たらりと血が流れる。車掌は自分
の血を美味しそうにぺろりと舌で舐めた。
メガロポリスさえつけばなんとかなる。あのみんなに平等な長老様がぼくたちの仲間
を殺したこの車掌をどうにかして、救ってくれるはずだ。それだけを信じて、祐樹たち
は暴走する列車に乗りながら祈った。
列車の速度が少し遅くなった。「ポリスだ。ポリスだ。ぼくたちは助かるぞ」子供た
ちは口々に叫ぶ。メガロポリスほどじゃないが、僻地に比べれば少しはましな文化的暮
らしをしているポリスの駅に近づいたのだった。喜ぶ子供たちを見て車掌は縛られたま
ま含み笑いを浮かべる。
列車がゆっくりポリス駅に近づくのがわかる。遠くから見るとものものしい装備に武
装した迷彩服の男たちが立っている。祐樹は何かを不愉快なもの感じた。車掌は何を考
えたのか「伏せた方がいいんじゃないか」と言った。祐樹は普段ならこんな殺人鬼車掌
を信じる気にはなれなかったが、外の物々しい迷彩服の男たちを見て、みんな伏せろと
叫び、少女を強引に座席の下に押し込んだ。ポリスに列車はゆっくり入っていく。そし
てばばばばきゅんもの凄い轟音が響く、迷彩服の男たちが機関銃で一斉に射撃したのだ
った。
数分後、また列車がポリスの駅からゆっくり動き出した。何事もなかったように、す
べての窓ガラスが割れ、ところどころ座席や壁に銃跡が残り、打ちぬかれた肉片が跳ん
でいることを覗けば、遠く離れた赤茶けた荒野からは何事もなかったように走っている
列車に見えているはずだ。だけども中は修羅場だった。機関銃で助かった子供たちのす
すり泣きが座席の下から聞こえる。さっきまで話していたあの車掌も腹に何発も銃弾を
受けて血を流している。頭は吹っ飛んでいる。胴体から首が離れた時に瞬時にして死ん
だのだろう。
死ぬ直前になって車掌は真実を語ったのだった。正直に警告した彼の魂は、天に召され
るのか、それとも地獄に落ちるのかはわからない。幸いにして車掌の警告を受けて、座
席の下に身をひそめた何人かが――最初の列車に乗り込んだ子供たちの1/4になったが―
―ゆっくり信じられないといった顔で出てくる。なぜこんなことになってしまったの
か。ほとんどの子供たちが血で汚れている。子供たちは夢と希望に燃えて僻地からメガ
ロポリスに向かったのではないのだろうか? それがこんなことになるなんて……。生
き残った子供たちはみな同じ思いだった。
やがて列車の旅が終わり、そして列車はなにごともなかったかのようにゆっくりメガ
ロポリスに到着した。メガロポリスの役人たちがやってきて祐樹たちに説明をする。な
んとあの車掌は政府をゆるがす凶悪な殺人者で、何の理由からか分からないがあの列車
の車掌に化けて、鬱憤晴らしに政府から招待された子供たちを殺していったのだと言
う。そしてポリスで車掌一人殺すために正義を愛する政府の役人たち命令で仕方がなく
ああいうことを行ったというのである。祐樹たちは信じることにした。
メガロポリスの駅から列車に降りた祐樹たち僻地からきた子供たちは、政府の役人−
−銀髪碧眼の慈悲溢れる優しそうな女性であった――の案内ですべての窓がガラス張り
の最高級閣僚クラスがとまれるような豪華な造りの四十階建てのホテルの一室に二人づ
つ泊まることになった。ここでどんなミスが起こったのかわからないが(政府の役人も
たまには間違いをおかすこともあるのだろう)祐樹は列車で一緒だった少女と一緒の部
屋に泊まることになった。部屋は僻地では考えられないほど豪華だった。二人ははしゃ
いだ。長老様にあえるという興奮と僻地では味わうことのできない豪華なホテルの豪華
な部屋でくつろぐことができるし、あの忌まわしい列車での毒入り大福殺人事件と車掌
の殺戮事件と政府の役人の車掌抹殺事件のことはもう遠い昔のことで長老様にさえあれ
ば安全だという安堵感とかいろいろな思いが混じって二人は興奮状態であった。
夜は長い。また長老様に反感を持つものが長老様に特別に招待された祐樹たち僻地か
らきた少年少女を襲ってくるとは限らない。部屋には鍵をかけられ、祐樹たちが泊まっ
ているホテルの階の入り口には銃を持った政府から雇われた強靭な男たちが守っている
と聞かされている。祐樹たちはセキリティーの面では完璧でもう心配することはない。
祐樹と少女は部屋に運ばれた僻地ではこれまで満足に食べられなかった夜食を食べた。
そして祐樹は暖かい湯の出るシャワーを浴びている。隣にはなみなみと合成でもない本
物の大理石の浴槽に暖かい湯がはっている。僻地では湯も貴重品で身体を洗うにも一週
間に一度冷たい水で洗えばいい方だった。しかしここではお湯も使い放題である。それ
にすべて無料である。祐樹は自分を招待してくれた長老様に感謝した。
浴室から出て、パウダールームに出ると、新品の肌ざわりのいい白い絹でできた寝巻
きが置いてあった。祐樹はいとおしむように感触を楽しみ、寝巻きを着る。そして、寝
室に入る。清潔な白いシーツにスプリングの効いたベットが一つ、その上には祐樹と同
じ寝巻きを着た少女が髪をいじっている。部屋はほのかに薄暗く、ほのかに暖かい。祐
樹は少女の横に腰掛け、メガロポリスって思っていた以上だなと言った。少女は小さな
声でそうねと答える。それだけで会話が途切れる。
部屋に甘ったるい匂いがする。部屋の通風孔から空気がはいってくる音が静かに聞こ
える。祐樹たちが食べた料理にも同じような匂いがした。祐樹はその匂いをかぎながら
メガロポリスの匂いっていい匂いだなと思っていた。祐樹はなぜか股間がむずむずして
いた。電車の中ではじめてあった少女だけどもむしょうに愛らしくしたくてたまらない
自分に戸惑いを感じていた。少女も同じ気持ちらしく顔を赤らめ目を潤ませて見つめて
いる。
「おれ……はじめてなんだ」「わたしも…」祐樹と少女が頬を赤らめ戸惑いかちに接吻
をする。そして祐樹は少女の乾ききっていない髪の中に手をいれる。少女の髪から甘い
香りが立ち上る。祐樹はその匂いを嗅いで興奮した。祐樹は少女を押し倒し、ゆっくり
パンティを脱がして、挿入する。今まで感じることのなかったとてつもない快感が祐樹
を支配する。シーツに少女の血が垂れた。少女は痛みに耐えているが快感の方が上らし
い。若い二人は腰を何度も振る。奥へ奥へと入れていく。顔が快感で歪む。そして同時
に達した。
翌日、祐樹は部屋に供えつけの電話で呼び出された。一夜をともにした少女は部屋で
朝食を採っていた。祐樹は特別に選ばれてホテルの最上階の特別室にきて話をしたいと
の政府の高官からの話しである。祐樹が部屋で待っているとノックの音がして、あの慈
悲に満ちた笑顔であの女性高官が待っていた。祐樹をいざない特別室に連れていく。祐
樹が連れていかれる前に、女性高官はしっかり鍵をするのを忘れなかった。
高速エレベータに昇る途中祐樹はメガロポリスは素晴らしいと思った。三階建て以上
の建物が構造上立てることのできなかった僻地の暮らしとは別世界のようだった。今ま
で着ていた服は、旅行かばんにつめた。そしてホテル側から用意された自分の着ている
真新しい洋服を眺める。僻地では中古が普通で、着る前に人の体臭がひどくて何回も洗
わないと着られないものとは大違いで、一度も他の人の袖が通っていない真新しい服を
何度も見た。朝起きてから暖かいシャワーで身体を洗った。祐樹は僻地から出てきた今
までのことを思い出す。子供たちの活躍で凶悪な車掌が退治された。僻地での暮らしと
車掌が退治をどのようにしたか、政府の高官が子供たちの代表として祐樹に聞きたいら
しい。もしかしたら政府の高官が子供のいない夫婦で、もし祐樹に好印象を持って、も
し祐樹を自分たちの子供として育ててくれるように思ってくれたらどんなにいいだろ
う。そのためには目一杯賢いふりをして、愛嬌よく話し、そして自分を養子にしてもら
えるよう努力しようと思った。祐樹は最上階につき、特別室に入ると政府の高官が笑い
ながら待っていた。そして祐樹は特別室に入ったとたん、後頭に物凄い衝撃が走り目の
前が真っ暗になって倒れた。
それからのことは祐樹も知らないことである。子供たちは夜長老主催のディナーに招
待された。あの世界で一番優しく一番賢く一番尊い長老から天然の素材を使ったディ
ナーの招待を受けたのである。子供たちは有頂天になった。何しろ僻地ではおろかポリ
スでもめったにたべ天然の素材を使ったものを食べたことがなかったからである。どん
な料理が出るのだろうかと皆がまだ見たことのない長老との夢のような豪華なディナー
を想像し、夜になるまで待っていた。
ホテルに子供たちと会うために特別に泊まっている長老様までの貴賓室までの道のり
はそんなに遠くなかったが、貴賓室まで行く廊下には洗練された都人が、田舎からおの
ぼりさんがきたという風にちらりと一瞥するだけで、無関心に通りすぎていく。雲の上
の存在だと思っていた長老と逢って話しができる。今の子供たちはそれが一番の希望で
あった。唯一の不安は、このホテルに泊まっているはずの祐樹がいないことである。も
しかしたら祐樹が政府の高官に気に入られて養子でもなって抜け駆けされたらどうしよ
うと考えているのである。自分たちも認められたいと子供たちは皆思っていた。
長老様のいる貴賓室に子供たちは着いた。子供たちは今まででもメガロポリスの豪華
さや美しさに驚いていたが、長老が住む貴賓室は豪華さ美しさ重厚さの面では桁違いだ
った。僻地の暮らし、そして自分たちのこと今までのことを説明したかった。子供たち
はホテル側が用意してくれた服−男の子はタキシード、女の子はイブニングドレス−に
着替えている。
長老は子供たちの話に興味を持ち、子供たちの話を熱心に話を聞いてくれた。そして
ディナーの用意ができましたとコック長が長老に恭しく報告をした。長老は今まで大変
だったろうと子供たちをねぎらい、合成ではない天然の素材からできた食事を用意した
と語った。子供たちはわぁっと喜びの声をあげる。中にはマナーも知らないとどうしよ
うと囁きあっている子供すらある。スープ、野菜と続き、最後に天然素材の肉が出てき
た。子供たちは、生で、焼いて、あぶって、煮込んださまざまな料理法で作られた肉製
品を美味しい美味しいと笑いながら食べた。長老は、そんな子供たちをいとおしげに見
ている。そして最後に金で作られているフタをかぶせた大きな皿を持ってきた。長老は
笑いながら、今日のために特別メニューを用意させたと言っていた。フタが開かれた。
子供たちは目を大きく開けた。きゃあああと悲鳴があがる。
祐樹は子供の悲鳴で目が覚めた。手足を動かそうとするがうまく動かせない。それも
そのはず、祐樹はどんなメカロポリスの医術を使ったのか分からないが首から下を切り
離された状態で子供たちを見ていたのだった。そして部屋が暗くなり映画が上映され
た。
それは祐樹が一枚の張り紙を見たところからはじまり、列車での毒入り大福餅を食べ、
車掌の殺戮劇、機関銃で、そして少女との初めての性行為、最後は首を切られ頭部を除
いた肉料理にされるまでを克明に映し出されていた。
祐樹の目から涙が落ちる。
「こういう娯楽は何度やっても飽きないな」長老の笑い声が響き、すべてを打ちのめさ
れた子供たちのすすり泣きが、豪華な貴賓室から聞こえているだけだった。